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『冥府のハデスさん 第1話』短編オトシンワ(オーディオドラマ)脚本

「耳で聴いて心で感じる」オトシネマは、音の映画をコンセプトに、様々な音声作品をSpotify等の音声プラットフォームにて配信しております。

こちらのオトシネマ作品集【脚本アーカイブ】では、配信されている作品を文章の形でご紹介させて頂きます。

耳の不自由な方、聴くのが難しい環境の方も、是非こちらからオトシネマコンテンツをお楽しみ頂けましたら幸いです。

冥府のハデスさん

『冥府のハデスさん』~第1話~


登場人物

■ゼウス(オリュンポスの最高神)
■ガイア(別名・アマルテイア。ゼウスの育ての親。)
■ハデスさん(ゼウスの兄)

あらすじ
ギリシアで生まれ育ったゼウス。
両親の居ないゼウスは、祖母にあたるガイアに育てられてきた。
そんな二人はいつも、漫才のように愉快な会話を繰り広げている。
ある日、ゼウスはガイアから驚きの真実を聞かされる!
全てを知ったゼウスは、どうなってしまうのか…!?

(※以下Spotifyリンクよりオーディオドラマのご視聴が可能です。)

ゼウスとアマルテイア

はるか遠い昔の話…。

(軽やかでスピーディーな弦楽器の音楽が流れ始める🎵)

アマルテイア「ゼウス!ゼウスはおるかの!!」
おばあちゃんのとても大きな呼び声が聴こえる。
ゼウス「うるさいねん!聞こえとるわ!そんな叫ぶなババア!」
アマルテイア「ゼウスはどこじゃあ!!」
ゼウス「ここじゃあ!目の前におるやろが!😩」
アマルテイア「おぉ、こんなとこにおったんかい😐」

(ここから、飄々としたワルツの音楽が流れ始める🎶)

ゼウス「ずっとおってん!目の前に。あほみたいに叫びよってほんまぁ…。」
アマルテイア「今あほいうたか?😒」
ゼウス「いうてない。」
アマルテイア「まぁよいわ。それよりなぁ、今日はお前さんに大事な用があってきたんじゃ。」
二人は関西弁のイントネーションで、テンポの良い会話を続けている。

ゼウス(ナレーション:以下NA)【ワイの名前はゼウス。ここギリシアのクレタ島、ディクテオン洞窟で生まれ、洞窟育ちの普通の人間や。そんでもって今ワイの目の前におるババアが、ワイの育ての親になるアマルテイア。ワイには父と母がおらず、赤ん坊の頃からこのアマルテイアが育ててくれてたそうや。理由はわからへんが…。】

ゼウス「なんやねん、大事な用って。」
アマルテイア「あぁ、簡潔に話すで。」
ゼウス「おう。」

(ここから、気迫を感じるエレクトーンのような音色が流れてくる🎶)

アマルテイア「わしのほんまの名前はガイアで大地の女神や!!
そんでもってお前さんの父と母はまだ生きてて、しかも二人とも神様で、そんな神様の二人の間から生まれたんがゼウスお前さんなんや!まぁ色々あって大変なことになってるから、お前さんの父クロノスを倒すの手伝え!!」
アマルテイアは物凄い早口で、一から十まで止まらずに説明し始めた。
たまらずゼウスは、まくしたてるように止めに入った。
ゼウス「待て待て待てヤァ!😫💦」

(のっそりとした笛の音楽が流れ始める🎵)

ガイア「なんじゃぁ! 今は説明しとる暇ない!行くぞ!😠」
ゼウス「あほか!ちょっと待ってよ!え?何? どこから突っ込めばええんよ!?💦」
ガイア「今はそんなこと気にしとる場合やない!行ーくーぞ!!」
ゼウス「いや、行かへんて!😨」
ガイア「お前は何がそんなに不満なんじゃ!?😠」
ゼウス「全部よ!!情報量多すぎてわけわからんわ!どういうこと? ワイ、孤児やなかったんか?」
ガイア「違う。」
(『ドゴッ』と掴むような音が聴こえる。)
ガイア「ほれ行くぞ😑」
ゼウス「だから行かへん言うてるやろ!どんだけ行かせたいねん!!
ええか?ちゃんと一から説明するまで、ここ動かんからなぁ!😤」
ガイア「全く…とんだ我がままボーイじゃ。」
ゼウス「しばくぞ。」

ゼウスの家族

ガイア「しょうがないのう…。んー、どこから説明したもんか…。」
ゼウス「とりあえず、お前は一体何者やて?」
ガイア「あぁ、そっからか…。」

(『ん゛っううん』とガイアの咳払いが聴こえる。)
(ここから、何かが迫ってくるような不気味な音楽が聴こえる🎶)

ガイア「ゼウスよ、よく聞くんじゃぞ。ワイの本当の名前はガイア、大地の女神じゃ。訳あって身分を隠してアマルテイアと名乗っていたのじゃが、それも今日までの役目じゃ。そしてゼウスや、わしは…お主の祖母なんじゃ~~!」
声を揺らしながらゆっくりと喋り、大事感を出しながらガイアは説明した。
ゼウス「え、え~?😨」
ガイア「んっふふ~! おばあちゃん💗って呼んで♪😆」
ゼウス「いや、ちょっと嫌かなぁ😑 んで、まだちょっと理解追い付けへんわぁ。」
ガイア「女神様~! って呼んで!!」
ゼウス「あんま調子に乗んなよ。そ、それよりワイの両親について教えてくれや!」

(『ピチチ…』と鳥の優しい鳴き声が聴こえてくる🎵)

ガイア「あー、うん、生きてて元気😐」
ゼウス「雑やねん!ちゃんと説明してくれや!どんな人で、何やってんのかとか!」
ガイア「んー…二人とも神様じゃよ。母の名前はレア、父の名前はクロノス。」
ゼウス「ワイの両親が、生きてる…?しかも神様…?つまりそれって…🤔」

(どこか怪しげで落ち着いた楽器の音楽が流れ始める🎵)

ガイア「そう、お主は神の子じゃ…! KIDじゃぁあ!!💥」
ゼウス「おいおい、まじかよ・・・💦」
ガイア「どんな気分じゃ・・・?」
ゼウス「いや、正直実感わかんし、理解も未だ追い付いてないわ。でもなんやろか・・・不思議と心地いいっちゅうか、今まで捨てられたと思っとったから普通は怒りとか沸くはずなんやけど、妙に安心したっちゅうか、なんちゅうか……🤨」
ガイア「それはどこかで神通力のようなもので繋がっていたんじゃ…。神の子…KIDじゃからなぁ!!💥」
ゼウス「さっきから挟んでくるそれ腹立つねん😑」
ガイア「まぁ、今まですまんかったのう。お前さんを守る為にここまで黙っていたんじゃ。」
ゼウス「せや、そもそも守るって何からやねん。ワイの両親が神様なんやったら危険な環境なんてないやろ?」
ガイア「そうじゃないんじゃ、ゼウスよ…。お主はその神から生まれてしまったがゆえに危険な目に合うんじゃ…!😨」
ゼウス「どういうことやねん?」

(『ドドン…』と低い太鼓の音が聴こえてくる。)

ガイア「お主の父親…クロノスがお前を消そうとしておるんじゃあぁ…!😱」
ゼウス「な、なんやて…?!」
ガイア「実をいうとな、お主には兄と姉含めて5人もおるんじゃが。」
ゼウス「ワイに兄弟までおるんかい・・・。」
ガイア「しかし全員産まれた瞬間、クロノスが飲み込んでしもうたんじゃ。」
ゼウス「はぁ!?どういうこと!?😯」
ガイア「こう・・・ぱくっとこう、物理的にな?」
ゼウス「いや、物理法則のっとってへんと思うけど。ま、まぁええわ・・・とりあえず、神様やしそういう事できたんやろな。そういう風に解釈しとくわ。食う動機がわからんけど。」
ガイア「あぁ、わしの元夫のウラノスがクロノスに殺される前に、『お前もいつか産まれる子供におんなじことされるからなぁ!!💢』とか言われてたのが原因じゃよ。」
ゼウス「えぇ~? めっちゃ家庭環境複雑で混乱してんやけど…。」

(明るいドラムとギターの音楽が流れ始める🎵)

ゼウス「どんな事情があったらそんなことなんねん…。」
ガイア「過ぎたことを振り返っても仕方ないのよ! 今はただ前を向いて生きるのよ!😌」
ゼウス「さっぱりしてんなぁ!😯 安心感すらあるわぁ!」
ガイア「それでじゃ。本来ならお主も産まれた時に食われるはずやったんやが、母のレアが機転を利かせて、お主の代わりに巨大な石を用意して、それをゼウスってことにしたんじゃ。」
ゼウス「おかんヤバ過ぎやろっ!石と赤ん坊どうやっても間違えへんやろうがぁー!😫」
ガイア「そしてクロノスはまんまと騙されその石をゼウスと思い込み飲み込んだんじゃ😏」
ゼウス「おっ、オトンもアホやった。」
ガイア「そして、お主が青年になるまでわしが育て上げたんじゃ。母のレアが世話をすると、クロノスに感づかれてしまうからな…。長いこと騙してスマンかったのう😓」

(『ピチチ…』と鳥の優しい鳴き声が聴こえてくる🎵)

ゼウス「ま、まぁ色々あったんやな…。なんていうか、こっちこそ今まで無事に育ててくれてありがとうな・・・そこは素直に感謝するわ。」
ガイア「んっふふーもうっ!  おばあちゃんって呼んでぇ!!😆✨」
ゼウス「あ、それはちょっと。」

いざ、クロノス討伐へ!

ガイア「しょうがないのう!😠 んー、とりあえず説明は以上じゃ。ほれ、はよ行くぞ!」
ゼウス「さっきからずっと思ってたんやけど、どこに連れて行こうとしとんねん?」
ガイア「決まっとるじゃろ!クロノスのところじゃ!!」
ゼウス「え?なんで?🤨」

(ここから、不穏なバイオリンの音楽が流れ始める🎻)

ガイア「なんでって、そりゃあれじゃよ。お主の兄姉を助けるために決まっとるじゃろ!」
ゼウス「いや、助けるー言うたって、オトンに食われてもうたんやろ?」
ガイア「舐めるでないぞゼウスや。食われたのは普通の人間じゃなく、神の子じゃあぁぁ!!この間もクロノスの腹の中から『出してー!😫💦』って言うておったわ!」
ゼウス「生命力凄いな!!😮 ほんで世界観きもっ。」

ガイア「もう、ほれ!さっさと支度するんじゃ!お主にクロノス討伐をしてもらわんといかんのじゃ。」
ゼウス「ちょ、ちょっと待てや!ワイに実の父を殺せっていうんか!?💦」
ガイア「よく考えてもみるんじゃ! 実の子を食おうとしている父親を父親と呼べるか?!呼べんやろが!😡」
ゼウス「た、確かに・・・。」
ガイア「う゛ぅぅ…😭  自分の兄妹が未だに助けを求めとるんじゃぞ! 唯一助かったお主が助けんで、誰が助けるんじゃー!!」
ゼウス「ババア・・・😟」
ガイア「それにレアもわしも手を汚しとうない😐」
ゼウス「はい、今本音が出ましたね、最低です😑」

ガイア「がぁー!とにかくお前がやらねば、あの男はあのまま一生暴君として君臨してしまうんじゃ! あいつを倒して、神の世界を統治できるのはお主だけじゃゼウス!! た~の~むぅ~~!😫」と、駄々をこねている。

(ここで、壮大なファンファーレの音色が流れ始める✨)

ゼウス「…わかったわ!しゃあないなぁ…。ばあちゃんの頼みなら断れへんわ。」
ガイア「おおぉ!!ゼ、ゼウスぅ…!🥺✨」
ゼウス「ほれ、用意していくで!」
ガイア「ふむっ!わしの孫を救いに行こう!!」

戦いの行方

ゼウス(NA)【それからしばらくして・・・】

ゼウス「なんか…あれやったな。」
ガイア「なんじゃあ?」

(ここから、『チャチャン♪』と可愛らしい音楽が流れ始める🎵)

ゼウス「や、なんじゃあ、じゃなくてさ……。」
ガイア「あぁ…あれか…😑  いやー…まさかクロノスとあんな死闘を繰り広げるとは…。流石は神の子じゃ・・・!!😆」
ゼウス「嘘つくなや!飯に嘔吐薬飲ませたら面白いくらい吐いて、普通に兄妹出てきたやんけ!!😫」
ガイア「まさかこの死闘が戦争にまで発展して10年も戦うとは・・・!!」
ゼウス「嘘つくなぁ言うてんねん! ものの見事に秒殺やったやんけ!
ワイかて信じたないよ?!一応倒す前に、嘔吐薬で様子見ようってワイ言うたよ。ほなそれで決着ついてもうたやんけ!ビックリすんねんほんま!😫」
ガイア「この戦争のことは今後、ティタノマキア戦争として語り継がれるじゃろう・・・。」
ゼウス「捏造すんなって!いい加減現実みろや! いいか?オトンの事も結果的に倒さんと済んだ!しかも和解までしてくれた! 兄妹も皆助かった! 超が付くほどのハッピーエンドやんか!わざわざ変な脚色せんでもええねん!」
ガイア「それじゃ神の面子が保たれへんやないかぁ!😫」
ゼウス「いらぁん!そんな面子! 平和が一番やろうが!」
ガイア「いーーやーーじゃぁ!! 壮大な物語がいいのぉー!!😩」
そう言ってガイアは、またもや駄々をこねている。
ゼウス「また訳の分からん事ぬかしやがって・・・。」
ガイア「クロノスもクロノスじゃ!どんだけ脆弱な体なんじゃ!情けない!ぼけ!😠」
ゼウス「もうええがな!」
ゼウス「それよりも、ばあちゃん。」
ガイア「なんじゃ?」
ゼウス「兄弟みんな助かったけど、一人だけ変なんおるやろ?」
ガイア「おらん😑」
ゼウス「おんねん。」

(『ドッドッドッ』と、逃げていく足音が聴こえる👣)

ゼウス「あ…こら!どっか行こうとすんな。」
あっさりと捕まったガイアは『んにゃにゃ…』と口を吃らせた。
ガイア「…んー、あの子どもか。」
ゼウス「せや、ハデスとか言うやつや。他の兄弟はワイと見た目も変わらんのに、あいつだけ見た目子どもやないか。」

(ここから、リズミカルなビートミュージックが聴こえ始める🎵)

ガイア「そのことなんじゃが・・・。」
ゼウス「なんや、原因わかんのか?」
ガイア「あのハデスは、腹の中でも兄妹たちに栄養を分け与えてたのかもしれん…。いくら神でも腹の中にいたのであれば、力の消耗も激しいからのう…。」
ゼウス「なるほどな・・・🤔 しっかりした奴やな。」

ガイア「まぁ、今回の件でお主は最高神の座をクロノスから引き継ぐ事になったから、よろしく頼むー。」
そう言ってガイアは、大事なことをサラサラっと言ってのけた。
ゼウス「はぁ!? きいてへん!きいてへん!😫」
ガイア「そらそうじゃろ、今言うたんやから。」
ゼウス「なんで?! オトンは?!」
ガイア「うーん…もうプレッシャーに耐えられへんし、命奪うのも狙われるのも嫌やから、神様引退するーとか言うて自室に引きこもっておるわ。」
ゼウス「えぇー…。いきなり言われてもなぁ…💦」
ガイア「まぁ、別に神になったからと言うて何も変わらへんぞ?お主は雨降らせたり、天気を適当に操作しとけばいいんじゃ。」
ゼウス「す、すごいな・・・😯」
ガイア「気に入らん奴には雷落とせるんじゃぞ😏」
ゼウス「やらへんわ😑」
ガイア「まぁ、色々と環境が変わってしまうが、徐々に慣れてってくれ。」
ゼウス「お、おぉう・・・。」

ガイア「さて今日はもう疲れたじゃろ!さっ、もう寝て明日からの神様の仕事に備えるんじゃ!」
ゼウス「うーん…せやな。色んな事が一気に起こりすぎて、確かに疲れた・・・😅  今日は寝るわ!」
ガイア「うん。そうせい、そうせい。」
ゼウス「うん、ほなお休み~😌」

(ここから、怪しげでダークな音楽が流れ始める🎵)

ガイア「・・・行ったか。ゼウスよ…お主には悪いが、この日のことは壮大な物語として記録し、地上の人間達に伝わることになるじゃろう!! これも神々の面子の為! にゃあっははははは!!!😆」

ゼウス(NA)【その後、大いに脚色された神話本が後世に語り継がれ、天界で大問題になったのはまた別のお話。】

《 おしまい 》


作品制作キャスト・スタッフ

■ゼウス・ナレーション:井上祐基
■ガイア(アマルテイア):垣尾麻美
■ハデスさん:近藤知史
■脚本・音楽・監督:片山大輔

■脚本編集/記事掲載:ニーナ
■イラスト:TATASUMIRE

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