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オトブミ集 2024 執筆者・朗読者のご紹介と講演会開催のご報告

本年度のオトブミの執筆者・朗読者を以下にご紹介いたします。
今年も素晴らしい皆様からのお力添えを賜り、心より感謝申し上げます。

▼ 2024年度 執筆者(順不同)
ちばてつや 様  漫画家/公益社団法人日本漫画家協会会長
葦原  海 様  モデル/インフルエンサー
清野 賢司 様  特定非営利活動法人TENOHASI 代表理事
蓮田  健 様  医師/熊本慈恵病院理事長院長
吉水 岳彦 様  浄土宗光照院住職
山本 梨菜 様  大学生
西口 敏治 様  教育研究家
伊東  楓 様  画家/元TBSアナウンサー
藥師 実芳 様  認定NPO法人ReBit代表理事
津久井教生 様  声優/ALS(筋委縮性側索硬化症)当事者

▼ 2024年度 朗読者(順不同)
原田 知世 様
斎藤  工 様
磯村 勇斗 様
内村 光良 様
高畑 充希 様
長谷川京子 様
 


講演会開催のご報告

11月の配信開始に先駆け、7月に開催いたしました主宰 岩代太郎の講演会におきまして、高橋克実さんの朗読にてちばてつや先生の詩を披露いたしました。

▼開催データ
岩代太郎講演会
人生はソナタ形式〜こころざしで奏でる旋律(メロディ)と和音(ハーモニー)

日時:2024年7月28日(日)14:00〜16:00
会場:有楽町朝日ホール
出演:岩代太郎 / ゲスト:高橋克実
参加費:無料

有楽町朝日ホール ご来場の皆様と
楽屋にて 朗読ゲストの高橋克実さんと


ちばてつや先生の詩の全文

「いのち」
作  ちばてつや

中国大陸から引き揚げてくる海の上、
すし詰めの仄暗い船内で、
さっきまで一緒に遊んでいた幼馴染のキョウイチ君が動かなくなった。

船の中で配られたカンパンがふたつ食べ残されて、
眠っているようなキョウイチ君の枕元に供えられている。
「キョウイチはね、もう食べなくても良いのよ」
おばちゃんは寂しげな笑みと涙を浮かべて、
そのカンパンをそっと僕に手渡してくれた。
栄養失調でガリガリに痩せ衰え死んでしまった友だちの亡骸を布で包み、
海に降ろして弔ったときの驚きと寂しさは、今でも決して忘れられない。

終戦の夏。
木漏れ日の中でキョウイチ君と一緒に遊んだのは、わずか一年前。
活発な軍国少年だった彼は、僕の作った砂山を蹴散らし、
戦闘機のオモチャを頭上に掲げて元気に走り回っていた。
それなのに、、。

今現在も、こんなに生き長らえている爺さんに言われたところで、
誰ひとり信じてくれないかも知れない。
だけど、いのちっていうのは本当に儚く脆いものなのだ。

大陸の冬は零下30度と本当に厳しく、辛く、痛くて寒い。
なんとか故郷の日本に帰りたいと願い、
みんなで必死に頑張ったけれど、
食べものも薬もない旅の途中で、
お年寄りや赤ん坊など弱い者から次々と息絶えていった。
ツンドラのように硬く凍った大地は、穴を掘ることさえ叶わず、
亡くなった人たちは息絶えた姿勢のままに凍りつき、
路上や畑の中で置き去りにされた。

僕が今伝えているのは、戦場で儚く散った兵士の物語ではない。

ついこの間まで人間らしく生活していた、
ごくごく普通の人々に起こった真実の物語だ。

戦争とは、これほどまでに罪深く愚かなことなのに、
人間は今も世界中で止めることも出来ず、繰り返している。
しかも爆撃で山を削り、海や川を汚し、多くの動植物も犠牲にしている。

人間がこの世にいる限り、戦争が無くならないのだとしたら、
人間とはあまりにも邪悪で罪深い存在なのではないか。

この地球上に息吹くすべてのいのちに捧げるべき
「償いと弔いの言葉」を、
僕は持ち合わせていない。

いのちっていうのは、本当に儚く脆く、尊いはずなのに。


継続のご支援のお願い

NPOオトブミは、志を同じくする仲間とともに
100篇のオトブミ集の完成に向けて今後も制作に励んで参ります。
どうかこの先も引き続き皆さまの心をお寄せいただき、
SNSなどを通じてご友人のみなさまへ広めていただければ嬉しく思います。
今後も末長くご支援を賜れれば幸いです。

▼オトブミのご支援、最新情報はこちらから

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X(旧twitter) https://twitter.com/OTOBUMI_KIZUNA
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