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大きなお葬式

義祖父が亡くなった。

亡くなる数週間前、義祖父の容体が良くないと聞いて旦那と一緒に会いに行っていた。
そのとき義祖父は病室で管につながれていて、私と旦那のことが分かっているのか、分かっていないのか、分からなかった。

会いに行った頃から、「もうそろそろかな。」なんて縁起でもないことを旦那と話していたが、先に喪服を買っておくのはさすがにどうかと思い、購入していなかった。


お葬式の前夜、19時過ぎに仕事を切り上げて百貨店で喪服を探す。
だいたい2,3万で買えるといいなと思っていくつか試着したものの、一番気に入ったものは5万。
明らかに予算オーバーだが、羽振りの良さが私の取り柄なので迷わず購入した。
お会計のタイミングで旦那と合流し、「すごい気に入ったのが買えたぞ!」と、喪服を買う人にしてはかなり高いテンションで機嫌よく店を後にした。


お葬式の当日。
道が混んでいて到着がギリギリになってしまった。
着くと、会場には100人ほど集まっていたと思う。驚いた。
義実家の宗派は何だっただろうか。数珠は左手で良かっただろうか。そんなことを考えていたが、時間も無いので荷物をすべて車において、数珠だけ持って中に入った。

私は近い親族ということで最前列に座ることになった。こんなに大勢の人がいると思っていなかったので緊張する。

ドラマでしか見たことのないような、たくさんの供花。
大きな遺影に写る義祖父の表情は明るい。
義母が「遺影の加工がすごいのよ。服も選べたの!」と、教えてくれた。
遺影も加工する時代になったのか。
涙を流している人もおらず、お年寄りたちが談笑しているのが聞こえる。
お葬式はこんなに和やかで華やかなものだっただろうか。

しばらくして、お葬式が始まる。
義祖父の生涯を語るナレーション。
現役で働いていたころのことや、子供が生まれてからのこと、孫のこと。
私が知らない義祖父のことをよく知ることができた。
私は、「死んだ後にこんな風に自分の話をされるのは恥ずかしくて嫌だな。でも死んだらそれも分からないから別にいいか」など、自分の葬式のことを考えていた。

4人のお坊さんたちが入ってきた。髪の毛が生えている人もいる。
お経を詠んだり、楽器を鳴らしたりしていて、その途中で宗派は「天台宗」であることが分かったが、お焼香の回数がどうだったか思い出せない。
お経は何を言っているか良くわからず、集中もできないので供花に書いてある名前を読んだりしていた。
最前列ということもあり、お坊さんがよく見える。特等席でショーを見ているような感覚で眺めていた。

私の目の前にいるお坊さんが3つくらいの楽器を担当しているのだが、割と新人のようで、何度か別のお坊さんから「鳴らせ!」「回数が多い!」など目配せや口パクでの指導を受けていた。
お坊さんもお経や楽器を鳴らすタイミングを覚えるのは大変だろうなと同情しながらも、途中から「こういうコントありそうだな…」と思い始めると面白くなってきてしまい、笑いをこらえて目を閉じた。

頭の中ではなぜか「♪小さなお葬式♪」のCMが流れ、「めちゃくちゃ大きなお葬式やないかい!!」という自分の突っ込みが入る。それが永遠とリピートされて笑いが込み上げてくる。くだらなさに泣けてくる。

お葬式や卒業式など、笑ってはいけないときに限って面白い空想が止まらなくなってしまうのはなぜなのか。


無事にお経などが終わり、お焼香をしてみんなでお花を供えた。
義祖父は霊柩車に乗って運ばれていった。

親族15名ほどでマイクロバスに乗って火葬場に向かう。
到着後、もう一度義祖父にお別れを告げた。
喪主である義父が火葬のスイッチを押す。

私は3ヶ月前、死産の後に火葬をしたばかりだったのでその日のことを鮮明に思い出したが、涙は出なかった。

火葬が終わるのに1時間半ほどかかった。
待つ間、初めて会う親族たちと話をする。
このお葬式が無かったら一生会わなかったかもしれない。
改めて、お葬式は残された人たちのためのものなのだと思った。
お骨上げも終わり、火葬場を後にした。


義祖父母の家に戻っても、たくさんの親族が来ていて、女性たちがバタバタと何かをしている。忙しそうだけど、団結していて楽しそうにも見える。
私は何をしていいか分からず、邪魔にならないところに立っていた。
お葬式も大規模だったのに、家に戻ってもこんなに大変なのかと茫然としていた。

見かねた義母が声をかけてくれる。
「嫁ぐところ間違えたと思うやろ。私も思ったわ。安心して、私らの代で終わりにするから。」
私は義母の明るい性格が大好きだ。

全てが終わり、残った親しい親族でお弁当を食べた。
人生で一番豪華なお弁当だった。
お葬式が終わった後の家の中は、すごく和やかな空気が流れている。
お互いに思い出話に花を咲かせていて、笑顔が多かった。

帰り際、親族からは「こんなに大きな葬式でびっくりしたでしょう」と声をかけられ、私は「良い思い出になりました!」と元気に答えた。
みんなが笑って送り出してくれた。


本当に、大きなお葬式だった。
義祖父が皆に慕われていたことも分かったし、旦那が大切に育てられてきたことも改めて分かった。

義祖父に曾孫を見せてあげられなかったけれど「天国で2人が仲良くしてくれたらいいな」なんて、メルヘンなことを考えた。

天国で、安らかに過ごせますように。


読んでいただきありがとうございました。

死産後の火葬のお話はこちらです↓


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