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連続群の生成子の話題,特にSO(2)
これは何の記事?
筆者が群論の講義で学んだことのメモ書きです.シリーズになる気もしますが,しない気もします.
この記事では連続群が単位元付近の微分にその構造が影響される話を,特にSO(2)の場合において計算することで導入します.(私は工学部の人間で,しかも初学者なので間違いがあれば指摘してください.)(リー代数みたいな難しい話は分かりません.)
(某東北の大学の方はこれがあるテキストの行間埋めをしていることに気づくかもしれません.感謝して投げ銭してください.)
連続群SO(2)
連続群SO(2)を定義します.正$${n}$$角形の回転が$${C_{n}}$$に対応するように,円の回転にも何らかの元を対応させます.そもそも$${C_{n}}$$の元は$${e^{iθ}}$$に対応していたので,回転行列を対応させるのが普通でしょう.
原点を中心とする二次元の座標上の点の位置ベクトルを
$$
\begin{pmatrix} x\\ y\end{pmatrix}
$$
とすると,回転行列$${R(θ)}$$は
$$
R(θ)= \begin{pmatrix}\cos(θ)&-\sin(θ)\\\sin(θ)&\cos(θ)\end{pmatrix}
$$
となります.これらは群となっています.(群の定義は,結合則を満たし,単位元,逆元が存在することです.)結合則は加法定理より$${R(a+b)=R(a)R(b)}$$(計算してね)と分かり,単位元は$${R(0)}$$が,逆元は$${det(R(θ))=1}$$より$${R(θ)^{-1}}$$が存在します.ちなみに可換ですね.
これらの行列による群は2次元特殊直交群と呼ばれ,SO(2)と書きます.
SO(2)の生成子と微小変換と有限変換
$${R(θ)}$$のテイラー展開(TeX対応しろ)
行列のスカラーによる微分は各成分をそのままスカラーにより微分すればいいので,$${R(θ)}$$をθ付近でテイラー展開すると,
$$
\begin{split}
R(θ) & \approx \begin{pmatrix} 1-\frac{θ^2}{2!}+\cdots, &-θ+\frac{θ^3}{3!}+\cdots \\ θ-\frac{θ^3}{3!}+\cdots, &1-\frac{θ^2}{2!}+\cdots\end{pmatrix}
\\
& = \begin{pmatrix}1 & 0\\0 & 1\end{pmatrix} + θ\begin{pmatrix}0 & -1\\1 & 0 \end{pmatrix} + O(θ^2)
\end{split}
$$
これを
$$
\tag{1.1}
R(θ) =1-iθT+O(θ^2), \left( T = \begin{pmatrix} 0 & -i\\i & 0\end{pmatrix} \right)
$$
と書きます.ここでの$${T}$$を群の生成子と呼びます.(なんで$${i}$$を作る必要があるねん←わかる)(いつか書く記事で説明します)
微小変換
$${R(θ)}$$は群を成しているので,微小量$${ε}$$を考えると,
$$
\tag{1.2}
R(θ+ε) = R(θ)R(ε) \approx R(θ)(1-iεT)
$$
そのため,$${R(θ)}$$の微分を考えると,
$$
\tag{1.3}\frac{d}{dθ}R(θ) = \lim_{ε\rightarrow0}\frac{R(θ)-R(θ+ε)}{ε} = -iTR(θ)
$$
ここで$${θ=0}$$の時,$${\frac{d}{dθ}R(0) = -iT}$$ですから,どんな$${θ}$$もその$${\frac{d}{dθ}R(θ)}$$は,$${θ=0}$$の時に定まる生成子$${T}$$に依存する,と言えます.
有限変換へ
式(1.2)より,微小量$${ε}$$を足す操作が$${1-iεT}$$をかける操作に対応していたので,$${θ'=nε}$$とすると,
$$
R(θ+θ') = (1-iεT)^{n}R(θ)
$$
すなわち
$$
\begin{split}
R(θ) &= \lim_{n\rightarrow\infty}(1-\frac{iθT}{n})^{n} \\
\tag{1.4}&=e^{-iθT}
\end{split}
$$
が言えます.なお行列の指数関数は$${e^{A}=\sum_{k=0}\frac{A^{k}}{k!}}$$と定義するので,
$$
\tag{1.5} R(θ) = \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-iT)^k}{k!}
$$
です.
式1.4を微分すると,(本題じゃないのでさせて欲しいです)(ここら辺の話は詳しくないです)(証明があるなら教えてください)
$$
\begin{split}
\frac{d}{dθ}R(θ) &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{d}{dθ}\left(\frac{(-iθT)^k}{k!}\right) \\
&=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{θ^{k-1}(-iT)^{k}}{(k-1)!} \\
&= -iTe^{-iθT}
\end{split}
$$
となり,式1.3の微分方程式を満たしていることが確認できます.($${R(θ)}$$の2つの表し方が同値であることが確認できる.)
ところで,$${T^2=1}$$なので,式1.5の$${T}$$は半分消せて,
$$
\begin{split}
\tag{1.5} R(θ) &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-iT)^k}{k!} \\
&= \sum_{n=0}^{\infty}{\frac{(-iθ)^{2n}}{(2n)!}}-iT\sum_{m=0}^{\infty}\frac{(-iθ)^{2m+1}}{(2m+1)!} \\
&=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{(-1)^mθ^{2m}}{(2m)!}-iθT\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^nθ^{2n+1}}{(2n+1)!} \\
&=\cos(θ) -iT\sin(θ) \\
&=\begin{pmatrix} \cos(θ) & -\sin(θ) \\ \sin(θ) & \cos(θ)\end{pmatrix}
\end{split}
$$
というように,元に戻ることが確認できました.
結局何?
式(1.4)が全てです.微小変換を繰り返すと有限変換になるということは,つまり「群の元のほとんどが,単位元近傍のふるまいにより決定される」ということです.これは講師に言わせると「著しい」事実らしいです.
SO(2)は非常に簡単な群なので,次回はSO(3)に関して今回と同じような観察をします.対戦宜しくお願いします.