人生で1番ラッキーだった日
これは私が小学生の時の話である。
当時、私はマンションの4階に住んでいた。
マンションの4階というのは、実に絶妙な高さであって、エレベーターを使わずとも上り下りはできるものの、階段だと地味にしんどい。
そのため、私は基本的にいつもエレベーターを使っていた。
しかし、ある日の朝、なぜかその日は気分的に階段を使いたくなり、私は階段で下りた。
すると、階段の途中でチケットのようなものを見つけた。
拾ってみると、今は無き「多摩テック」のペアチケットではないか。
私は大喜びでランドセルにチケットを大事にしまい、ウキウキ気分で学校に向かった。
マンションで拾った落とし物は管理事務所に届けろよ、みたいな無粋なことはお願いなので言わないでくださいね。
小学校低学年の時だったので時効として見逃してください。
目の前の遊園地の誘惑に勝てませんでした。
学校が終わり、家に帰ると真っ先に父にチケットを見せた。
「ねぇ見て!!今日学校行く時に階段使って降りたらね、多摩テックのチケット拾ったんだよ!!無料で遊園地行けるよ!!一緒に行こうね!!」
父は私に甘々だったので、拾ったものを届けなかったことを咎めることはせず、一緒に驚き喜んでくれた。
次の休日、私と父は2人で多摩テックに遊びに行った。
チケットは、無料入園ができるだけでなく、乗り物も乗り放題という至れり尽くせりのもので、朝から晩までたっぷりと満喫した。
そして、なんとチケットにはもう1つ特典があった。
それは、園内で開催されている特別抽選会に参加できるというものだ。
閉園時間が迫り、たくさん遊んで大満足の我々は、最後に抽選会に向かった。
何が当たる抽選会なのか、私はまったく把握せず、とりあえずガラポンを回した。
すると、コロンと飛び出してきた球の色は赤。
大当たりだ。
景品は、特賞の折りたたみ自転車。
当たりを引き当てた私、隣にいた父、よりも誰よりも抽選会の担当者が驚いていたのを鮮明に覚えている。
そう、つまり私は、無料で遊園地に行く権利を偶然獲得しただけでなく、お土産に折り畳み自転車まで持ち帰ったスーパーラッキーガールだったのだ。
その事実が嬉しかったのは言わずもがなだが、そんな幸運を持つ私を父が誇らしく、自慢げにしてくれたことがより嬉しさを引き立てた。
「今宝くじ買ったら当たるかな!?」なんてことを言っていたなぁ。
実際に買いに行ったかどうかは忘れてしまったが。
私の父はもう亡くなってしまったので、先日の父の日は私にとってただの普段と変わらぬ1日だったのだが、ふと、父との思い出が頭に浮かんだので書いてみた。
何で見た話かは忘れてしまったが、故人のことを思い出すたびに、あの世にいる故人の周りで花が咲くらしい。
遅ればせながら父の日ギフトということで。