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夜の森
夜の森に一人で入る。半径数キロ内に“ニンゲン”はいないはずだ。
一人で歩く夜の森はとても静かで、空には満天の星。他に誰もいないので、100%森と向き合える時間がゆっくりと流れる。
都会のスピードについていけなくて、この地で暮らすことを選んだ。そんな時の流れの中に佇むと、見えなかったものが見えてくる、感じられる。
森は、語りかければ答えてくれ、心を開けば受け入れてくれる。
体を満たすもの、心を満たすもの、生きるためのすべてがここにある。
伸びゆく冬根の成長を、固く閉じた冬芽の中の躍動を、土の中で眠るものの鼓動を、追うものと追われるものの懸命さを感じた時、そこから離れて暮らす自分の傲慢さを省みる。
アスファルトで地面を覆い、河原をコンクリートで固め、化石を消費しながら暮らそうとも、螺旋の中の記憶は呼びかける。僕らは森で暮らしていたんだよって。