Tokyo Revolution.

夏。

年々暑くなっている気がする。

自己主張の激しいセミ達のオーケストラの中、軒下に座っている。

「あー、セミって子供の頃は触れたけど、今は触りたくないなぁ。てか、セミってオシッコして飛ぶよな…。人間だったら…完全にアウトだな。」

そんな事を考えながら、太陽のちょっと下を眺めていた。

男はタンクトップに短パン。

投げ出した足の片方のサンダルは脱げて、一歩先に転がってしまったから、面倒いし、今はいいやぁという状態。

どこにでもいる「おっさんスタイル」なのだが、一箇所、明らかに異様な場所がある。

男は、白いバイク用のヘルメットの様な物をかぶっていた。

夏なのに。真夏なのに、だ。

「…ちゃん。」

「アブラゼミって名前凄いよな。アブラだもん。触ったら油っぽいんだよな確かに。ツクツクボーシは透明でグロいんだよな、確か。」

「…ちゃん!」

「何であんな鳴き声してんだろ…。」

「…いちゃん!」

「…。」

「おじちゃん!」

「ん?あぁ、どしたー?」

マスクの男の横に、いつの間にか、正確にはずっとそこに刹那はいた。

刹那は小学3年生。

確か3年生だ。うろ覚えだが。

いつもいない(会わない)ので気にしていなかったが、ちょっと前から夏休みだった。

「おじちゃんって普段何やってんの?」

「んー?」

「おじちゃんって、ヒーローなんでしょ?」

「んー?そうだよー。」

少し眠いのもあって返事も億劫である。

「ヒーローの仕事って何してんの?」

「んー?色々だよぉ。」

「色々って?悪者やっつけたりとか?」

「んー。それもあるけど、ホント色々かなぁ。」

「てか、そのマスクって暑くないの?」

「んー?暑いよ。夏だし。」

「なら脱げばいいのに。」

「まぁねぇ。」

「パパ言ってたよ。おじちゃんは本当はパパよりカッコいい顔してるって。」

「まぁねぇ。」

「脱げばいいのに。あ、あとこの間学校の帰り道におじちゃん見たよ。スタバいたでしょ。」

「んー?いつー?」

「2週間位前かな。」

「あー、いたようないない様な…。」

「…。」

セミのオーケストラだけが響く。

「おじちゃんさ、パパが言ってたけど、大人になったら働かないといけないんだよ。」

「んー?そうだねぇ。」

「おじちゃん何してるの?おじちゃんも夏休みなの?」

「んー。まぁそうかなぁ。」

「毎日その辺いるじゃん。」

「毎日じゃないよ。」

「毎日じゃなくても、ほぼ毎日じゃん。友達も言ってるし。」

「友達って誰?」

「たけし君と、アキラ君と、ミキちゃん。」

「刹那はあれだね。キラキラネームだね。」

「何それ?」

「いや、いいんだけど。」

「…ちゃんと働いた方がいいよ。」

「…。」

「働かざる者、食うべからず。」

「刹那働いてないじゃん。」

「僕は小学生だもん。小学生は遊ぶのが仕事だもん。」

「凄い返しだなぁ。」

「僕も友達に聞かれると恥ずかしいし、ちゃんと働いてよね。」

「…。」

「僕はこれから仕事だから。出かけるならちゃんと戸締りしてね。」

「仕事ってか遊びだろ?」

「さっき言ったでしょ。」

「…。」

気のせいかさっきよりもセミのボリュームが上がった気がする。

「んな事言ってもなぁ…。」

独り言を口から出してみる。

「怪人とかいねぇんだもん…。」

次回予告!

自称ヒーローの男は何者なのか?

作者も読者もわからない、下書きなしの行き当たりばったりの第二話!

乞うご期待!!

「飽きたら誰か続き書いてくれよな!」