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連載:マレーシアのチャンプルな友人達とその食卓。もやしがまた食べたい

マレーシア、イポーに行ったら
かならず食べるもの、それはもやしです。

へっ? と首をかしげたくなりますよね。わたしも最初は、へっ? となりました。

もやしは、イポーでは立派な主役キャラで、助さん格さんではなく水戸黄門さま、スネ夫じゃなくてのび太(ドラえもん?)です。

たとえば、イポー人は、もやしを食べにいこうか、という会話をふつうにするし、麺料理や炒めものなど様々な料理にもやしを使います。

とくに、イポー人が好むのは、ゆでもやし。
先日、レストランを営むジョアンさんが作ってくれたゆでもやしは、感動もののおいしさでした。

調理はいたってシンプルです。

水に漬けてシャキッとさせたもやしをお湯に10秒ほどくぐらせる
タレは、オイスターソース、醤油、砂糖、お湯。少々の鶏油と白胡椒

うまい。シャキシャキを超えたパン!プチ!の弾ける食感。その瞬間にしみ出してくるのは、まさに甘露水。もやしがこんなにみずみずしいんなんて。シンプルな調理がゆえに、もやしのおいしさが際立ちます。

イポーもやしに出会ってから、犬を飼い始めて町やテレビに出てくるすべての犬の存在が気になるようになったように、全もやしへのまなざしが変わったわたしです。

イポーのもやしをよく見ると、1本1本が短くて太め。もやしは他の野菜に比べて細胞のサイズが大きく、細胞内の水分を感じやすい。太いことでこの特徴をより体感できる

さて、イポーのもやしはどうしてこんなにおいしいのか。

その謎を解き明かすべく、2015年の6月、イポー中心地から車で約15分、もやしの産地であるブントンを訪ねました。

もやしを作り続けて40年の大ベテラン、チョンさんの栽培所を訪問

バケツ1杯に約90キロのもやしを栽培し、毎朝、バケツ10個分を出荷していました。出荷先は、イポー市内やクアラルンプールの飲食店で、彼らが直接ここに買いにくる、とのこと。

また「香港にも取引先があり、1週間に1回、もやし30キロを飛行機で送っているよ」とチョンさん。イポーもやしは、海外進出も果たしていました(2015年当時)。

原料の緑豆は、ミャンマー産。25キロを1000袋、5~6週間で使い切っているそうです。

栽培所は、屋根付き窓無し、日光は入らず。壁に格子がついていて、風通しはありました。ただ、扇風機など冷房施設はなく、立っていると汗がじんわり。チョンさん、さっさとTシャツをぬいで、上半身裸で作業します。

お腹が割れていて立派な体のチョンさん。それぐらいもやし栽培が重労働なのか

もやし栽培は、まず種の選抜から始まります。割れていない質のいい種をバケツに入れて、水やり。バケツは底に穴が開いていて、余分な水は下に流れていく仕組みです。

水やりは毎日5回

「朝2時、6時、12時、昼4時、夕方8時に水をやります。1度でも忘れると、もやしは全滅なので、正月もクリスマスもない365日の仕事です」とチョンさん。

使っている水は、地下水。イポーは山に囲まれていて、石灰やミネラルを多く含む地下水が流れています。この地下水を丁寧に濾過し、不純物を取り除いてから、もやしに与えています。

2日目に発芽。5日目にバケツいっぱいの量に育ちます。丁寧に洗って、黒い皮をとりのぞき、袋詰めにして出荷です。

保存できる期間は2〜3日間。そのため、業者は毎朝仕入れにくる


こうやって、おいしく新鮮なイポーもやしが、わたしたちの食卓に提供されれていました。

穴あきバケツ、水ホース、日光をさえぎる場所といった簡素な設備。地下水をたっぷり1日5回あげるという単純作業。これだったら、ほかの土地でも栽培できるのでは、と思うのですが、日本で栽培に挑戦してみた友人によると、どうしてもあの太さにはならない、とのこと。理由は、イポーの天然の地下水の恵みでは、といわれています。

イポー名物、ゆでもやしとチキンのコンビ


もやしを食べるために、イポーにまた行きたいです。

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