いつか訪れる「死」を受け入れる準備をしている
昨年の2024年11月にスターツ出版さんから『死神先生』という作品が刊行されました。
いろいろなことを考えて悩んで、そうしてやっと一冊になったのでnoteを書きたいなとずっと思っていたのですが、やっと向き合う時間がとれました。
さて、『死神先生』ですがあらすじは以下の通りです。
生と死の狭間にある「狭間の教室」で、意識不明となった十代たちがどう生きていくのかを選択していく話です。
そう、どう「生きて」いくのかというお話。
死に限りなく近い場所が舞台ですが、これは「生きる」をテーマにしたお話です。
前の記事でも書きましたが、わたしは2020年にスターツ出版さんから『未だ青い僕たちは』という作品でデビューをしました。それから四年間、スターツ出版さんからはたくさんの作品を刊行させてもらっています。
その中で、それぞれの出版社やレーベルの持つ「らしさ」というものの大切さを知り、わたしなりにそれを大切にしてきました。
それでも今回の『死神先生』は、レーベルとしても大きな挑戦をさせてくれた作品だと思っています。
連作短編という構成、恋愛がメインというわけでもない、とても難しい作品だったと思います。
担当編集さんは本当にいろいろなことを考えてくださって、どうしたら読者さんに届くか、どんな風に見せたら手に取ってもらえるか、たくさん悩ませてしまったと思います。
それでも、わたしが書きたいテーマを大切に、尊重してくれたことが本当に心強くてありがたかったです。
そんな『死神先生』ですが、これまで書いてきたどの作品よりも、書くのがつらかった。
書いていてつらくて、苦しくて、心細くて不安で、怖くてたまらなくなりました。
「生きる」と「死ぬ」は背中合わせにあると思っているから。「生きる」を書くには、常に「死」を意識しているから。
わたしは、「死」が怖いです。
自分が死んでしまうのも怖いし、大好きな人たちが死んでしまうのも怖い。
だけどいつか、生きていれば必ずみんな死んでしまうでしょ?
だから受け入れなきゃいけない、受け止めなきゃいけないことだって分かってはいるんです。
十代の頃は、「死」というものは自分とはとても遠いことのように感じていました。「死」が関わる映画や小説やドラマを見て号泣することはあっても、いつまでもその喪失感を引きずることはなかった。
だけど大人になるにつれて、だんだんと「死」がリアルになっていくようになりました。
人は老いる。変化する。そしていつかは必ず死ぬ。
永遠の命は、どれだけお金をつんだって、どれだけ権力をもっていたって、手に入れることはできない。
その事実がぐっと胸にせまったときに気付きました。
わたしは、「死」が怖い。
真正面から向き合う覚悟がない。
だから、わたしは小説でも「死に向かっていく話」を書くことが出来ないんです。
そんな中で一昨年、わたしにとってとてもショックな出来事がありました。
そのときに、思ったんです。
世の中には本当につらいことも苦しいことも、個人の力じゃどうしようもないこともある。
それでも、どう生きるかは自分自身で決めることができる。
抗えない運命の中でも、選ぶのはいつだって自分だ、って。
死んでしまうこと、病気になること、事故に遭ってしまうこと。ほかにもたくさん。
やるせないことってたくさんあって、どうもがいても苦しんでも、解決できないこともたくさんあって。
避けられない別れも、どうしても存在して。
自分が当事者になることもあれば、大切な人がそうなってしまうこともある。
それでも、それでもやっぱり、「どう生きるかは自分で決める」ことができたなら、「どう生きるかはあの子が決めた」って思えたなら、少しは救われるんじゃないかなって。
当事者となっても、すぐそばで見守る人となっても。
わたしならば、そうだなって。
そのときに気付きました。
わたしはこの作品を書きながら、いつか訪れる『死』というものを受け入れる準備をしているのかもしれない、と。
『死』は怖いけれど、ただの恐怖だけではないのではないか。
悲しくて苦しいだけではなくて、それはどこかで救いであったり
何かへの始まりだったりするのではないか。
そうであってほしい。
そんな風に、わたしと同じように感じている人たちにも思ってもらいたい。
そんなことを願いながら、少しでも光になったらと祈りながら、このお話を書きました。
まだまだわたしは、『死』が怖いです。
怖くなくなる日なんて、来ないのかもしれない。
準備なんて、永遠にできないのかもしれない。
それでも時間は止まってはくれないし、老いや病気は事故は消えてくれない。
だからわたしは、悪あがきするように、これからも『生きる』ことをテーマにした物語を書いていくのだと思います。
それでもやっぱり、すごくエネルギーを使うので。
たまには爽やかで甘酸っぱいような青春ものを書いたり、ほっとできるようなマヌルさんみたいなお話を書いたり、いろんな年代の人たちが楽しめるような物語を紡いだり、切ないけれど誰かを愛おしく想う主人公を書いたり、いろんなお話を書いていくのだと思いますが。
それでもきっと、わたしの中で『生きる』というテーマはずっと向き合っていくべき、大事にしたいものになっていくのだと思います。
ちょっと長く、熱く語ってしまいましたが。
『死神先生』には、いろいろな悩みや想いを持った子たちがいます。
きっと彼らは、あなたであったり、あなたのすぐそばにいる誰かであったりするのだと思います。
漠然とした不安や恐怖を感じたときには、そんな彼らが、死神先生が、あなたの心に寄り添ってくれるかもしれません。
そうであってくれればいいなと、心から願っています。