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シナリオ『私を征服してください』

【松雪久秀】
同世代の友人、川谷から、『娘と会ってほしい』と言われた…。

俺の名は、松雪久秀(まつゆきひさひで)。
脱サラして、『哲学者』…、職業区分的には、『文筆家』『思想家』『エッセイ書家』などと呼ばれてる。
俺は世の流れとは逆行するように、日本家屋に着物、書に埋もれながら、まるで仙人の如く暮らし、日々書くネタを探して生きている…。

俺の家に川谷の娘さんがやって来た。

【川谷柚子】
「ごめんください」

【松雪久秀】
25歳前後と思われる、川谷の娘は…、腰まで届く黒髪、華奢な肩…。
清楚な美人という印象だ。
だが、少しだけ歳の割に、目付きが幼いな…。

【川谷柚子】
「…あの。松雪先生…ですか?」

【松雪久秀】
「ああ、そうだ。君は?」

【川谷柚子】
「川谷柚子(かわたにゆず)です。父がお世話になってます」

【松雪久秀】
「上がりなさい。お父上からだいたいの話は伺ってるよ」

【川谷柚子】
「本当ですか✨」

【松雪久秀】
「ああ、びっくりしたがね」

【川谷柚子】
「なら、先生。
私言われたら、なんでもします…。
なので…、
先生、どうか、私を征服してくださいませ」

【松雪久秀】
友人曰く、こういう事らしい。
この娘は友人の家で真面目に幸せに過ごし、大人になって恋に落ちた。
だが、最初の男がひどく支配的な男だったらしい。
彼女は男の言う事に、ボロボロになるまで、従い続け、半年で捨てられた。
そして、彼女は間違った恋の学習をした。
彼女は恋の相手に『全部の選択肢を委ねる』のが恋だと思い込み、
次の恋でも、その次の恋でも、
ボロボロになるまで、相手の言う通りにし、見かねた家族が心配して、引き剥がすように別れさせたそうだ。

【松雪久秀】
「征服…ね。なんで俺なんだ?」

【川谷柚子】
「父が、『松雪先生なら、悪いようにはしないだろう。安心して頼れる存在だ』と…」

【松雪久秀】
なんという無茶なことを要求するのか…川谷!
俺だってやましい願望のひとつやふたつ、ないわけじゃないんだぞ!?

【川谷柚子】
「あの、本当なんでもします。いつでも、なんでも言ってください」

【松雪久秀】
「いつでもって…君、仕事は?」

【川谷柚子】
「…えと、4年続けてた飲食店のバイトがありましたが…辞めました。辞めざるおえなくて」

【松雪久秀】
「辞めざるおえない?どういう事だ?理由は?」

【川谷柚子】
「……その、以前付き合ってた方が、『なんでも言う事聞くなら』と…、その、振動する遠隔のオトナのおもちゃをずっと付けてほしいと…。
バイト中でも…って」

【松雪久秀】
絶句…とは、この事である。

【川谷柚子】
「…さすがに、恥ずかしくて、バイト先に居られなくなって、辞めました。
すみません、こんな話」

【松雪久秀】
「なんでそこまで…。相手の言う事を聞くんだ君は?」

【川谷柚子】
「なんで…?…なんでだか、わからないんです。松雪先生、教えてください」

【松雪久秀】
選択肢どころか、自分の思考も相手に投げてしまえる…彼女。
その様子がひどく淫靡で、なのに、いとけない少女のようでもあった…。

【松雪久秀】
「逆に聞くが、俺にしてほしいことはあるか?出来る範囲でなら、応えるが?」

【川谷柚子】
「本当ですか!✨
…なら、その…、頭を撫でてほしいです」

【松雪久秀】
「頭を撫でる?それくらいなら大丈夫だが…。
よしよし…」

【川谷柚子】
「(微笑む)…くすっ!わあい✨」

【松雪久秀】
「他には?何かあるか?」

【川谷柚子】
「わがまま言っていいなら…!
ぎゅーっと抱きしめてほしいし、一緒にお風呂入ったり、一緒にお布団で寝たいです!」

【松雪久秀】
「…それは…、抱いてもいいって事か?」

【川谷柚子】
「あ、えと、その…、私をお望みでしたら、どうぞ。
如何様にも抱いてくださいませ。
何にでもお応えします。
だって先生は、私を征服してくださるんですもの」

【松雪久秀】
ここまで、色気と幼児性を兼ね備えた女性を、俺は知らなかった。
その晩は、風呂でも、布団でも、彼女を抱いた。
彼女の喘ぐ声は、大人の嬌声にも、少女の泣き声にも思えた…。

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