私が宝塚を愛する理由を思い知った宙組千秋楽

真風涼帆さんと潤花ちゃんのトップコンビ、そして長らく宙組を支えてこられたすっしー組長、しどりゅー、あきも、たっく、いとゆがご卒業なさった、宙組公演大千秋楽。
私は配信で拝見しました。
星組大劇場、月組シアターオーブが休演の中、無事に千秋楽の幕を下ろすことができた宙組公演。
全員そろって無事に幕を下ろすことが当たり前でなくなった時代だからこそ、本当に、よかったなあ、おめでとうございますって思います。

作品に対する感想は大劇場で見た時からさほど変わりませんが、小池先生が真風さんの過去作へのオマージュやしめっぽくならないようにとコメディ仕立てを画策したことを「愛」だととらえるなら、これはこれでありだったのかな……うーん。
ミュージカル好きで００７ファンの兄に配信があることを知らせたので、兄も購入して視聴したようですが、
「００７の世界観ではないね」と感想が……
そうね、そうなのよ。００７では……ないのよね……
世界配信で、007ファンの皆さまが「何じゃこりゃ！」となっていないことを祈るばかり。華やかで綺麗な舞台だなあって楽しんで頂けていたら嬉しいな。

ちなみに大劇場公演の感想はこちら
舞台感想　宝塚歌劇　宙組公演　カジノ・ロワイヤル　～我が名はボンド～｜おとぼけ男爵 (note.com)

前置きが長くなりましたが、やはりこの配信で感動したのは本編が終わってから。
今回のサヨナラショーは本当に、本当に素晴らしい構成だったと感心します。
もう、観たい場面がすべて詰まった、愛に溢れるサヨナラショーで、本当によかった。
デリシューってショーがあってほんと良かった。
反射的にあの振りで踊っちゃうものねえ。マカロンシャンシャンペンライトは私の中ではあの手の公演グッズでナンバーワンだと思います。振り付けを含めて。観客と演者の一体感を感じる演出は過去一だと評価しております。

そして、最後のご挨拶。
大千秋楽は、本当にこれで終わりだからご卒業者の言葉が一つ一つ重くて、胸にせまります。
黒燕尾での真風さんのご卒業も、なんか宙組らしくていいなって感じました。

そして、全宝塚ファンが涙したと思うのが
「せりかち～ん」からの引継ぎシーンだと思います。
あれを観ていて、私が宝塚歌劇が好きなのは、愛に溢れた上下関係と仲間意識の中で、最高のパフォーマンスを見せようと努力するタカラジェンヌの姿に感動を覚えるからだなあって改めて思いました。
本当にあの二人には色々あったと思います。
キキさんが宙組に組替えってちょっと衝撃的なものがありましたものね。
様々な人から向けられるポジティブ、ネガティブ入り混じる思いを受け止めながら、一緒に作品を作り上げてきた二人の間にはそりゃ様々なことがあったと推測します。

まあさまのご卒業時に、おろおろと困ったように現れた真風さんが、見事に宙組を引っ張ってご卒業なさる。
その真風さんに呼ばれたキキさんが、無理無理って大泣きしてして、どうしようカットできないよねとしょげてしまう。
そんなキキさんの性格も含めて組子たちに申し送りをする真風さん。
上級生が下級生に様々なものを渡しながら卒業していく、宝塚歌劇の去り際の美学みたいな世界が、私は大好きなんですね。
だから、その根底にある規律正しい上下関係を維持し続けるタカラジェンヌという存在がたまらなく好きです。

大勢の人の手を経て出来上がるあの美しい舞台が、厳しさなしに成立するわけがありません。
嫌な思いをすることも、大変なプレッシャーやストレスを感じることも、あるでしょう。
弱音を吐くこともあるだろうけれど、それを支えあいながら乗り越えてあの舞台が出来上がっている。
私はそんな舞台から色々なエネルギーや感動を頂けることが幸せです。
人だから感じる悔しさや辛さを乗り越えて手にした何かを見せてくれる。
そんな感情やパワーが、観ている人の心を揺さぶる。
AIでは代わりのきかない世界がそこにはあって、100年以上の歴史を刻んでいるのが宝塚歌劇団の素晴らしさだと思います。

だから、ああしてバトンが手渡されていく姿を見ていると、ああ、私は宝塚のこんなところが好きなんだなあってしみじみ思います。

この美しい世界を、週刊誌なんかが、得体のしれない関係者という名のうさんくさい情報で「いじめ」や「パワハラ」などと騒ぎ立てているのを見ると、呆れてしまいます。お門違いも甚だしい。
愛のある厳しさを理解できない人間が、真摯に芸事を極めようとする人々を誹謗中傷しないかとヒヤヒヤしてしまいます。そして、そんな中傷を恐れて厳しい指導や愛のある叱咤がなくなってしまわないだろうかと不安に思います。
スターになっても生徒と呼ばれ、音楽学校時代からの規律を重んじ、感謝の心を忘れずに芸事に精進するタカラジェンヌたち。

私はそんなタカラジェンヌたちの作る舞台をなによりも愛しているなあって思い知った配信鑑賞でした。

真風さん本当にお疲れさまでした。
そして
「せりかち～ん」の作り上げる新たな宙組が楽しみでしょうがない。
やっぱ、宝塚ファンでいるっていいな。