少し昔の東京
突然ですが、私、「少し昔のこと」が大好物です。
それも、作られたものより、リアルな日常に近いものであればあるほど好き。
中学生の頃は、図書館の書庫で古い新聞縮刷版を大いに楽しんでいたし、今でも国会図書館で少し昔の資料に触れるのが趣味です。
変わりませんね。
現在は過去の積み重ねであり、過去を知る事は現在を知る事。
そんなことを考えたり、単純にタイムスリップした気分が味わえるから!ということだったり、理由は色々です。
そんな私の大好きなサイト。
それは、アクロスの定点観測。
アクロス(ACROSS)は、パルコのファッションとカルチャーのシンクタンクです。
その歴史は、1977年に創刊されたマーケティング誌「月刊アクロス」から始まりました。
もともとパルコに出店するテナント向けのレポートであったそうで、専門誌の類にあたります。
内容は、独特な視点による東京の人々の観察や分析などなど。
出版本も数多く、私がアクロスを知ったのは、そのうちの1つ、
「ストリートファッション 1945-1995 若者スタイルの50年史」にて。
古本屋さんで出会い、「おお〜!こんな面白い本があるのかああ!」と、穴が開くほど見た(読んだ)思い出があります。
その後も、雑誌などの「ファッションの歴史」的な記事をまた食い入るように見つめていると、写真提供の欄に度々「アクロス」の文字を見つけたものでした。
そのような日々を経て、現在ではウェブで自由に閲覧できる、貴重な資料たち!
中でも「定点観測」は私の大のお気に入りなのです。
「定点観測」とは、1980年8月9日に始まって以来毎月、渋谷・原宿・新宿を基本拠点としてそれぞれの街に台頭する「ストリートファッション(東京の若者とファッション)」を撮り続けた記録です。
素晴らしいのは、「おしゃれでかわいい若者を紹介するスナップ企画ではない」ということ。
「時代の気分や価値観などがもっとも早く表象化されるのが服装(狭義のファッション)といわれています。(アクロスサイトより)」ということから、いわゆる「身近にいる人たち」を記録し、時代を読みつづけている、というわけなのです。
普通だとか身近だとかは目立ちにくいもの。
特別な日や場所は思い出に残りやすく、その上、記念のものを作りたがったりもしますが、でも、本当に大切なものや、後から考えて素晴らしかったなと思えるのって、実は日常なのではないかと思うのです。
ずっとここにあると思っていながらも少しずつ(或いは突然)変化していく、日常。
普段の日々だからこそ、今を残そうという意識が薄くなってしまうものですが、それをあえて記録するという発想!
…というのは、もしかしたら本来の目的とはずれているかもしれないですが、ここに写っているひとたちの人生、その時代の空気などを想像するのは、本当に、おもしろい。
しかし、そんなこんなも「パルコ」だからできたのかなあと、思います。
商業施設の枠を超えたパルコ。
「商品を売るために店に並べる」だけでない何か、カルチャーやイメージや、ものすごく大きな力で街を、人を確実に変えてきたパルコ。
カーサブルータス特別編集 ALL ABOUT SHIBUYA PARCOには、パルコと関わりの深い糸井重里さんの言葉が載っていました。
「商売に関係がないところから生まれてきたものには、
なかなか死なない強さがあります。」
少し昔の資料から伝わる、その時代の中で真っ直ぐに生きている人たちの、そういうリアルな人間っぽさに触れるのが、きっと好きなのだと思います。
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