愛すべき内輪感/イトウハルヒ【連載エッセイ「わたしとラジオと」】
インフルエンサーや作家、漫画家などさまざまなジャンルで活躍するクリエイターに、ラジオの思い出や印象的なエピソードをしたためてもらうこの企画。今回は、モデル・俳優として活躍するイトウハルヒさん。無類のTBSラジオ好きであるイトウさんに、その愛の遍歴を語ってもらいます。
愛すべき内輪感
私とTBSラジオの付き合いは長い。
母が好きで、幼い時からTBSラジオがよく流れる家だった。居間には、現在も壁一面に『大沢悠里のゆうゆうワイド』の「お色気大賞」のカセットテープが並んでいる。
ラジオが娯楽の1つから生活必需品に格上げされたのが、2011年。地上アナログテレビ放送終了の年。
母が「テレビを買い換えない」宣言をし、イトウ家は大混乱となった。子どもらの反対の意は汲まれず、宣言は施行。ブラウン管の代わりにラジオが台頭し、毎日のニュースや地震速報、年末の歌合戦までを伝えてくれる唯一の物になったのである。
家族での休日のお出かけにもラジオが一緒だった。カーステレオから流れる『宮川賢のパカパカ行進曲!!』を聴き、弟と「ナニがどうしてどうなった!?」と番組内の決まり文句の真似をして遊んでいたことを覚えている。ただ、小学校の教室での「昨日のテレビ談義」についていけず、次第に聴くことをやめてしまった。
第二次ラジオブームは高校生のとき。携帯・雑誌・テレビ禁止の女子寮に暮らしていた私に、唯一持ち込みを許されたのがiPod(なぜか音楽は教養として許可された)だった。当時、私がどハマりしたのが、iPodで聴けるPodcast。過去の「JUNK」のコーナーや昼番組の一部を配信で聴くことができた。中でもお気に入りだったのが、『爆笑問題カーボーイ』の「人妻枠」。人妻からのお便りを読むこのコーナーでは、ボケを混えながらお便りを読み上げる太田さんに田中さんのツッコミが冴え渡る。メールに綴られた赤裸々すぎる下ネタとヒートアップする2人の応酬が面白く、私は馬鹿みたいに聴き狂った。当時の寮にネット環境はなく、更新日には近くのコンビニへ行って、フリーWi-Fiで番組をダウンロードした。室員がすべて寝静まった深夜が私の楽しみの時間。ベッドの中でイヤホンをつけ、Podcastを聴いては笑いを堪えていた。
その後、FM各局や他局の深夜放送にも手を出したが、いつのまにかTBSに戻ってきている。どうしてこんなにTBSラジオに惹かれるのだろう。もちろん小さい頃から聴いていた耳馴染みの良さもあるのだろうが、やはり、局内の番組同士のつながり感、“内輪感”が大好きなのだ。例えば、渡された「お年玉」の額を巡って神田伯山とナイツが毎週言い合いをしていたり、ジェーン・スーさんの新刊を赤江珠緒さんが独特の表現で評し、スーさん本人から「意味わからない」とツッコミを受けていたり。番組同士での絡みが多いから、「両方の番組を聞いて、言い合いの言質とってやろう」とか「スーさんがツッコんでる赤江さんってどんな人なんだろう」と芋づる式にいろんな番組に興味が持てるのだ。
局内のつながりに感じるのは、飲み会の本編ではなく二次会のような緩さなのかもしれない。この場で交わされる話に参加しても良し、隅で聞いているだけでも良し、帰りたければ帰っても良し。旧知の友達との飲み会のような安心感と居心地の良さがある。こう書くと門戸を閉ざしたコミュニティのように聞こえるが、そんなことはない。ラジオはいつでも開いている。いつから聴き始めても、受け入れてくれる場所だ。
スマホアプリradikoにてTBSラジオを嗜む日々
今もラジオは私の生活のお供になっている。朝洗濯を干しながら、夜歩いて帰りながら、寝る前に日記を書きながら、いつもの声が聴きたくなる。そんな時にはradikoを立ち上げて、聴き馴染みのある声に体を委ねるのだ。最近の楽しみは『安住紳一郎の日曜天国』。安住さんの人事についてぽろっとこぼれる話が面白い。
さて、今日もラジオとともに1日を送ろうと思う。
イトウハルヒ/1月11日生。栃木県出身。モデル、俳優。映画、CM、MVなどで活動する傍ら、エッセイの連載をもつなど活動の幅を広げている。TBSラジオが好き。
llustration:stomachache Edit:ツドイ
(こちらはTBSラジオ「オトビヨリ」にて2021年7月19日に公開した記事です)