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シナリオ『体は覚えてる〜愛の運動記憶〜』


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【智恵】ちえ・30代妻・記憶喪失
【和佐】かずさ・40代夫・妻を愛してる

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【和佐】
「よっと…、ちえ自転車漕げそう?」

【智恵】
「うん…やってみます…!えいっ!!」

【和佐】
彼女はがんばって自転車を漕ぐ…。
ひと足ひと足ペダルを漕ぎ、前へ前へと進めた。チリンチリン。喜びのベルを鳴らしてる。

【智恵】
「漕げた!漕げたよ!」

【和佐】
「うおおー良かった!漕げたな!ちえ」

【和佐】
自転車から降りて、俺と喜びを分かち合おうとする彼女…。だが…。

【智恵】
「漕げました!…あ、え〜と、お名前は…」

【和佐】
「…俺の名前はかずさ、君の旦那さんだよ」

【和佐】
道で転びそうなおばあちゃんを助け、かばった拍子に頭を打って…俺のお嫁さんは記憶喪失になった。
CTやMRI検査に異常はなく、医師によれば、しばらくしたら記憶が戻るだろうとのこと。
今は休日のたびに、いろいろチャレンジして、出来ること、出来ないことを探ってる。

【和佐】
「運動記憶はしっかり残ってるみたいで安心したよ」

【智恵】
「運動記憶ってなんでしたっけ」

【和佐】
「たしか、身体を使って覚えた記憶だよ。自転車とか水泳とか、一回覚えるとまた後で再現できるんだ。…とりあえず、自転車漕げるなら日常の移動には困らなそう」

【智恵】
「はい、かずささん。付き合ってくれてありがとうございます」

【和佐】
「かず君」

【智恵】
「え?」

【和佐】
「ちえは俺のこと、『かず君』って呼んでたの」

【智恵】
「そうなんですか?…なら…、かず君」

【和佐】
「ん!いい子だ。ちえ」

【智恵】
「照れます。恥ずかしい…!
私、本当にあなたと結婚してたんですか?」

【和佐】
「うん、してたよ。2年お付き合いして、1年ウチの実家に同棲して、結婚したんだ。去年亡くなった母からも好かれてたよ」

【智恵】
「信じられない…本当に私が、あなたみたいな優しくてかっこいい…素敵な人と結婚してたなんて」

【和佐】
「え?優しくてかっこいい?…俺が?」

【智恵】
「はい…かなりタイプな男性だから、よく私、告白とかお付き合いできたな…と」

【和佐】
可愛いすぎる。
まるで付き合いたての頃みたいだ…!
俺は、怖がらせるかもしれないのを忘れて、彼女にくちづけした。

【和佐】
「ちゅ…ん」

【智恵】
「ん…あ」

【和佐】
軽いくちづけ…。でも驚いた。
彼女は記憶喪失以前と全く同じキスをしてた。

【和佐】
「キスって…運動記憶なんだな…」

【智恵】
「…あ、かず君っ!びっくりしました…!
いきなりキスするなんて…、は、恥ずかしいです」

【和佐】
「今夜…夫婦で夜やってたことに、チャレンジしてみよっか?
いろいろ思い出すかもしれないし」

【智恵】
「へ…?えっと、その…っ!?
………や、優しくしてください。
…初めてなんです」

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《※夜の営みシーンは演じても演じなくてもOKです》

【和佐】
夜、お互いシャワーを浴びて、ダブルベッドに腰かける。
ちえはすごい緊張してて、まるで処女に戻ったようだ。

【智恵】
「かず君…」

【和佐】
「ちえ…。キスするよ。いい?」

【智恵】
「はい…」

【和佐】
「ん…ちゅ」

【智恵】
「ん…あん」

【和佐】
「…オトナのキスもするよ。いい?」

【智恵】
「はい…ん!…んん」

【和佐】
「ん…ちゅ、ちゅ、れろ…ん」

【和佐】
俺はそのまま、彼女をベッドに押し倒した。

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【和佐】
夜の営みは、始めの内たどたどしかった彼女だったが、途中から記憶喪失なのを忘れるくらい、元の彼女と同じ反応、同じ動きだった。
やはりこれも運動記憶らしい。
俺は全ての問題を忘れて、彼女との行為に没頭し、そして疲れていつの間にか眠りに落ちた。

【智恵】
「…ひっく、っふ…ごめんなさい。
ごめんなさい、出来なくて…っ」

【和佐】
俺はちえの泣き声に気がついて、起きた。

【和佐】
「…ちえ?どうした?なんで泣いてるんだ?」

【智恵】
「…かず君…!ごめん。ごめんなさい。
私は…悪いお嫁さんで、ごめんなさい」

【和佐】
「どうした?何があった?」

【智恵】
「わからない、わからない…けど、申し訳ない気持ちでいっぱい…いっぱいなの…!
せっかくかず君が私に、いっぱい、いっぱい愛を注いでくれたのに…、私には何も残らない…!!
私には何も出来なかった…!!
だから申し訳ないの…!!」

【和佐】
「ちえ…もしかして記憶が?
…出来ないって何が?」

【智恵】
「赤ちゃん…!!
赤ちゃんが出来なかった!!
いっぱいかず君に愛を注いでもらったのに、私の中に赤ちゃん出来なかった!!
それが申し訳ないの…!!」

【和佐】
「…え?」

【智恵】
「私だってかず君の赤ちゃんほしいよ?
でも、なかなか出来なくて…かず君にも、お義母さまにも、申し訳なくて…!」

【和佐】
「え…?
なんで…母さんのことが出てくるんだ?」

【智恵】
「かず君が朝、会社に出社した後、私はよくお義母さまに、『子供はまだ?努力してるの?もしかして、あなた産めないの?』って言われて…苦しくて…」

【和佐】
「え…?!母さんが?
そんなこと言ったって、俺たちまだ一緒に暮らして3年で…。
ああ…、でも母さんは…最後は認知症で何言っても、きつい言い方で会話を返すようになってたから…それでだ」

【智恵】
「お義母さまが亡くなって…悲しかったけど、少し安心したの…。
『ああ、これで、子供のこと言われなくなる』って。
本当、悪いお嫁さんなの。私…。
しばらくして道で助けたおばあさんが、たまたまお義母さまに顔がよく似てて…、忘れようとしてた感情に…耐えれなくなった…」

【和佐】
「そうだったのか…」

【智恵】
「…私、あなたに愛を注いでもらう資格あるのかな?
もしかしたら、他の人がお嫁さんだったら良かったのかなぁ?」

【和佐】
俺はちえを抱きしめ、ベッドに押し倒す。

【和佐】
「…俺が愛を注ぐのはお前だけだ。
子供とか母さんとか、そんなの関係ない。
…ただ愛してる。
ただお前の存在、全てに愛を注ぎたい…。
ただそれだけの男…本当、それだけのヤツなんだ…」

【智恵】
「かず君…」

【和佐】
「苦しんでるのに…気付けなくてごめん」

【智恵】
「かず君…っ!」

【和佐】
「…記憶戻ってよかった…。
とりあえず今日はもう遅いから寝よう?」

【智恵】
「うん…」

【和佐】
「おやすみ」

【智恵】
「…ねぇ、かず君。手、繋いで」

【和佐】
「ちえ…。いいよ。
安心出来るように、ずっと手握ってるから」

【智恵】
「おやすみ、大好きだよ」

【和佐】
「おやすみ…良い夢を。ちゅ(キス)」

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《※以下は演じても演じなくてもOKです》

【和佐】
…その記憶喪失から半年後、すっかり回復して、元の明るさを取り戻したちえ。
ある日ちえは、プレゼントだと言って、リボンの包みをくれた。

【智恵】
「開けてみて♡」

【和佐】
「ん〜?なんだ〜?…って棒?
あ、棒じゃなくてこれは…妊娠検査キット?
…まさか?!」

【智恵】
「陽性反応です。妊娠しました♡」

【和佐】
「ち、ちえ〜!」

【智恵】
「これからもよろしくね。最愛の旦那さま♡」


end

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