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価値観の見える化。

先日「バターのいとこ」というお菓子を食べた。

那須の人気のお菓子で、通販は数ヶ月待ち、イベントに出店すると大行列、2019年には専門店もオープンしたという。

なにやら意味ありげな数字が印字されたクラフトボックス(写真上)のなかに、金色の銀紙で包まれたお菓子が3枚。

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楕円形のワッフル生地は、厚めのクレープぐらいのしっとり食感。なかには2色のクリームがサンドされている。

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濃厚な甘みのキャラメル色のクリーム、白いクリームはふわっとしていてバターのような香り。かむと、しゃりっとした食感があり、これはサトウキビを結晶化したものだそう。凝った食感といい、味の重なり具合といい、シンプルな見た目からは想像できないおいしさは、感動ものだった。

で、さらに、おいしいのに加えて衝撃を受けたことがある。

それは、ちょっとカタい言い方になるけど、商品のコンセプトがみごとに具現化されている、ということ。

公式Webサイトにこんな記載がある。

地元で採れたおいしい牛乳から作った良質なバターで、世の食卓をより豊かなものにしたい、ある日そんな想いが生まれました。しかし、バターは牛乳から5%しか採れない貴重なもの。その残りのほとんど(90%)が無脂肪乳となり、脱脂粉乳として安価に販売されています。

まったく知らなかった。バターを作るとき、牛乳からバターになるのはたったの5%らしい。のこりの95%は無脂肪乳で、廃棄するか、安価な脱脂粉乳になるか。そのため、体力のある大手企業しかバター作りに取り組めない世の流れになっている。

そこにちょっと待ったー! をかけるためにうまれたのが、この「バターのいとこ」だ。

小さな酪農家だって、じぶんたちのおいしい牛乳で、おいしいバターを作りたい。だったら安価に取引されている無脂肪乳でお菓子を作ったらどうか。それを売ってバター作りにいかそう。「バターのいとこ」が売れれば、酪農家はバター作りに取り組めるんです。と先日参加した「しもきたはっこうマルシェ」で伺った。


箱にある04の数字は牛乳がバターになる率。90は安価で取引されているスキンミルク(脱脂粉乳)、06はバターを作る過程で発生するバターミルクのこと。足して100が牛乳。

このようにコンセプトを明確かつおしゃれにデザインした箱のサイズは、一般的なバターと同じ大きさ。箱を開ければ、バターを包む銀紙でお菓子が1つずつくるまれている。2色のクリームは無脂肪乳で作られていて、ワッフル生地にはバターをたっぷりと。なので、食べれば自然とバターが思い浮かぶ。そんな意味でもまさに、商品名どおり「バターのいとこ」なのだ。

製法、味、そしてパッケージまで。じぶんたちが伝えたいことを形にする。つまり、目に見えない価値や思いを目に見える商品にしたのが「バターのいとこ」。こんなにも見事においしく形にできるなんて、すごいなぁ。



そういえば、今年2月にセブンイレブンで販売された「Dari K」のチョコレートドリンクも同じだ。上質なインドネシア産のカカオ豆をさらにフルーツ発酵することによってうみだされた美味。あれは今までのチョコレートドリンクの概念が変わるぐらいのおいしさだった。


わたしも常々、伝えたいことを見える化する作業に取り組んでいる。

たとえば、おいしいという見えない価値を伝えるために文字を書く。食材のルーツや料理人のこだわり、食べる人の思い、その土地の文化や歴史を言葉にするのも、見える化のひとつだ。

ただ、言葉ではまだ足りない。文字化したら、それを体験できる商品や場が必要だ。それがきっと、わたしがやるべきことなのかもしれない、と最近じわじわ考えている。

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3月28日に開催された「しもきたはっこうマルシェ」、久々のフェス参加で友人にも偶然に会え、とても楽しかった。「バターのいとこ」に加えて発見したこと(概念)がもうひとつ。発酵好きは、酒好きである。

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