本屋ダンジョン(と称して本屋を歩く) in八重洲ブックセンター
本屋ダンジョンとは?
これです。
実際には宝箱を設置したり出会った瞬間にバトルをしたりはしなかったので、ただ本屋を見て回っただけなのですが。
今回行った八重洲ブックセンターは8階建ての書店で、各フロアがジャンルごとに区分けされています。
普段は自分の興味があるジャンルのフロアにしか行かないので、知らないエリアも探索するという意味で「本屋ダンジョン」を回りたいなと思い、やりました。
ルール
・予算:3000円
・制限時間:40分
(バトルなし・宝箱なし)
予算と制限時間を決めるだけで、かなりゲーム感が高まりました。この時間までにこのフロアを見て、という目標を立てて回るのが楽しかったです。これは普段、時間があるだけ本屋を見る習慣のある人こそ楽しい企画かもしれません。
また八重洲ブックセンターは3月31日に閉店します。2028年に同じ場所で再開するとのことですが、5年もある...........なんてこった...........。
この建物の姿を目に留めておきたいという意味でも、この書店を選びました。
開始
【8階】コミック・ライトノベル・フェア
最上階から順番に下がっていくルートで進みます。
8階は漫画・ライトノベルが半数を占めている。さすがに40分で見ている時間はないので、素通りした。
閉店前のフェアで、さまざまな人の選書を紹介するコーナーがあった。こんなの見てたら一瞬で終わるよ。選書の文章も読みたいし.......どうすれば.........。完全に罠だった。
とりあえずざっと見て気になった本は以下。
・中世の写本ができるまで/4500円
こういう本はだいたい装幀も凝っているので、欲しいが高い。無理でした。
・黄色い本/990円
選書の文章にあった「サーガもの」に関する話が気になった。海外文学のシリーズ「チボー家の人々」を扱った作品らしく、どちらも読んだことはないが気になる。
"サーガ"という仕組みのことが好きなので、選書の文章がなければ手にとる機会がなかったかもしれない。
・『その他の外国文学』の翻訳者/2090円
選書フェアで白水社が選書していた。私は白水社が好きです。
「その他外国文学」と括られる、あまり翻訳されていない言語の翻訳家へのインタビュー集。見かけた時から気になっていた。
その他気になる選者の著書もあったが、特に哲学系の本は高いので断念。
閉店に伴う在庫処分で、かなり古い本も含めて雑多に置かれたコーナーがあった。気になるが、ジャンルがばらばらに並んでいるので、古本屋と同じくらい時間と体力が必要な棚だったため、ざっと見て下の階へ。
【7階】心理/専門医学・看護/福祉・介護/教育/語学/辞書・事典
TOEICの参考書などが立ち並んでいる。8階で「その他の海外文学の翻訳者」を見たので、語学関連の興味に惹かれて、語学に関するエッセイの棚に向かった。
・語学の天才まで一億光年/1700円
あのムベンベでおなじみの(?)高野秀行さんのエッセイ。独自の学習法で25言語を学んだという話が気になる。絶対に面白いから。
「その他外国文学~」と合わせて読みたいが、値段が超えるため組み合わせるのは難しい。きっといずれ買うということで、今回は保留に。
【6階】児童書/学習参考書/生活実用書(育児・出産)/健康/料理/家事/スポーツ・アウトドア/地図
児童書の階。青い鳥文庫の棚を眺めて「若おかみは小学生!はいったいどれだけ並んでいるのか」「黒魔女さんが通る!!は何巻まで出ているのか」「はやみねかおるの新刊はあるか」を確認するだけした。児童書のコーナーに行くと絶対にやってしまう。
端の方の棚で洋書・洋地図バーゲンをやっていた。洋地図なんてなかなか自分から見ることはないので、探してみたら面白そうだ。ただこの時間内に内容を確認することができない。
ここまでで前半終了。ちょうど半分の階を回ったことになる。実際には8階に7割くらいの時間を割いている。フェアは完全に罠。
【5階】日本文学/外国文学/文学評論/文庫/ノベルズ/文学全集/オーディオ・ブック
文学の階。この階は見すぎると終わるし、いつもの自分の足取りと同じになってしまうので、全体的に回って眺めた。
壁際の海外文学の棚が面白い。海外文学って全然読み切れないのに、装幀やタイトルで気になる作品が多すぎる。白水社uブックスが好きなので新しいものが欲しかったけど、あのシリーズは意外と高い。白水社は良いですよ。
・中国アメリカ謎SF/2200円
書店で見かけるたびに気になっていた本。タイトルの付け方が上手い。
SFですら謎なのに、さらに謎なのか?! SFは読めるものと読めないものがあるのでそのどちらなのかはじっくり見ないとわからないなと思い、保留。これも白水社だった。翻訳が柴田元幸さんですね。
チボー家の人々/850円
白水社の棚見てるのか?
「黄色い本」のモチーフになっている原作があった。ただこちらもシリーズものなので、全部読もうとすると難しい。
結構じっくり眺めたが、そもそも海外文学は値段高めなのでこの予算で買うなら一冊になる。
他のコーナーも眺めたが、歴史小説のフェアが多めだった。客層から人気があるのだろうか。
【4階】古典(日本・中国)/詩・俳句・短歌/哲学/宗教/歴史・地理/政治/社会/新書/選書
哲学・歴史の階。哲学系をこの短時間で見るのは絶対に無理なので、歴史の棚の方を歩く。
・「ヘイト」に抗するアメリカ史/2800円
近年アメリカの図書館で起きている検閲や禁書の問題に興味があるので、その背景に関する内容が書かれていそうで気になった。
・奇書の世界史/1760円
シリーズで二冊。上記の検閲や禁書に関わりそうな内容で気になったが、副題に「ヤバい」とある。ちょっと引きが強すぎて、じっくり吟味する必要があると感じたため、保留。
歴史関連の本にこういう強い言葉が使われていると(手に取りやすくはあるものの)警戒心が生まれがち。
【3階】自然科学/農林水産業/電気・機械・化学工業/建築・土木/コンピューター
自然科学の階。宇宙関連の棚で宮澤賢治関連の本を当然のように手に取ったが、さすがにいつもの手つきすぎるため、いったん置いた。
・五感を探るオノマトペ—「ふわふわ」と「もふもふ」の違いは数値化できる—/1800円
かなり気になる。
普段全然見ないタイプの出版社の本が立ち並んでいて面白い。興味はあるがこれを読んで理解できるかはわからない。
ここまでであと3分くらいになり、どれを組み合わせても全然3000円にならないことに絶望。
終了
とりあえずキープしていた「『その他の外国文学』の翻訳者」を手にしたまま、気になった本のリストを眺めてみる。組み合わせ可能だった「黄色い本」を選んで、3000円以内に収めた。
普段書店に行くと同じ棚ばかり見てしまうけれど、いろんな棚を見ても結局自分が興味を持つ本というのはある程度固まることがわかりました。これはもう自分の性質的に、仕方ないですね。
ただ普段見ないジャンルの棚を歩いたことで、「忘れていたけれど自分が興味を抱いていた物事」を可視化出来たように思います。
こういう本の選び方は、たしかに書店に足を運ばなければ難しいのかもしれない。ネット上では自分の欲しい本を素早く手に取ることは可能だし、サジェスト機能も充実しているが、現地に足を運んでの眺めるという行為にはまだまだ及ばない。
ここ一年で都内の大きな書店が相次いで閉店している。「とにかくなんでも揃っている」という本屋が消えていくのは時代の流れなのかもしれないが、それでもこういう書店があるからこそ生まれる本との出会いがあると思う。
閉店前の八重洲ブックセンターには、訪れた人々の寄せ書きが無数に貼り出されていた。
数十年前から通う人の文章に「本のデパート」という単語を何度も見かけた。ここまで本が揃っている書店が当時どれほど夢のようだったかと思うと、やっぱり失くすのは寂しい。
大きな書店というのは維持するだけでも難しいと思いますが、ダンジョンのような楽しみ方ができる場所として、新しい本との出会いを生む場所として、できるだけ生き永らえてほしいなと思います。