見出し画像

いきなりステーキの凋落

凋落、という言葉を知ったのは数日前のこと。

いきなりステーキの肉マイレージシステムが大幅変更するという報せを聞いた時だ。この件に触れる前に、私のいきなりステーキヒストリーを聞いて欲しい。

私がいきなりステーキに初めて足を踏み入れたのは5年前のこと。まだそこまで店舗数もなかったし、ちゃんと全店立ち食いスタイルだったころだ。ステーキを立ち食いで食べるというのも面白いなと当時は素直に感動したし、なんといっても、女ひとりが気軽にステーキを食べたい時に食べられる、しかも、合成肉とか、変な味付けの肉じゃなくて、ガッツリ食べ応えのあるちゃんとした美味しいお肉で、卓上調味料で塩コショウやにんにく醤油ワサビなど味を調整できるというところが凄く良かった。

私はいきなりステーキが大好きになり、何回か通った時に肉マイレージカードを作った。味が美味しいのと、肉マイレージか溜まるのがやる気につながった。約5年前から月に2.3ペースで通い、やっとのことで20キロ達成してプラチナカードを手に入れた。

いつ頃か思い出せないけどここ1年以内の話である。なぜなら去年はゴールド特典で誕生日無料肉をくらった記憶があるからである。

月2.3ペースと簡単に言っても、毎日行きたいのを我慢し、お財布と相談しながら2.3ペースに抑えるのは当時、大きなミッションのひとつであったことを思い出す。本当に毎日行きたかったぐらい好きだった。いついくか、今日行くか?いや、明日か?と毎日考えていた。

早くランクアップしたかったので、450gのワイルドステーキに、150gのハンバーグをトッピングして食べることが多かった。合計肉600gである。食べ盛りの男子高校生みたいな量にライスを付けて食べていた。今でも食べれなくはないけど、相当気合いをいれて挑まないといけない。

こっちはガチで挑んでたんだ。

そんないきなりステーキと歩んできた私の5年間。色んなことがあったこと、語りたくなってしまった。

私は1度しかお目にかかれなかったが、研修センター店というのが存在していた。スカイツリーのふもとにあった。

ここでは研修中のシェフがお肉を焼いてくれる。通常の店よりグラム当たり1円値引きして販売していた。しかし安かろう悪かろうどころか、その逆なのだ。本部の真下に位置していたので、いつも監視の目が行き届いていて、お店はピッカピカ、焼け具合も肉の質もとても良かった。また行こう、と思っていたら、その次の月ぐらいに無くなってしまった。2018年3月ごろの話だ。

その頃はまだ、店舗も多くはなってきたけど、ちょうどいいくらいの数しか無かった。

いきなりステーキは度々メディアにも取り上げられ、知名度が上がってくると、この後ムチャな店舗展開が始まる。私はいつも仕事先の近くのいきなりステーキによく行っていたのだが、近いといってもまぁまぁ歩く距離にあった。けど歩けない距離じゃなかったので足繁く通っていた。そこのお店は店員さんがいつも凄く良くしてくれたからすごく好きだった。細かい気遣いがとても有難いお店だった。

ある日、仕事先の目の前にいきなりステーキが出来た。もう、ちょっと歩かなくても仕事帰りに肉が喰らえる!とルンルンで入った。しかし、いつもいってたお店が良くしてくれすぎたのか、ここのレベルが低すぎるのか分からないけど、同じお店とは思えないくらいの違いがあった。ムチャな店舗拡大で、色々と追いついていない感じだった。

ステーキの中では安いと言っても、1食2000円以上を払うわけだから、少しはなんとかならんのかね?と思ってしまい、前からあったちょっと遠い方の店に舞い戻った。

このように、歩ける距離に2つ店を構えてしまうという、池袋のファミマ乱立みたいなことをしてしまったいきなりステーキは、近隣店舗と客を取り合うようになった。

まぁ他にも色々と要因はあったのかもしれないけど。

徐々に陰りを見せてきたいきなりステーキ。元々社長は変な人っぽかったけれど、いよいよおかしくなったな、と思った出来事が1年前だ。

謎の貼り紙事件

いきなり!ステーキに謎の貼り紙が掲示されたのは1年ほど前になるのか。私はあの怪文書と揶揄された文章が味わい深すぎて大好きである。いきなりステーキフリークとしては毎月、店頭に掲示して欲しいくらい好きだ。ありがたいお言葉なのである。

なんというか、すごい。なにがおかしいのか説明できないけど、誰も推敲してないんだなということが、ひと目でわかる。勢いだけで、下書きなしで筆で書いたって感じの文章だ。普通の精神状態で、全店に張り出す紙を下書きなしでいこうと思うのか。人は追い詰められるとこんな文章を書き出すようになるのか。

私は社長業を経験したことが無いから、社員の生活を抱えた社長の気持ちというのはわからない。だけどこの文章は、参ってしまっている人間にしか書けないだろと思う。

そしてこの怪文書は第2弾もある。第2弾も中々に狂っていて好きだった。しかし第3弾はなかった。今でも待っている。そうしたら、お言葉を読みに店頭に行くのに。そしてついでに肉を喰らうのに。あれは社長の写メ日記かもしれない。思想写メ日記だ。となりにでかでかと顔の写真も貼ってあるし。顔出しOKは大きな強みだ。ちなみに私は目出しのみOKである。

カンブリア宮殿での公開処刑事件

2020年3月、カンブリア宮殿にいきなりステーキの一瀬社長が出演した。

なんというか、番組の脚色上、仕方ないことだと思うけれど、一方的に一瀬社長が言い負かされる場面が続いたとのことだ。私は家にテレビがないのでこういったまとめ記事で見た風を装うことしかできない。切り取られた一部分を見てわかった気になるのもよくないと思うので、詳しくはオンエア見てください!そして、少し前に貼り紙事件をやらかしていたこともあり、社長の人柄のヤバさに注目が集まってしまう。いきなりステーキのニュースがあった時は、Twitterでいきなりステーキをサーチし、ウォッチングするのが趣味である。この時はとても盛り上がっていた。もはや私はファンなのかアンチなのか分からない。なぜかいきなりステーキがやらかすとTwitterに集合してしまう私がいる。目が離せない。好きの反対は無関心、というから、つまり、好きなのである。まぁ、私はどこまでも俗っぽい人間だ。忙しい人にとっては時間の無駄でしょ、と思われるような、安っぽい好奇心を満たすことでなんとか生きながらえている。

ペッパーランチを売却していた

2020年7月、ペッパーフードサービスの事業の一つであるペッパーランチを泣く泣く手放していた。これは最近知った。記事を読むと、資金繰りが随分と厳しくなっていることがわかる。ただでさえ急な店舗展開で採算が取れないところに、コロナの大打撃が来たから、もう、本当に崖っぷちなのだろう。私はいきなりステーキも好きだけど、ペッパーランチも好きだ。深夜に一人で入る勇気はないけど。そんな肝試しはしないけど。いきなりステーキと同じか、似たお料理が食べられたから、いきなりステーキまで行くのは面倒だけど系列のペッパーランチでいいや、という時は使っていた。肉塊ハンバーグ500gというアホみたいなメニューがうまくて…。肉肉しいハンバーグからは肉汁と油がしたたりまくる。その油で鉄板がギトギトになり、付け合わせの味なしスパゲティをコーティングする。油そばのような見た目になったスパゲティがまぁ美味い。そのジャンクな味わいは、余分三兄弟が作り出した麻薬物質である。たまにペッパーランチの肉塊ハンバーグが頭をよぎるけど、最近は食べにいけていなかった。実はもう違う会社になっていたと知りびっくりだ。メニューを見る限り変更点はなさそうだけど、今後はペッパーランチで肉塊ハンバーグをいつまで食べられるのか。


たびたび世間を、というか私を騒がせていたいきなりステーキだったけど、なんだかんだお世話になっていたし、肉マイレージはプラチナまで貯まったし、一年に一回、お誕生日クーポンで好きな種類の肉300gを食べるために、会員資格を喪失しない程度に通い続けようと思っていた。1年行かないと期限切れになってしまうのだ。まぁ、普通に2ヶ月に1回程度は行っていたしこの間も行ったばかりだったので、そうそう有効期限切れというマヌケな結末は迎えないだろうと。

しかし12月、、、いきなりステーキは、まさかの決断をしてきたのだ。やっとここから本題なのである。長々と、ごめん。


肉マイレージの大幅リニューアル

これが完全に悪手である。もう。絶望。絶望という言葉しか出てこない。完全にその、自らの手で、自分の首を、頸動脈を、しっかりと締めに来たのである。聖なるクリスマスイブの日からこのおしめぇカウントダウンを施行するそうだ。今からでも考え直して欲しい。

とにかく上級顧客を舐め腐っているとしか思えない変更内容だ。いままで何のために20キロ以上も肉を食らってきたのか。全てを打ち砕く変更をされた。

※お食事ポイントの有効期間は1~6月、7月~12月の年2回、6月末と12月末でお食事ポイントはリセットされます。※半期(1月1日、7月1日)に2回、ランクダウンの審査があります。(全会員様)6か月間の来店回数が保有ランク条件に満たない場合は1ランクダウンになります。※従来は食べたグラムによりランクが変わりましたが、今後はお食事回数でランクが変更いたします。

みんなが怒っているのはこの部分。いままでは食べたグラムでランクが変わったが、これからは食事回数でランクが変わると。しかも、ランクは上がるだけではなく、規定の食事回数に満たないと、下がることもあると。

今からいきなりステーキに初めて行く人にとっては、何も問題ないシステムだけど、いままで何十万円もマイレージに費やしてきた人としては、冗談じゃないと。私は悲しくなるので計算するの辞めました。

まぁ、今までがお客に寄り添いすぎた内容だったために、いつか破綻すると分かっていたけれど。こういうのは、会員規約にもあるようにいつかサービス変更や終了すると分かりながら貯めていたけれど。

もはや破産閉店エンドの方がマシレベルでいきなりステーキさんには失望した。急に、さん、を付けることにより軽蔑を表すタイプの嫌な奴になってしまうくらいには、失望した。

いきなりステーキといえば肉マイレージと言っても過言ではないのに。貯める楽しみを密かに持っていた人は、私だけじゃなくて結構いたはずなのに。だって私23キロ以上食べて、全国58876位だ。私の周りに肉マイレージプラチナカードの人はなかなかいなかったけれど、全国には数万人散らばっているという所にロマンを感じていたのに。

肉マイレージは、本当によくできたシステムだったな。

食べた記録が明確に残る。アプリ版も入れているのだけど、そこには何月何日、どこのお店で、何グラム食べたか、が全て記録されている。5年前からの来店日時がそこには記されている。月によっては5.6回行ってたり、暫く行かなかったりとか、当時を振り返る楽しみがある。全国の肉マイラーの食肉記録とご時世を照らし合わせてみたらなんかしらのビックデータが取れるんじゃないかとか思う。知らんけど。

そして、食らったグラム数によるランキング制度。これはソシャゲみたいで、燃える人も多かったのではないか。上位100名までは別画面で、名前も表示されていた。不動の1位はいつもオフロスキwさんだった。いきなりステーキが好きな人にとっては、必ずや一度は目にしたことのある名前だ。そういう常時ランカーの存在も、ふーん、面白いじゃん。と思わせる一つのスパイスだった。

あとは、まぁ、最初は結構びっくりしたけど、店舗ごとに何グラム食べられたのか、というのが店内の貼り紙で掲示されていた。今もやってるのかな。あんまり壁面を見なくなってしまったから分からないけど。すんごく売れているお店と、そうでないお店が雲泥の差すぎて、ここまで正直に業績を店内に貼り出す企業ってすげーなぁと思っていた。というかここまで分析できてるのになんで無茶な拡大したんだよ。とか今思っちゃったのは内緒。

とにかく色々と斬新な肉マイレージというシステムが好きだったけど、心の準備をする時間もなく終わりは急に来たのだった。

私は今後もいきなりステーキを利用するのかは分からない。無性に肉が食べたくなったら行くかもしれないけど、肉マイレージが実質無効化した今では、ペッパーランチでもいいし、いきなりステーキが浸透したおかげで、安くていい感じのステーキ屋さんは街中に一気に増えたような印象がある。だからもういきなりステーキにとらわれずに、自分の好みのステーキ屋さんを探しに行ってもいい。自分で肉を焼くのを極めてもいいし。

ひとつ、時代が終わったような感じがする。


このいきなりステーキの失速をただ批判するのではなく、失敗から学べることも沢山あるなぁと感じている。

例えばオーバーストアで客を食い合ってしまったという点だけど、わたしにもとっても似たような経験があった。それは、出勤日数を増やしすぎて逆に暇になってしまった時!!

いきなりステーキを増やしすぎたのと全く一緒の状態なのだが、中にいる当の本人は、出勤を増やせば増やすほどいい方向に転がるとしか、もう考えられなくなっていた。

でも蓋を開けると現実はそう甘くはなかった。


あとは、お得意様を蔑ろにするような行動は、絶対に慎むべきだといきなりステーキから教わった。

本当に、人の時間、労力を、無に帰すようなことは、しないようにしようと思う。


ありがとういきなりステーキ。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?