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音楽の話 Suchmos 『THE ANYMAL』

今週水曜日は音楽の話。
先日発売されたばかりのSuchmosのフルアルバム『THE ANYMAL』がかなりの衝撃作だったので少し語りたい。

Suchmosといえば2017の音楽シーンに強烈な爪痕を残し、Yogee New Wavesやnever young beachと共にネオシティポップブームを牽引したバンドだ。

なぜSuchmosの音楽が若者たちの心を掴んで離さなかったのか、それは私達若者にとって「適温」とも言える等身大の心地よさがあるからだ。
古着が好き、レコードが好き、クラブで音楽に揺れるのが好き、90年代にはありふれていた趣味趣向を好む人達がここ数年で増えてきている。
お金も最低限生活出来る分と少し遊ぶ分だけ、車も持てない、そんな私達にSuchmosは等身大のリッチな世界を見せてくれる。

しかし、Suchmosは今回のアルバムで大きな変化を見せた。
その変化は2018年2月15日に配信限定でリリースされたシングル『808』から始まっていたと私は感じる。公開されたMVはアメリカで撮影されたものだが、今までのシャープで洗練された雰囲気ではなく、無骨で泥臭く男らしさを強く主張したものだった。

続いて2018年6月20日に発表されたミニアルバム『THE ASHTRAY』は彼らの方向性の模索の跡が伺える。ソウルやジャズといった要素は薄くなり、サイケデリック・ロックやAORなど、今まで彼らに見られなかった要素がミックスされており、その要所要所に泥臭く、無骨な雰囲気を漂わせるエフェクトがかけられている。
これはこれでいかにもSuchmosらしい音楽業界に媚びないスタンスが感じられるし、私は2018年のベストアルバムだと感じた。

しかし、今回のアルバム『THE ANYMAL』はそれを上回る衝撃だった。
そう、彼らはブルースを演奏し始めたのだ。それもとんでもなく完成度が高い上に、Suchmosらしさがしっかりと感じられる。


今までのSuchmosを期待した人は相当な衝撃を喰らったはずだ。
これで少しSuchmosと距離を置いた人もSNS上でちらほらと見られた。
だが、彼らの選択は間違っていない。彼らは自分たちのルーツとなった音楽を追い続けているだけなのだ。

彼らはイギリスのアシッドジャズバンドJamiroquaiの影響を大きく受けており、1stアルバム『THE BAY』2ndアルバム『THE KIDS』を聴けばその影響の大きさを感じることができる。
しかし今回はさらに遡り、ブリティッシュ・ブルース・ロックにまで手を出し始めた。

そう、彼らは今だに自分たちの音楽を模索し続けているのだ。
お洒落で都会的なサウンドがいくら人気になろうとも、そこに留まろうとはしなかった。それでも自分たちの音楽を突き詰めたかったのだろう。

かなり長くなってしまったが、結論としては、自分の土俵を変えてでも自分たちの作品を作り続けたいという彼らの強い創作意欲が感じられ、素直に応援し続けたいと思った。
この力強さは今の彼らにしか表現できないものだから。







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