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ワクチン開発進捗/新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

新型コロナウイルス予防の観点で必要なワクチンの開発進捗について、日本経済新聞の記事を参照し以下にまとめる。

前提として押さえておかないといけないことがある。それは、そもそもワクチン接種が可能になるまで、通常は治験などのために10年近くかかる、ということだ。さすがに10年も待てる状況ではないので、各国・企業は特別対応にてこれの開発を進めている。

米国

米国においては、21年1月までに米国の全人口に相当する数億本の供給体制の構築を目指して動いている。ワクチンの治験・有効性の検証が、従来と比較して不十分だったとしても、開発Goの判断基準を緩めることで、資金集め〜開発〜生産と進めていく。なお、米国では厚生省の生物医学先端研究開発局(BARDA)が企業の設備投資資金にカネを出して製薬メーカーの開発を後押しする仕組みがあるが、今回については政府も資金を肩代わりすることになるだろう。

感染病向けワクチンの開発・生産で世界最大手の米J&Jは3月末時点で早速「21年初めにもワクチン提供を行う」と発表している。なお、実用化したワクチンは非営利事業として低価格で供給する方針で、生産能力は早期に年間10億本まで引き上げることが可能とみている。なお、BARDAと連携し、ワクチン開発に10億ドルを共同出資することも発表済である。

米製薬大手のファイザーは、ドイツのバイオ医薬スタートアップであるバイオファーマシューティカル・ニュー・テクノロジーズ(ビオンテック)と共同開発を進めている。臨床試験はドイツで4月に先行して開始しており、5月より米国でも開始する旨アナウンスされた。早ければ年内に数百万~数千万本を生産できる見通し。21年には億本単位での供給見通しを立てている。

欧州

英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は新型コロナウイルスのワクチンの大量生産が21年後半になるとの見通しを発表した。GSKはワクチン世界大手だが、仏サノフィなど7社・機関と共同で開発を進めており、治療薬などの開発のため米ウィルバイオテクノロジー社に2億5千万ドルを出資している。競合関係を協同関係に変えて、国を越えた取組が進められてる。

英製薬大手アストラゼネカは、英オックスフォード大学と本件に関連して開発提携する旨アナウンスされた。オックスフォード大はすでに18~55歳を対象に治験を始めており、5月中にデータが揃う見通し。効果を見極めた上で6月までにより広範な治験に移る。アストラゼネカはワクチンの製造・供給を担い、早ければ年内に1億回分を生産し世界に供給することを目指す。また、英政府はワクチン製造を後押ししており、オックスフォード大に2000万ポンド(約27億円)の助成金を出すと表明。治験の迅速化のために、規制の見直しも柔軟に行い、本件に関する治験は申請から1週間程度で認可する方針。

懸念点

やはり開発期間を短縮化しているため、副作用を含めたワクチンの安全性については懸念点として払拭できない。安全性を確保するためには、高度なシミュレーションが必要になってくるが、なにせ人の身体に直接影響を及ぼすものであるため、机上のシミュレーションだけでは限界があるだろう。

治療薬の開発も併行して必要

あくまでもワクチンは予防のために必要なものであるため、いざ罹ってしまったときの治療薬(現時点ではむしろこちらの方がスピードが求められている)が無いことには、この新型コロナウイルスと共生していくことは困難である。加えて、上記の通り懸念点もあるため、ワクチン開発を早めることは大切だが、それよりも治療薬開発の方が肝要であるように思われる。引き続き、各国・各社の活動に期待しつつ、私たち一般人は衛生面を高めることに努めていきたい。


参照記事:日本経済新聞 各記事