『燃ゆる女の肖像』
観に行ってきました。
ものすごい名作かどうかはわからない(まだそこまで消化できていない)んですが、わたしはとても好きでした。
※以下、核心には触れないけどストーリー展開上の多少のネタバレを含みます。
画家の女のひと(マリアンヌ)と貴族の娘(エロイーズ)の話だというのは事前に知っていたんだけど、もう一人、館にいる唯一のメイド(ソフィ)がいて、その三人での束の間の共同生活シーンがとても良かった……隔絶された離島の、誰にもじゃまされない、一つ屋根の下での楽しくて儚い時間……。
ソフィの容貌が、本当に17~18世紀の風俗画から抜け出してきたみたいで、登場した瞬間からあまりの完成度に目をみはった。
でもって彼女の刺している刺繍が、作中の時間経過を示すだけのモチーフではなくて、この物語に登場する絵や文学や音楽と並んで、彼女にとっての表現なんだろうなと思う。
彼女の着ていた服の刺繍も、彼女の作品なんだろう。
ロマンス映画だと思うけどふたりがそれぞれどこで恋に落ちたのかわからなかった……わたしの人間レベルが低いばっかりに……と思っていたけど、パンフレットにも「いつ、恋におちていたのかはわからない」とあって安心しました。ちゃんとそういう話だった。
あと、冒頭からずっと、18世紀か19世紀だと思うけどいつが舞台なんだろう……と考えながら観ており(ひょっとしたら見落としていただけで明示されていたのかもしれない)、話が進むにつれ「たぶん18世紀だろうな……」とは思ったのですが、チェンバロを弾くシーンで「これ! もしわたしに音楽の知識があれば何の曲かわかって時代が特定できただろうに! 教養がないばかりに!」とかなしくなりました。
エンドロールを見るまでタイトルがわからなかった。
全然話の本筋には触れていないんですけど、本筋については特にいうことはないです。
悪い意味ではなくて、さしだされたものをそのとおりに存分に味わったという意味で。
ひと言記しておくなら、登場人物の女のひと四人がそれぞれ、自分ではどうしようもないこともたくさんあるなかで自分の意思で自分の行動を選択しているところが好きでした。