コピティアムってどんなところ?
マレーシア人はコーヒーが好き、と断言してしまおう!
証拠1 砂糖あり・無し、ミルクあり・無し、砂糖無しミルクありと、日本なら “お好きに” の部分まで細かくメニュー化されているから。
証拠2 ホット、アイスのどちらも好まれ、ときにアイスは「ピン」という広東語さえ使われているから。
証拠3 コーヒーに紅茶を混ぜた「チャム」、ネスカフェにミロを「ネスロ」といったアレンジ版も人気だから。
証拠4 コーヒーが飲めるコーヒーショップは町のいたるところにあって、たいてい繁盛しているから。
ということで、コーヒー好きのマレーシア人。彼らにとってのキーワードになる言葉が、コピティアム。
コピはコーヒー、ティアムは中国語(福建語)で店のことで、つまりはコーヒーショップの別名。天井にファン、大理石の丸テーブル、背もたれのあるイスがお決まりのインテリアで、屋根付きの回廊に面して全面開放。とてもオープンな空間だ。
中国由来の文字が入っているように、中国式の喫茶店である。ただし中国式といっても、店主が中国系の人、店名が漢字表記、というぐらいで、中国料理や中国茶が出てくるわけではない。あくまでもコーヒーの店で、コーヒーに合わせるのは、甘いカヤジャムをサンドしたマレー半島うまれのカヤトーストだ。
で、コピティアムがなぜ中国式かというと。
20世紀初めに都市部から各地に広がったコピティアムは、単身で渡ってきた中国人移民に向けて、コーヒーと簡単な朝食を提供する店としてスタートした。店主も、お客さんと同じ中国からの移民で、もっとも多かったのが海南島出身の人。
なぜ海南人かというと、彼らがマレー半島に渡ってきたのは1920年代。移住時期として最後だったため、仕事の空きがなく、唯一必要とされていたのが、当時の支配層であったイギリス人や裕福なプラナカン家庭のおかかえシェフだった。もともと海南人は、伝統的に男性が料理をする習慣があり、そのこともぴったりマッチ。
イギリス人の家庭で、西洋料理やコーヒー文化を習得した海南人は、経済発展とともに自分の店を開業。コーヒーと軽食を出すコピティアムの店主として成功をおさめたのである。
ちなみに海南島には、のんびり中国茶を飲む「老爸茶(ラオバーチャ)」といわれる喫茶文化があるらしい。この老爸茶とイギリス人から学んだコーヒーをミックスさせて生まれたのがコピティアム。このなりたちを称して、文化人類学専門の櫻田涼子さんは「移民社会におけるブリコラージュ(その場にあるものを組み合わせて目的を達成する)的記録の語り方」と称している。
最近のマレーシアは、西洋式のコーヒー、カフェラテ、エスプレッソなどを提供するカフェが増加。その一方で、昔ながらのコピティアムの人気も変わらない。
たとえば、ショッピングモール内には大理石の丸テーブルやセピア色の写真が飾られたノタルジックな雰囲気、それでいてクーラーやWifi完備の現代版コピティアム。また、イスラム教徒のルールであるハラルに沿ったコピティアムも多くあり、コピティアム=昔ながらの喫茶店、という意味で多くのマレーシア人に親しまれている。
カフェでも、コピティアムでも、コーヒーを片手におしゃべりしているマレーシア人を見て思う。きっと昔も今も、彼らが大事にしているのは、友人や家族と、ときにひとりでも、家とは別に、ゆったりとした時間を過ごすことができる場。そういう場がある大事さをマレーシア人はよく知っている気がする。
参考資料:『旅する21世紀ブック-シンガポール&マレーシア』/ FIELDPLUS 2018 櫻田涼子氏著
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マレーシアのコーヒー文化についてまとめてみました。最近人気のコピティアムは kaw kaw bungksだそう。今度マレーシアにいったら、立ち寄ってみよう。