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これまでも、これからも。ラジオはいつも私の相棒/小沢あや【連載エッセイ「わたしとラジオと」】

インスタグラマーや作家、漫画家などどさまざまなジャンルで活躍するクリエイターにラジオとの出会いや、印象的なエピソードをしたためてもらうこの企画。今回はコンテンツプランナーの小沢あやさんです。


小学生の頃、相棒はラジオだった。

本当は『進ぬ!電波少年』や『笑う犬』など観たい番組がたくさんあったけれど、実家にはリビングにしかテレビがない。過干渉な母親と顔を合わせなければならないし、夜遅くまで起きていると怒られてしまう。はっきり言って、最初は消極的選択でしかなかった。しかしそのラジオに、だんだんと引き込まれていくことになる。

まだスマホもない1990年代の終わり。タイムフリーもなければ、倍速再生もできない。radikoや各種サブスクで好きなときに好きな番組・音楽を聴ける今の10代が羨ましく感じられることも多々あるが、不便なのもそれはそれで味があった。音楽のランキングを扱う番組も多かったし、自分では選ばなかったような多様な楽曲に触れることも出来たのだ。

なんとなく「おしゃべりを聴きたいときはAM、音楽を聴きたいときはFM」くらいの塩梅で周波数を合わせる。中学受験の対策テキストを申し訳程度に眺めながら、ラジオから流れてくる音をぼんやりと受け入れていたが、L’Arc~en~CielやJUDY AND MARYが出演したり、好きな曲がラジオで流れた瞬間は別だ。

あの頃のL’Arc~en~Cielは、シングル3枚・アルバム2枚同時発売など、信じられないくらいのハイペースで楽曲をリリースをしていた。小学生のお小遣いでは全タイトル買えるわけがなかったから、新曲がオンエアされた際にはラジカセのボタンをクイズさながらに早押し、テープに録音するしかない。曲のイントロにはDJの曲紹介コメントがかぶってしまうし、フル尺で聴けることもなかなかなかったけれど、1曲1曲を大切に何度も再生したあの楽曲たちは、今もカラオケで画面を見なくても空で歌うことができる。

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ラジオを聴くとき、愛用されているスマートスピーカー
親元を離れてひとり暮らしを始めた後は、夜も自由に出かけられるようになったし、余暇の選択肢も楽しみも増えて、ラジオと距離が出来てしまったけれど。小学生から高校生の頃にラジオを通して触れたたくさんの音が糧になっていたのかどうかはわからないが、大学卒業後、私は音楽業界に就職した。

「ラジオの裏側」を知ったのは、入社5年目のこと。辞令により、営業からプロモーターになったのだ。ざっくり説明すると、アーティストや楽曲を売り込んで、ゲストとして呼んでもらったり、曲をかけてもらえるよう仕向ける業務。自社アーティストが持つレギュラー番組の生放送現場にも毎週立ち会い、そのうちなぜか自分も番組でトークをするようになっていた。

ラジオの現場では、スタッフさんが事前に、その日のゲストについて丁寧に調べてくれる。一応、台本も渡されるが、おおまかなトピックとタイムスケジュールのほか「◯◯さん:(受けてコメント)」「◯◯にちなんでフリートーク」のように、ざっくりした内容だけ◯◯が記載されている箇所もある。リスナーが思っている以上に、ラジオのトークはナマモノなのだ。

観客のリアクションを見ながら進められるイベントとは違い、トークにリアルタイムで反応出来るのはその場にいる人たちだけ。ブースでおしゃべりをしているうちは、ウケているかどうかもわからない。会話をしっかりリードしてくれるパーソナリティがいるタイプの番組でも、出演者は緊張する。

そんなときに支えてくれるのは、トーク中、ブースの外でニコニコ笑うスタッフさんなのだ。大きく頷いたり、ワイプ芸さながらのリアクションで、言葉はなくともガラスの向こう側から、表情だけで出演者を安心させてくれる。

それぞれの信頼関係から生まれる番組のあたたかい空気は、リスナー側にも伝わる。ラジオの安心感は、出演者や音楽だけでなく、スタッフさんの愛が合わさって出来たものだったのだ。

会社を辞めて独立した今も、私の朝はラジオから始まる。ブースの内と外のあの笑顔に思いを馳せながら、今日も仕事を進めるのだ。


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小沢あや/コンテンツプランナー・編集者。「つんく♂の超プロデューサー視点!」編集長。音楽レー♂ベルでのCD営業・宣伝、ニュースアプリ運営会社での勤務を経て、2014年に独立。タレント・経営者インタビューを中心に、エッセイも寄稿。現在はEngadget日本版「ワーママのガジェット育児日記」、FREENANCEMAG「フリーランスな私たち」、アイスム「きのう何作った?」連載中。


llustration:stomachache Edit:ツドイ
(こちらはTBSラジオ「オトビヨリ」にて2021年7月20日に公開した記事です)