私の考える企業戦略#13:新日鉄住金ソリューションズ

1. 企業
 新日鉄住金ソリューションズ(https://www.nssol.nssmc.com/corporate/overview.html)

2. 結論
 ⑴ 新日鐵住金グループ内のシステム業務代行とその他事業を切り分けてそれぞれ独立化(会社分割)
 ⑵ 新日鐵住金にて自社競合他社を買収し、自社と統合する。(M&A)

3. 現状サマリー(*1)
 ⑴ 市場
  ① IT市場規模
   ・ 17年度における国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、前年度比2.0%増の12.1兆円。
     政府官公庁、地方自治体はそれぞれ0.88兆円、0.70兆円の規模感。
   ・ 18年度は民間企業で12.3兆円(前年度比+1.5%)、19年度は12.4兆円(同+0.8%)を見込む。
     政府官公庁、地方自治体は19年度でそれぞれ0.89兆円、0.71兆円と、緩やかに成長見込。
   ・ 市場を牽引してきた金融機関を中心とした「大型の基幹システム等の更新・開発案件」が
     16年度にピークアウト。国内民間企業のIT市場規模は拡大基調にあるものの、
     そのスピードは17年度以降、緩やかになる見込。
   ・ 17年度以降は「AI」や「IoT」の分野が投資対象となっており、これらのテーマを中心に
     大手ITベンダーのシステムインテグレーションビジネスは堅調に推移する見込。
   ・ 他にも「セキュリティの強化」や「ワークスタイル変革」、
     「東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けたシステム開発案件」、
     「Windows7のサポート終了(20年1月)によるパソコンのリプレイス」なども成長要素になる。
   ・ 「加工組立製造業」や「金融業」でのIT活用増加が顕著になっていることから、
     インダストリー4.0やフィンテックが影響したものとも考えられる。
  ② デジタルトランスフォーメーション(DX)
   ・ DXは「デジタルソリューションによる変革」を指す。
   ・ 21年までに日本のGDPの約50%をデジタル製品やデジタルサービスが占める見込。
     また、DXは日本のGDPを約11兆円、GDPのCAGRを0.4%増加させる。
   ・ 主な実践企業はAmazon、Uber、Airbnb、Netflixなど。
   ・ 14年はトラディショナル(SIなどのITサービス)が90%だったのに対しデジタルは10%。
     25年にはそれぞれ40%と60%となり、逆転する見込。
  ③ IT人材不足
   ・ 20年には29万人、25年には43万人と不足人数が拡大していく見込
   ・ そのうち、ほとんどがAIやIoTなどの先端IT人材と情報セキュリティ人材
 ⑵ 自社
  ① 1980年設立、新日鐵住金を親会社に持つSI事業者
  ② 事業としては「業務ソリューション事業」「サービスソリューション事業」を事業の柱とし、
    コンサルティングからソリューションの設計、開発、運用・保守までの一貫したサポートを提供。
  ③ 売上業績としては以下の推移。
   ・ 16年3月期 2187億円(製造36%、流通・サービス23%、金融20%、その他21%)
    - 内、新日鐵住金向け売上高は469億円(全体の21%)
   ・ 17年3月期 2325億円(製造36%、流通・サービス21%、金融20%、その他23%)
    - 内、新日鐵住金向け売上高は475億円(全体の20%)
   ・ 18年3月期 2442億円(製造34%、流通・サービス22%、金融18%、その他25%)
    - 内、新日鐵住金向け売上高は457億円(全体の19%)
  ④ 期首受注残はここ5年で増加推移にあり、直近は17年970億円→18年1174億円と推移。
    営業利益率は14年6.9%→16年8.8%と大きく改善したものの、
    直近は17年9.3%→18年9.3%と横ばい。
  ⑤ 人員数は拡大方向にあり、14年5052人→18年6232人まで拡大。
  ⑥ サービスビジネスの強化
   ・ Oracleのクラウドサービス提供、SAP製品のアウトソーシングパートナー認定取得。
  ⑦ デジタルイノベーション領域のソリューション強化
   ・ 17年10月に「AI研究開発センター」を設置、AIや機械学習を絡めた提案力を強化。
  ⑧ 直近、旧住友金属工業(新日鐵住金)、アイエス情報システムのシステム業務を担うことに。
    また、新日鐵住金が新たに子会社化した日新製鋼のシステム業務を20年4月より受託予定。  
 ⑶ 競合
  ① 17年の国内ITサービス市場 主要ベンダー サービスセグメント別売上額でみると以下のとおり。
    (プロジェクトベース、テクノロジーアウトソーシング、サポート&トレーニングの順)
   ・ 富士通   5000億円超、5000億円未満、1500億円程度
   ・ NEC    4500億円程度、2000億円超、1700億円程度
   ・ 日立製作所 5000億円程度、1800億円程度、2000億円未満
   ・ NTTデータ 3800億円程度、4000億円程度、700億円程度
   ・ IBM    2000億円超、3400億円程度、1600億円程度
   ・ TIS    1900億円超、700億円程度、100億円未満
   ・ NRI    1200億円程度、900億円程度、100億円未満   
 ⑷ 強み
  ① 新日鐵住金グループの顧客ネットワーク
 ⑸ 弱み
  ① 大手競合と比較すると規模感が小さい
  ② 新日鐵住金の子会社システム統合業務にリソースが割かれ、新規開拓の推進が難しい
 ⑹ 機会
  ① IT投資需要
   ・ セキュリティの強化、ワークスタイル変革、
     東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けたシステム開発案件、
     Windows7のサポート終了(20年1月)によるパソコンのリプレイス、など
   ・ 加工組立製造業、金融業での底堅い需要
  ② 新日鐵住金・子会社(今後含め)間のシステム統合需要
  ③ DXの普及、活発化
  ④ 大手競合が手を付けないような需要・案件
 ⑺ 脅威
  ① 規模感が大きい大手競合の存在(富士通、NEC、日立製作所、NTTデータ、など)
  ② IT人材不足トレンドの継続

4. 問題点
 ⑴ 市場は緩やかに成長見込であり、セキュリティ強化需要など、成長を促す要因も複数想定されるが、
   一方で競合他社と比較すると規模感で劣位にある。
 ⑵ 新日鐵住金の顧客ネットワークを駆使できるという点は強みになりうるが、
   その一方で、現状の体制のままだと、新日鐵住金・子会社間のシステム統合に伴い、
   システム業務を一手に引き受けることになるため、自社リソースを割かれることになる。
   そのため、新規開拓に集中して事業展開することがやや難しくなっている。

5. 課題設定
 ⑴ 新日鐵住金の顧客ネットワークを活かしきる体制づくり
 ⑵ 競争優位に働くような、突き抜けた強みの育成
 ⑶ IT人材不足トレンドのなかでの自社リソースの維持、拡大

6. 方向性(*2)
 ⑴ 新日鐵住金グループ内のシステム業務代行とその他事業を切り分けてそれぞれ独立化(会社分割)
  ① 狙いとしては、資源配分の効率化を促すことにある。
    現状自社内で両事業が一体となっており、かつ新日鐵住金グループ内向け事業が内向きで、
    その他事業は外向きであることから、組織としての方向性・ベクトルが異なってくる。
    現状の体制のままだと、新日鐵住金・子会社間のシステム統合に伴い、
    システム業務を一手に引き受けることになるため、自社リソースを割かれることになる。
    そのため、新規開拓に集中して事業展開していくためにも、
    また方向性・ベクトルを統一化するべく、会社分割にてこれに対応する。
  ② 新日鐵住金が新たに子会社化した日新製鋼のシステム業務を20年4月より受託予定なので、
    19年下期〜20年の時期にこれを実施する。
 ⑵ 新日鐵住金にて自社競合他社を買収し、自社と統合する。(M&A)
  ① 狙いとしては、スピード感を持って自社規模感を高めることにある。
    現状、売上高2442億円の規模感だが、新日鐵住金向けの457億円を除くと2000億円を下回る。
    競合他社は一セグメントで2000億円に匹敵する・大きく上回る規模感であることから、
    規模感で大きくビハインドであることがわかる。
    また、現状の自社リソースだけで市場を攻略するには、IT人材不足トレンドが進んでおり、厳しい状況である。
    一方で、親会社の新日鐵住金は時価総額1.8兆円程度の力を持っており、
    競合他社で最大手の富士通は1.4兆円であることから、この点は自社にしかない強みになりうる。
    以上より、新日鐵住金の時価総額を活用し、グループ全体としてSI事業(自社)の強化を図る。
  ② 買収候補企業(大手競合他社)の時価総額は以下の通り。
   ・ 富士通   1.4兆円
   ・ NEC    0.85兆円
   ・ 日立製作所 2.91兆円
   ・ NTTデータ 1.7兆円
   ・ IBM    10兆円以上
   ・ TIS     0.38兆円
   ・ NRI    1.0兆円 
  ③ 上記のうち、TISが独立系・総合企業であり、買収にあたって時価総額の割安感に加え、
    金融、製造、流通、エネルギー、公共など幅広い業界での実績もあることから、
    自社事業とのシナジーも期待できると思われる。
    そのため、TISを買収第一候補とみなし、グループ全体で該社買収を進めていく。

ーーー参考資料ーーー
*1:
・マイナビ『2017年国内企業のIT市場規模12兆1,170億円』17/11/29
 https://news.mynavi.jp/article/20171129-549488/
・Work x IT『デジタルトランスフォーメーションとは? 〜その定義と事例〜』18/5/16
 https://workit.vaio.com/i-digital-transformation/
・ZDNet Japan『NTTデータ次期社長が語る「経営の舵取りとSIの今後」』18/5/17
 https://japan.zdnet.com/article/35119299/2/
・NTTデータ『2017 NTTデータ 事業説明会(公共・社会基盤分野)』17/12/4
 http://www.nttdata.com/jp/ja/corporate/ir/library/tool/presentation/pdf/2018/info1712j_01.pdf
・日経XTECH『40万人が不足し40万人が余る、技術者を襲う恐るべき雇用のミスマッチ』18/6/25
 https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00148/062100019/
・新日鉄住金ソリューションズ『会社概要』
 https://www.nssol.nssmc.com/corporate/overview.html
・同上『2018年3月期 決算説明会』18/4/26
 https://www.nssol.nssmc.com/ir/report/pdf/2018_03_final_presentation_J.pdf
・同上『2018年3月期 決算短信』18/4/26
 https://www.nssol.nssmc.com/ir/report/pdf/2018_03_final_kessantanshin_J.pdf
・IDC『国内ITサービス市場ベンダー 売上ランキングを発表』18/8/1
 https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20180801Apr.html

*2:
・新日鐵住金 時価総額
 http://ux.nu/FIx6m
・富士通 時価総額
 http://ux.nu/maxEB
・NEC 時価総額
 http://ux.nu/tdGYh
・日立製作所 時価総額
 http://ux.nu/x4qhw
・NTTデータ 時価総額
 http://ux.nu/r31Td
・IBM 時価総額
 http://ux.nu/qUS42
・TIS 時価総額
 http://ux.nu/cGtqs
・NRI 時価総額
 http://ux.nu/x7bII
・TIS『事業紹介』
 https://www.tis.co.jp/company/services/
・同上『TIS株式会社 会社説明会』18/09
 https://www.tis.co.jp/documents/jp/ir/individual/briefing/180909_1.pdf

以上