宮原健斗VS安齊勇馬で全ては大丈夫!全日本プロレス代々木大会感想。
全日本プロレス代々木第二体育館大会をサムライTVで観戦しましたので感想を書き飛ばしておきます。
全日本プロレスにとって久々の代々木第二体育館大会。個人的思い出としては2005年2月16日に行われた川田利明と小島聡の三冠ヘビー級選手権試合を見に行った記憶がありました。ほぼほぼ満員の代々木第二で小島聡が三冠を初戴冠した試合。
GAORAのバトル・ライブラリーにあったので興味ある方は見てほしい。この時代の全日本プロレスの試合はなかなか見る手段がなかったりするので、どこかのタイミングで馬場全日本と合わせてライブラリ化してほしいですがなかなか難しそうですね。ノア勢大量離脱からの馬場元子体制から武藤全日本へ。一時期はほんとにバカ面白かった記憶があるんですが、それらがあんまり語られないのが残念です。
サムライTVで第二試合辺りから観戦してたんですが、DDTのアイアンマンのベルトを持つ土井成樹が一瞬谷嵜なおきに丸め込まれてベルトを奪われたり(全日本プロレスでのアイアンマンベルトの移動は初めてでは?)網膜剥離から渕正信が復帰しててさすがにその全体的なおじいちゃんっぷりに心配になったり(それと比べたらなんだかんだで大仁田は動けてる方なんだな、と感心したり)フリーとして岩本煌史が久々に全日本に参戦していて、その試合で井上凌が着実に蹴り技のバリエーションを増やしていて頼もしく感じたり、とサクサク進む前半戦を堪能しました。
しかし全日本、この前半戦に鈴木鼓太郎が入ってたり、なぜか西村修、長井満也を呼んでたり、入江、T-HAWK、リンダマンのSTRONGHEARTS勢を呼んでたりとコスト意識どうなってんねん、という謎の豪華さ。それで10分いかない試合タイムでサクサク進んでいくものだからまあ贅沢というか余裕あるなというかなんというか。久々に井上雅央を見れて楽しかったです。
ザ・ケンカマッチ!Evolution vs DDTの6人タッグが楽しすぎた!
そしてこの大会、まず凄く面白かったのが諏訪魔&佐藤光留&田村男児VS秋山準&高木三四郎&岡田佑介の6人タッグマッチ。
ますこの試合を実現するため、Evolutionの3人がDDT後楽園ホール大会に乗り込んで秋山に挑発のマイクアピール、諏訪魔と秋山のガチ感溢れるゴールの見えないマイク合戦に観客唖然、という事件があってだいぶ先行き不安になったものですが、いざ試合になるととにかく6人(というかEvolutionの3人)がノビノビと闘いすぎて最高でした。
試合前から「プロレスなんかしねえよ!」と豪語していた諏訪魔。試合開始と同時に諏訪魔と秋山、光留と大社長、そして田村と岡田が大乱闘。開始から5分ほどリング上に誰もいない状況が続くほど好き勝手乱闘三昧。よく見たらDDTの高鹿らの若手、松井レフェリーも場外乱闘から観客をカバーする状況に。
とにかく田村男児と岡田佑介の乱闘が凄かった。バチバチと本気で打撃を入れまくり、DDTも床に思いっきり叩きつける。やっちゃう田村も受け止める岡田も凄かった。最後は秋山のネックロックに田村が沈みましたが佐藤光留、高木三四郎は一度もリングに上がらずに終わる始末。試合時間は6分程度でしたが、プロレスのワクワクが詰まっていたような試合。場外乱闘ただただやっててこんなに面白いんだ!という気付きのある試合でした。プロレスラーよ、馬鹿になれ!
スター集結!凄みを見せた女子タッグマッチ!ウナギの価値は?
そして存在からして賛否両論、というかSNS上では否ばっかりのウナギ・サヤカ参戦の女子タッグマッチ。無期限休養というか100%WWE戻るだろ、とみんな思ってるKAIRI、WWE帰りのSareee、そして安納サオリも参戦する豪華な顔ぶれ。まあなんだかんだ言われてますがウナギ・サヤカが全日本プロレスに参戦してなかったらこのタッグマッチは実現してないわけで。KAIRIを見れる貴重な機会、現地組羨ましくなるタッグマッチでした。
試合はとにかくKAIRIの千両役者っぷりが光る展開。まず入場の完成度、周りを見渡す目線からすでにスターの貫禄があるのはさすが。他の3人とまずそこで格の違いを見せつけるKAIRI。
試合開始するといきなりKAIRIとSareeeの打撃戦で観客を引き付ける。前の試合が荒れ放題だったこともあり、女子として舐められないあたりの強さを見せつけたのはさすが。この二人だからこそ出来る迫力ある撃ち合いから、女子ならではのハイスピードなテンポで技を積み重ねていく4人。全9試合の中の第6試合、興行の中盤に持ってこられた役割をしっかりと果たしていくあたり4人共「わかっている」選手達だったと言えるでしょう。
速いテンポで技を積み重ねて観客を掴み、湧かせていくのはさすがの完成度の4人。このなかではキャリアの劣るウナギ・サヤカの見せ場は必然的にKAIRI、安納サオリの技を受けまくることになり、結果KAIRIの裏拳を連発で食らった後にダイビング・エルボーに沈みますが、最後までスピード感溢れ、全日本プロレスファンに「ザッツ女子プロレス」を魅せ、湧かせたいい試合でした。
自分の「強さを見せる」意識が強かったSareee、他の3人に賢明に食らいついていたウナギ、ウナギと張り合い、Sareeeにもガンガンやりあっていった安納サオリと他の3人もいいところを見せていましたが、やはりKAIRIは役者が一枚上。この試合を包み込む確かな技術、試合のコントロール、唯一無二の存在感を見せて去っていきました。
そして試合後も凄かった模様。この光景は、この日の観客1675人のうち、この試合目当ての観客、この試合で魅了された観客が相当数いたことの証明でしょう。全日本プロレスに女子はいらない、爆破はいらない、という意見もよくSNSで聞きますが、いい試合してファン集めたらまた呼ばれるのは普通のことのように思います。
まあ自分は全9試合の中で1試合見たくないものがあってもまあ見とくか、と思うし、他の試合で全日本らしさは見れてるからいいか、と思っちゃいますが。今後もウナギ・サヤカは試合が組まれてるんで嫌われるんでしょうが、この試合は配信ながら「見れてよかった」試合でした。
全日本プロレスは大丈夫!盤石の宮原健斗に弾ける安齊勇馬!
そして後半3試合はいよいよ「今の全日本プロレス」を見せつけるようなラインナップとなっていました。青柳兄弟&ライジングHAYATOとG.O.Aの本田竜輝&児玉裕輔&花畑正男が闘う6人タッグマッチではG.O.A卒業の本田に青柳優馬が「卒業証書」を読み上げスタート。児玉が老獪さを魅せ、花畑、本田とのチームワークで青柳兄弟を翻弄するもしっかり三冠チャンピオン、青柳優馬が花畑正男をロックスターバスターで降して勝利。
そしてセミはGLEATのタッグタイトル、G-INFINITYのチャンピオン斎藤兄弟が石川修司&綾部蓮の挑戦を受けるタイトルマッチ。タイトルマッチながらも堂々とセコンドのTARUが反則&パウダー攻撃でアシスト、それをうけてサイコブレイクで斎藤ジュンが綾部蓮を抑え込んでカウント3、しっかりと防衛して吠える斎藤兄弟、徐々に安定感が出てきました。対する綾部も一時期感じていた線の細さが大分薄れてたくましくなっていました。
今後に期待できる若い選手が活躍したセミ前とセミ(まあ斎藤兄弟は若くない気もしますが)試合自体はあっさり風味ではありましたが、短い試合時間の中に見せ場がギュっと詰まっていて盛り上がりました。特にセミは190cm超えの4人がぶつかり合う迫力だけでもう価値がある。全日本プロレスらしさに溢れた試合を見せてくれました。
そしてメインは宮原健斗と安齊勇馬。全日本プロレスのビッグマッチのメインに持ってきたのが三冠戦でも世界タッグでもなくこのシングルマッチだったことに全日本プロレスの気合いと覚悟を感じます。
入場してきた宮原健斗は髪を真っ赤に染めて気合が入った様子。安齊もシングルマッチのメインに緊張が伺えます。セミ、メインを経て期待に包まれた空気の中ゴング。
オーソドックスに手四つの攻防から始まりますがすぐに場外戦に。そうなると強さを発揮するのは宮原健斗。安齊も鉄柵に飛び乗ってのジャンピングエルボーで反撃しますが、エプロンからのエルボーはかわされ、エグい音のする頭突きで反撃。空気を一気に宮原色に染めてみせるのは流石の一言。そこから「宮原タイム」開始、どんどん宮原ペースになっていきます。
エルボーで反撃されても鉄柵に顔を打ち付け、リングに戻ってガッツポーズでアピール。ビッグブーツで蹴りまくり、首四の字で締め上げる。ザッツ横綱相撲。
しかしここで安齊もロープに振られたところをスロイダーで投げ飛ばして反撃。ダブルアームスープレックス、コーナーに登った宮原をドロップキックで場外に落とす、しかしエプロンから飛んだところをビッグブーツで迎撃され、エプロンではパイルドライバーを食らうなどなかなかペースを掴むには至りません。しかしそれでも食らいついていく安齊。リングに戻ってジャーマンで投げられるも投げ返す。投げられても投げ返す。強烈なエルボーを叩き込み、目の色を変えてきた宮原とエルボー合戦で引かない姿勢、日に日に逞しくなっている姿をここに見せつけてくる安齊勇馬。頼もしい!
エルボー合戦は宮原が制し、倒れた安齊が立ち上がろうとするたびに蹴り倒す宮原。2回、3回、4回と蹴り飛ばす宮原ですがその度に立ち上がる安齊。ブラックアウトを食らうもジャンピングニーで返していく安齊!カウント2で返す宮原!すかさずジャーマン!カウント2!ジャンピングニーとブラックアウトの相打ちから背後からのジャンピングニー!さらに正面からのジャンピングニー!カウント2!期待が膨らむ観客からの歓声!そして膝のサポーターを下げ、とどめを刺しにいった安齊ですがここは宮原ブラックアウトで反撃!ラリアット!から立ち上がろうとしたところにさらにブラックアウト!カウント2!背後から安齊を捉えた宮原、ガッチリとクラッチして持ち上げ、シャットダウン・スープレックス炸裂!カウント3!宮原健斗勝利!
終わってみれば16分33秒で宮原健斗の勝利。完勝と言っていい内容ではありましたが、安齊も気持ちで一歩も引かずに闘い、ノアのN-1に出場した成果を見せました。チャレンジマッチという目で見ていたからかもしれませんがあと一歩まで宮原健斗を追い詰めた、安齊勇馬の健闘とスケールの大きさ、将来性を感じさせてくれる試合でした。
そしてさらに感じたのはエース・宮原健斗の安定感と安心感。そして圧倒的な観客からの信頼感でした。キャリアの浅い安齊が何をやっても宮原相手だからこそ安心して安齊を見ていられましたし、最後のたたみかけ、フィニッシュに至る流れも宮原健斗だからこそのフルコース。一気に見慣れた全日本プロレスの空気になりましたし、完全に団体を背負っている宮原健斗を見せつけられました。宮原健斗がいれば全日本プロレスは大丈夫、という観客の空気すら感じました。
宮原自身もマイクで「同じ時代に、プロレスファンとして俺を見れてよかったな!」と言い放ってましたが、確かに今の宮原健斗はそれだけのことを言う資格があるレスラー。全日本プロレスの未来を感じさせてくれるメインイベント、代々木大会となりました。
興行を振り返ってみると、前半戦は土井のアイアンマンがあったりSTRONGHEATRSが登場したり新鮮さもありましたが、渕の復帰戦があったり岩本も戻ってきたり、井上雅央との絡みがあったりと歴の長いファンには色々と感慨深い場面が多く見られました。そしてなんといっても諏訪魔、佐藤光留、田村男児の秋山準、岡田佑介、高木三四郎との会場全体を使った大乱闘というか大暴れが圧倒的面白さ!終始迫力が凄かった!怨念渦巻く人間模様も武器に出来るのが歴史ある全日本プロレスの強さだし、その怨念を闘いの中で表現できるレスラーの技量はさすが。カオスの極みのような試合の中に底力が見えたのはさすが!の一言。
そして元WWEスーパースター2人を含む豪華な女子プロレス。KAIRIのこれからの去就によってはかなり貴重な試合になると思いますし、なんといってもKAIRIを堪能できただけでも意義のある試合でした。
そしてこの試合を挟んで様相は一変。後半は全日本プロレスの未来を見せる闘いとなりました。とにかくフレッシュな面々、青柳兄弟、本田竜輝、斎藤ブラザーズ、そして宮原健斗に挑む安齊勇馬。とにかく若手が輝いた後半戦となりました。
一気に平均年齢も下がり、爽やかかつ激しい戦いを見せてくれたセミ前、TARUの古典的反則を交えつつ斎藤兄弟、綾部蓮の若々しくもスケールの大きい闘いを見せてくれたセミファイナル、そしてプロレスリング・ノアのN-1に参戦、戻ってきて驚くほどの逞しさと成長を見せてくれた安齊勇馬、その安齊をしっかりとメインイベントで引き出し、魅せきった宮原健斗。セミファイナルまでに色々ありましたが、前に何があろうとしっかりと締めてみせました。
最終的に、女子プロレスを間に挟んで全日本プロレスの伝統と未来を同時に見せてくれた代々木第二体育館大会。その構成、面白さは本当に素晴らしかった!観客数は1675人と厳しいものでしたが、中身は本当に充実してました。色々言われることもありますが、全日本プロレスは大丈夫!ありがとうございました!
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