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 『人魚の器官/漂う海馬』

〜これまでの創作と上演〜


 岡山の演劇人たちと県外のアーティストが共に「耕し、磨き」ながら創作を積み重ねるCultivation program 2022-24の一環として、脚本家の河合穂高さんと創作を始めた『人魚の器官』と続編の『漂う海馬』。
複数年をかけ、一過性にならない、岡山県外にも発信できる強度のある作品を作ることを目標として取り組んできました。
作品の舞台は、気候変動など人為的な理由で、オーストラリアや南極周辺に、人間が住むことができない地域「新世界」が出現した未来。老化を「病」として治療できるようになった社会で、ある夫婦の姿を通して「人間の境界線」はどこなのか、私たちはどこまで許容できるのかを問うSFミステリーです。
会場の蔭凉寺の空間ともコラボレーションしながら、身体を通じて、まだ見ぬ未来の世界を立ち上げることに挑戦しています。

2023年度は『漂う海馬』が、兵庫県たつの市で開催されたTatsuno Art 2023に招聘。
『人魚の器官』と『漂う海馬』が、そのテーマや世界観を評価され、第29回劇作家協会新人戯曲賞最終候補作となりました。
今年度は、完結を前に創作途上にあるこの2本の戯曲をリーディングという形式の身体表現で、一続きの作品として上演します。


『人魚の器官』撮影:yukiwo

【『人魚の器官』 あらすじ】

 気候変動など、人為的な理由で、オーストラリアや南極周辺に、人間が住むことができない地域「新世界」が出現した未来。
ある「治療」についてのシンポジウムが蔭凉寺で行われようとしている。
人工の細胞小器官「モトドリガネア」を DNA に組み込むことで代謝を上げ、老化を防ぐ、異次元の治療法の治験に、夫婦で参加したという男性が語り始める。
モトドリガネアを接種後、妻のタシは海洋学者として新世界での調査に赴き、転覆事故に遭う。
既存の生態系とは全く異なる新世界を目の当たりにし、そこには「人間の居場所はない」ことを悟る。帰国後、タシの身体は、様々な動物の継ぎはぎのような姿から、蛹へと変形していった。
夫は、蛹が羽化し、中からタシが出てくる夢を見る。しかし、タシの身体は未知の物質に置き換わっており、夫のことも分からないのだった…


『漂う海馬』撮影:yukiwo

【『漂う海馬』あらすじ》】

 かつての新世界研究の同僚の誘いで、ある介護施設にやってきた夫とタシ。外見は元に戻ったタシだが、身体の中は空洞で水しか入っていないという。反応もなく、人間とは別の生き物になってしまったかのようだ。
施設では、新世界の粘菌と人間の記憶が結合してできた思考型粘菌を商品化した「粘菌男」が介護者として働かされていた。タシは粘菌男を調査していたことがあり、接触することで一瞬記憶を呼び起こされる。
癌で余命の短い同僚は、新世界での転覆事故に遭った者たちの間で、不可解な記憶のやり取りが起こっていたと夫に伝える。
新世界のもの同士が出会った時に何かが起きるのではないか。タシと粘菌男を会わせることが、タシを元に戻すことにつながるのではないかと…


【上演記録】

岡山市芸術祭「芸術文化振興事業」
Cultivation program 2022
『人魚の器官』

2023年1月28・29日
会場:蔭凉寺(岡山市北区中央町10-28)

脚本:河合穂高 
演出:伊藤圭祐(天神幕劇)

出演:三村真澄 長谷川千花 米谷よう子 峰山博志

創作指導:巣山賢太郎(tarinainanika主宰 コーポリアルマイム舞台芸術学校代表)

オブジェ : 河合桂
チラシ作成:西園加
照明:佐藤主尚
音響:福本佑典
記録写真:yukiwo
記録撮影 : 今倉正晴
当日受付:田中智子
制作協力:大森孝介

企画:米谷よう子
主催:OTO
共催:岡山市/岡山市芸術祭実行委員会/公益財団法人岡山文化芸術創造

『人魚の器官』 撮影: yukiwo


Cultivation program 2023
『漂う海馬』
2023年9月1〜3日
会場:蔭凉寺(岡山市北区中央町10-28)

脚本:河合穂高 
演出・出演:小菅紘史(第七劇場)

出演:三村真澄 増山知佐 小野樹(岡山大学演劇部/天神幕劇)  米谷よう子

照明:林由衣
音響: 佐藤主尚
当日運営:田中智子
チラシ作成:西園加
記録写真:yukiwo

企画:米谷よう子
主催:OTO

『漂う海馬』撮影:yukiwo


Tatsuno Art 2023
『漂う海馬』

2023年11月11・12日
会場:ゐの劇場
(兵庫県たつの市龍野町上川原82)

脚本:河合穂高 
演出・出演:小菅紘史

出演:仲谷智邦 増山知佐 小野樹(岡山大学演劇部/天神幕劇)  米谷よう子

照明:佐藤主尚
音響:福本佑典
演出助手:和田航輔
チラシ作成:西園加

主催:たつのアート実行委員会(代表:加須屋明子)

『漂う海馬』(たつの市)撮影:宰井琢騰
リーディング&トーク『人魚の器官』(たつの市)
撮影:宰井琢騰


【プロフィール】

脚本:河合穂高
1987 年生まれ。兵庫県神戸市出身。劇作家。
岡山大学 学術研究院 医歯薬学域研究准教授。
現役の口腔癌研究者で、研究から得られた知見や最新の科学的情報を作品に取り入れながら、劇作を行なっている。 2022 年 第 8 回せんだい短編戯曲賞 大賞。 2023 年 岡山芸術文化賞準グランプリ。

『人魚の器官』演出:伊藤圭祐

1996年島根県松江市生まれ。
岡山大学演劇部在籍中の2017年にイトケンピチャレンジを設立。身体性に富んだ作品を創作している。2021年より天神幕劇に演出として参加。
インプロバイザーとしても各地で活動し、岡山を中心に教育関係者や学生を対象としたワークショップを開催している。2017年 第2回全国学生演劇祭に出場。

『漂う海馬』演出:小菅紘史
1981年生まれ、東京都多摩市出身。
2000年より、桜美林大学演劇コースにて演劇活動をはじめる。平田オリザ(青年団)、宮城聡(ク・ナウカ)、坂口芳貞(文学座)、安田雅弘(山の手事情社)、加納幸和(花組芝居)らのもとで学ぶ。2008年より第七劇場に所属。2014年より三重県津市の里山に活動拠点を移し、国内外で活動する。一人芝居の活動も行っており、各地域で上演を重ねている。名古屋芸術大学非常勤講師。

リーディングパフォーマンス『人魚の器官/漂う海馬』演出:桐子カヲル
コキカル 主宰・演劇作家・俳優・演出。
香川県出身。大阪外国語大学在学中に演劇を始める。大阪を中心に多くの舞台に出演する。 2010 年にコキカルを設立。瀬戸内国際芸術祭 2016 指輪ホテル「讃岐の晩餐会」に出演し、香川県での活動を開始。
コキカルでは、身体表現と音楽と言葉を用いて戯曲のない演劇づくりを行っている。また、音楽家とコラボしたリーディング音楽会などの創作・出演活動のほか、戯曲の音読会をはじめ、演劇を活用した市民向けワークショップのファシリテーターとしての活動も行っている。香川県在住。高松ワークショップ Lab.メンバー/大阪大学ワークショップデザイナー育成講座 15 期修了/2017年度 芸術士®

OTO代表:米谷よう子
岡山市出身。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。在学中に演劇を始める。劇団山の手事情社にて一年間研修。第七劇場に入団(2011〜16年)、日本各地や海外での公演に出演。
東京都在住で岡山との二拠点で活動している。

OTO (Open Theater Okayama)
米谷よう子が、2014年設立。舞台芸術を通じて多様な価値観と出会い、コミュニケーションが生まれる場を岡山市を中心に企画制作している。

【予約フォーム】

『人魚の器官/漂う海馬』は日本劇作家協会『優秀新人戯曲集2024』に収録されています。ぜひご覧ください。


カバー写真:『人魚の器官』撮影:yukiwo


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