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映画レビュー#013 『オフィシャル・シークレット』(2018年)

事実:実際に起こった、または在する事柄。
真実:うそや飾りのない、本当のこと。まこと。
(岩波国語辞典)


イラクー大量破壊兵器があるはずだー戦争。
事実に基づく物語。ブッシュ(息子)大統領やブレア首相を見て、久しぶりに声を聞いて「うわー」ってなった。特にブッシュの声。
イラク戦争はもちろん知っているし、全てではないにせよ開戦までの流れは一応覚えているけど、イギリスでこんなことが起きていたのは知らなかった。


キャサリン・ガン事件。
イギリスの諜報機関GCHQに勤めるキャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)。戦争をしたいアメリカの諜報機関NSAから「イラク侵攻の支持拡大のため、国連安保理メンバーを盗聴せよ」というメールを受けたGCHQ。
この戦争がしたいがための盗聴・諜報活動に怒りを覚えたキャサリンはメールをコピーし、反戦活動家の友人へ預け、やがてそれはブレアのPR会社と揶揄されていたオブザーバー紙に掲載されるのだが…。


見応えあった。ずっと緊張して観ていた。面白かったっていう言い方が合ってるかわからないけど、面白かった。
当然なんだけど、やはりどこの国も諜報機関があって盗聴・通信傍受ってやってるんだよな。
自分がキャサリンだったとして、どう行動するのか。
映画を観ている間はそんなこと考える暇もないぐらい没入していたのだけど、観終えてから「自分だったらどうするだろう?」と考えてしまう。

国のためとはいえ諜報機関。諜報活動とはいえ国のため。
戦争を止めるためにキャサリンがとった行動は正義なのか裏切りなのか。
表裏一体。見方によって180度変わってしまう。

「(君は)政府に仕えているんだ」と言われたキャサリンが「政府は変わる。私は国民に仕えている。政府が国民を守るための諜報活動はするが、国民に嘘をつくためではない」と答えたのは重かった。
政府も政策も変わることがあるけど、誰のために働いているのかは変わらない。こんな正論、私に言えるかな。


国家機密をリークするには勇気もいるだろうし、大きなリスクも背負う。
リークしたキャサリンも迷い葛藤するところ、自分がやったことの重大さに気づくところにリアリティあった。私だったら「あ、やっぱりやめます」って言うだろう。でももうその時には自分の手を離れてしまっているので時すでに遅しなのだが。

キャサリンの旦那さんがクルド系トルコ人移民でイスラム教徒っていうのもなかなか根深い。そこに目を付けるやり方も嫌だった。
移民申請をしている旦那さんにまでリスクが及ぶというのは少し考えれば分かったことかもしれないけど、そこまで気が回らなかったところにキャサリンの強い怒りや憤りを感じる場面でもあった。


起訴され裁判が行われるのだがその呆気ない幕引きがなんとも言えない。だからこそリアル。まあ実話がベースですし。でもこんなことあるんだ?って感じ。


オブザーバー紙の記者たちがリークの裏付けを取るための取材も見応えあり。しかし報道ってなんなんでしょうね。「うちの新聞は戦争肯定派なんだよ」とか。
『リチャード・ジュエル』を観た時にも思ったけど、何をどう伝えるのか。その角度、視点は誰が決めているのか。事実を伝えるのか、真実を伝えるのか。そこに誰の主張が入り込んでくるのか。いつもわからなくなる。


キーラ・ナイトレイ、『はじまりのうた』しか観たことないと思うんだけど、不安な様と毅然とした態度が混在していてすごく良かった。

戦争に違法も合法もあるのかしら。
あぁ小泉さんもブッシュ支持してたよな。他国で起こったことなんて言ってられない。全部地続きだ。

鑑賞日2020年9月1日(劇場)

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