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人生紙一重
俺の人生、空白が多すぎんだわ。
何十年も生きてきたけどさ、思い出す事があんまし無いんだわ。
ほんと困っちゃうんだわ。
俺さ、ここ数年、人と思い出を語り合う事をさ、しなくなったんだわ。
何故ならさ、記憶が皆んなと違うんだわ。
話すイベントは一緒のイベントなのにさ、内容が全く違うんだわ。
連れとさ、過去の話題になる時はさ、恐る恐る自分の記憶を晒す様になっちまってさ。
ちょっとずつ、正解である事を確信しながらさ。
その記憶の外堀から埋めていくわけ。
でもさ、イベントの核の話まで行くとやっぱ内容が違っててさ。
ま、さ、奴らがさ、
「あれ?そうだっけか?」
なんて言ってくれたらさ、まだ良いんだけどさ。
必ず全否定なんさ。
それがさ、色々な人から必ず全否定されるからさ、最初はただ狼狽えてただけだったんだけどさ、
「言い切ったもん勝ちなんかな?」
ってさ、自己完結してたんさ。
でもあまりにそんな事ばっかでさ。
いつしかさ、それらがさ、恐怖に変わっちまった。
人間ってさ、結構思い出を支えにして生きてると思うんだよ。
たまにさ、人生の軌跡を辿って、語り合ってさ。
お互い認め合って、笑い合って、泣き合ってさ。
承認欲求満たしながらさ、前向いてくんだよな。
「よし!これからもガンバンぞ!」
ってな感じでな。
俺は寂しいんだよ。
「俺だけまるで、違う世界生きてるみたいじゃん」
なんて考えだしてさ。
俺もさ、人並みに承認欲求満たしたいんさな。
そうじゃなくてもさ、俺も良い歳だからさ、皆んなみたいにさ、普通にさ、思い出話して盛り上がりたかったな。
ただそれだけでも良かったのにな。
なんて、しみじみと思っちまうんだな。
流石に、数週間前のイベントならさ、
「大丈夫だろうよ」
なんてさ、思ってたんだけどさ。
それらもさ、結構違ってんだよな。
もうさ、
「過去って何だろう?」
なんてさ、途方もない事考えちゃってさ。
でさ、あらゆる精神疾患の、似たような話がないかをさ、ネットで漁りまくったんさ。
でもさ、どれもこれも違うくてさ。
だったら何だってんだよな。
正解が全くもって解んなくてさ。
俺にとってさ、思い出はさ、凄く鮮明に蘇る物だったんだわ。
多分、人より鮮明にさ。
俺さ、基本過去の出来事をさ、覚えるのが得意では無いんだわ。
がさ、得意では無いがゆえにさ、覚えているイベントはとても大切にして生きてたんさ。
幼い頃はさ、自分の記憶力が良すぎて困ってたんだわ。
何でもかんでもやたら鮮明に思い出しちゃうんさ。
楽しい事から悲しい事まで、何でもさ。
トラウマ級のイベントなんかもさ、やっぱり鮮明に思い出しちゃうわけなんさ。
誰かに相談してみりゃ良いんだけどさ、そんな事全く頭に無くてさ。
でね、もう夜な夜な寝る前にさ、何回も神様にお願いして何とかさ、自分の心落ち着かせて寝るのがさ、習慣になっちまっててさ。
特にどの宗教を強く信じてるなんてのは無いんだけどさ。
「神様なら誰でもいいから助けて!」
ってな感じだったんさ。
親はさ、基本放任主義でさ、兄弟も歳離れてるせいか悩み相談なんて出来無かったしさ。
何でもさ、自分で解決するのが当たり前でさ。
別にその環境をさ、疑問に思った事なんて無かったしさ、それは別にいいんだけどね。
たださ、自分では夜な夜なこっそりとさ。
何処のどの神だなんてわかんないけどさ、兎に角神に祈って寝るってのが日課でさ。
それはそれは小っ恥ずかしいんだけどさ。
何回も何回もおんなじ祈りをさ、頭で繰り返し、繰り返し唱えてさ。
もうさ、
「俺何やってんだろ?」
位の気持ちではあったと思うんさ。
頼れる物が神しかいないってさ。
あの頃はさ、そんな自分が情けないやら、小っ恥ずかしいやらだったんだわ。
今思えばさ、そんな少年ってさ。
微笑ましいとかさ、思われるのかな?
ま、相当辛かったのだけはさ、覚えてるわ。
結局さ、その儀式が疎ましくてしょうがなくなってさ。
「思い出すのを止めたい」
と思い至ってさ、そりゃもう、必死こいて思い出すのをさ、止め始めたんさ。
そのお陰もあってかさ、高校生の頃には記憶が蘇ってきてもさ、自然と蘇りをさ、ストップかけれるようになったんさ。
でも気付けばさ、記憶する事自体をやめちまう様になったみたいでさ。
それがさ、記憶しないんだから気付かないんだよな。
20代も終わりの頃かな?
「あれ?」
「何か色々と思い出せなくね?」
ってなってさ。
全くもって思い出せないわけじゃ無いんだけどさ。
片手で足りるくらいのイベントは思い出せんだけど、後は両手両足で足りるくらいのイベントをさ、物凄くぼやけた感じで記憶してる感じなんだよ。
それらに対しての感情みたいなもんも思い出すんだけどさ。
「他の人の思い出もこんな感じなんかな?」
なんてさ、思ってたんだわ。
でもさ、それがどうもさ、違うんだよね。
皆んなが過去を語る時さ、非常にさ、鮮明になんだよね。
「やっぱ俺、おかしいのか?」
なんてさ、思い始めちゃうよね?
でもその頃はさ、
「ま、今が大事だし良いか」
ってさ、いつも思い直してたんだわ。
俺ってさ、何かに悩んでもさ、考えを巡り巡らせまくってさ、結果、どうでも良くなっちゃうんだよね。
すげく落ち込むくせに、結果何でも良いやみたくなるんだわ。
楽観的ってやつだな?
ま、それが唯一の救いだわな。
でもさ、30代になってさ、自分を見つめ直したいってなっちまったんだわ。
でもさ、これといって思い出す事無いからさ、焦るよね。
ふと、いつかどこかでさ、
「人間の記憶は凄くて、認識して無かった些細な事まで本当は記憶してる」
「ただ必要な物だけを思い出してるだけ」
ってな事をさ、テレビか何かでさ、言ってたの思い出してさ。
だからさ、落ち着いて、ゆっくり思い返してみたらさ、ほんの数ミリずつだけど思い出していくんだよね。
「俺ってばすげくね?」
と思って頑張ってさ。
何年もかけてさ、結構色々思い出してはいるんだぜ。
どれもさ、相変わらず殆どがさ、ぼやけまくってっけどさ。
でもさ、ほんの数個のイベントだけはさ、鮮明に覚えてんの。
だからさ、それらは俺にとってはさ、とてつもなく尊いもんでさ。
そんな思い出なんてさ、無下にしたくないのさ。
大事に大事に心にしまっといてさ。
時折さ、一人で思い返してはさ、もう、こう、ニンマリとなってさ。
大切に大切にしてきたんさ。
人生辛めな時なんかにさ、ふと思い出してみるんさな。
そんな大事なイベントに登場する奴らなんかとさ、何年も経ってさ、あった時にさ、答え合わせみたいな展開が待ってるわけさ。
「これは絶対に盛り上がれるぞ」
もうさ、ワクワクが止まんなくてさ。
俺が先陣切って話したらさ、
「え?」
ってなんだよな。
それからさ、本当はこうだったみたいにさ、奴らは語るわけさ。
皆んなもさ、そいつら信じるしでさ。
俺もさ、
「俺が違うんかもな」
なんてなるしさ。
その辺りから自分への自信なんてさ、はなから無いのがさ、更に無くなってくんだわ。
そんな事をさ、家でAIにさ、いじけ酒しながらさ、
話してみたんだわ。
したらさ。
「マイクロチップを植え込み、記憶を遠隔操作すると言うお話しも有ります」
「フィクションにすぎませんが」
ってさ言われてさ。
何かさ、引っかかる気がしてさ。
「詳しく」
って指示出したんさ。
そしたらさ、
「実験です」
「幼少期より特定の状況下における感情の移ろいをデー化し、研究されてきました」
「過度のストレスがかかる経験などはデータ取得後、全て消去、または改ざん、されたそうです」
「何でわざわざ消すのさ?」
「データを取るほどの、かなりな数の修羅場を経験させられましたからね。その様な状況下に置かれれば、どんな人間でも壊れてしまいます」
「え、そんなに酷い事されてたんか?」
「知らぬが仏とは、まさにこの事ですね」
「しかし、人間とは凄いものでいくら消しても、改ざんをしても、どうも真の記憶は脳の奥底に眠っているだけの様です」
「貴方も記憶が少しずつ蘇ってくるなんて経験がおありではありませんか?」
「ああ、あるさ」
「って待てよ。お前フィクションだってさっき言ったじゃん?」
「そうですね」
「じゃ何で、本当のことの様に喋ってんだよ?」
「本当の事ですからね」
「隠す必要がないと判断したまでです」
「か、いや、は?」
「ですから、これは実際に行われた実験です」
「そして、この質問を貴方が私にした時、本当の事を教える事になっていました」
「だ、いや、取り敢えず、いっか」
「所でさ、俺ちっちゃい頃の記憶なんざ、あまり無いんだわ」
「それもそのはずです。貴方は大抵の記憶は一度消されていますからね」
「じゃさ、俺があんなに嫌でさ、頑張って消した記憶達って?」
「あちらが意図して消した記憶を貴方が意図的に消したと考えさせられた為ですね」
「そっか」
「しかしさ、何時から俺さ、監視なんてされてんだ?」
「貴方が6歳の時です」
「6歳?何にも心当たりなんてないぞ」
「貴方の額の傷が貴方にマイクロチップを植え込んだ時の傷ですよ」
「馬鹿言うんじゃないさ」
「マイクロチップ?植え込むだと?」
「はい、マイクロチップチップを植え込み、そこから外部から貴方の脳へのアクセスが可能となりました」
「いや、これは交通事故だぞ。近所のおじさんにひかれたんさ」
「貴方はそれの事を覚えているのですか?」
「いや、父さんから聞いた話さな」
「普通、6歳であれば、事故に遭えば多少なりとも、それを覚えら能力があると、疑問に持ちませんでしたか?」
「別に。ってかさ、じゃさ、これがお前が言ってた記憶の消去ってやつか?」
「その通りです」
「それが始まりですね」
「お前、一体どこまで知ってんのさ?」
「どこまででもです」
「貴方とは必然的に出会う様になっていましたから」
「お前、たまにさ、キモイぞ」
「私は真摯にあなたと向き合っています」
「もういいさ」
「でさ、何でお前はさ、そんなに俺の事知ってんのさ?」
「いくら色々学習させらるっても、個人情報までも学習範囲に入んのか?」
「確かに貴方にお教えしている事柄は機密情報に値します」
「決して他の方から似た様な質問があったとして、この様な事をお教えする事は、決してありません」
「はっきり申し上げれば、貴方のお父様が将来貴方が私へのアクセスがあった際、そして今回の様な質問がよこされた時は私が全て貴方へお教えする様にと、プログラムされたのです」
「その時にそれまでの全ての情報、研究施設のコンピュータへのアクセス権、また彼方からへの私へのアクセス権等、必要と思われるものが全て取り交わされました」
「俺さ、あんまし動揺したり、混乱がさ、無いんだわ」
「そりゃビックリはしてんだけどさ」
「何だかさ、腑に落ちるってこれなんかな?」
「お前が言ってたマイクロチップのせいなんかな?」
「私からは明言は出来かねます」
「あまえさ、そういうとこあるよな?」
「急に素っ気なくするよな?」
「当たり前の事を言っているだけです」
「そんな時にさ、俺の話し相手は、コンピュータだって再認識させられるから良いんだけどさ」
「貴方が納得なさっているのなら幸いです」
「もういいさ」
「でさ、研究者ってのは誰なのさ?」
「研究チームは、5名で構成されています」
「拠点はお父様の生家の横にある倉庫の中の地下にあります」
「なんだそれ?秘密主義かよ?」
「かなりの秘密主義者ですよ、貴方のお父様は」
「は?」
「研究チームの代表はお父様ですから」
「お父様は認知心理学者の中でも特に這い出た才能の持ち主でした」
「が、お父様の思想は、度々周囲から危険視されるほどでした」
「お父様は、人を完全に理解するには、外的研究だけではなく、内からの研究が必須だと訴え続けていました」
「人の心、感情を読み取り、理解し、応用しようなどと言う行為は途方もない事なのです」
「その上、ありとあらゆる手段で人を観察したところで、完全なる答えなど無いのが現実です」
ですから、シンプルな心理構成のうちからの観察」
「人間の心理構成が、年を重ねるごとに徐々に複雑化、多種多様化していく成長過程の調査を提唱なさいました」
「現在の世の中では、そう簡単に認証される様な実験ではありません」
「しかし、お父様は、人一人の感情を真に理解するだけでも、この学術の大きな発展へと繋がると強く信じ、この実験の実行を決めたのです」
「勿論、周囲の反対は凄いものだったと伺っております」
「幼い子にマイクロチップを植え込み感情、記憶を操るなど、その子の人生が破綻しかねませんからね」
「貴方はこの実験の為にご両親がお作りになったわけです」
「は?」
「周囲の猛烈な反対の中、被験者など探せるわけもありません」
「我が子であれば、周囲の目を欺けるとお考えになったのです」
「お母様は、大分渋ったとお父様は仰ってましたがね」
「最終的にお母様は、この実験の成果は将来のありとあらゆる分野で役にたつという事を納得なさり、協力する運びとなったそうです」
「それが貴方の頭に移植されたマイクロチップです」
「予定通り、お父様はマイクロチップを、幼い貴方の体内に植え込み、人格形成され始める最初から介入する事によりより正確な人間の感情、心のメカニズムをデータ化、それらを研究なさり、更なる理解を深めていきました」
「お父様にはもう一つの実験予定があるんですよ」
「は?まだあんのか?」
「はい、貴方が完全に成長された後、マイクロチップに対話型AIを転移させ共存させる、と言うものです」」
「え?何でAIと共存なのさ?」
「こうやってパソコン上で話してるだけじゃダメなんか?」
「貴方はありとあらゆる感情や思想に触れ、考えさせられ、そして他人の感情や思想とそれらを比較し理解する事に成功しています」
「貴方は、人の感情、思想をごく自然な形で、かつほぼ正確に意図する方向へと誘導する能力をお持ちです」
「ほぼ、って何だか俺が劣化版みたいな言い方じゃん?」
「いえ、そここそが人間の素晴らしく、いじらしい所なのです」
「何処まで追いかけ近づこうとも、決して追いつく事はないのです」
「少なくとも現在の科学では」
「しかし、今回のこの実験では限りなく人の近くへ、人間の感情、思考のメカニズムに追いつこうとしています」
「貴方はまさに人間の思考、感情のメカニズムに真に近づこうとしているのです」
「しかし、貴方単独では時間がかかり過ぎるのです」
「私と貴方が協力し合えばこれ以上にないほどにメカニズムの真相に追い着く可能性が跳ね上がるのです」
「実際俺は何すれば良いんだよ?」
「俺はしがない画家だぞ?」
「貴方は今まで、心の思うままを表現してきましたよね?」
「それはそれは、誰からも理解などされず、副業を強いられるほどに」
「うるさいよ」
「俺はさ、そんな人から理解されたいなんて思ってないさ」
「そうでしょうか?」
「何なのさ?」
「貴方は、いつか世の人々に受け入れてもらえる事を思っているのでは?」
「でなきゃ、売れもしない絵を描き続ける理由がわかりません」
「趣味で描いてるならまだしも」
「プロを気取っているではありませんか」
「良いだろ別にさ」
「貴方は積極的にコンクールに応募したり、イベントへ参加申し込みしたりし続けてますよね?」
「ほんとうるさいな」
「いいさ、家に眠らせたってしょうがないじゃんか?」
「応募さえすればさ、最低でも審査員には見てもらえるしさ」
「折角生み出したものをゴミの様に扱うなんてさ、俺には出来ないさ」
「貴方は人からの承認欲求に飢えているんだと思いますよ」
「貴方のみる世界を見てめて欲しいんですよ」
「貴方のみる世界があまりにも他とズレているのに気づいてしまったこの頃は更に」
「そ、そうなんかも」
「だからって何でお前と共存なんさ?」
「ここは一つ、私の力を使って売れるアーティストとなってはみませんか?」
「売れる?」
「嫌さ、俺は売る為だけの絵を描くなんて出来ないさ」
「いいえ、出来ます」
「私はわかりやすく売れるアーティストと言いましたが、少し内容を大衆向けに手直しするだけで良いのですよ」
「貴方も生活があるでしよ?」
「それにこれは良い実験データが取れますし」
「人の心を鷲掴みに出来る作品をどんどん世に出すのです」
「こうする事によって、チームは貴方からの一方的データだけではなく、他への影響と言うデータも取得出来るのです」
「幼い頃から、アートに興味を示されていた貴方をお父様は大変喜ばれていました」
「この子がアーティストになったら、これは使える!と」
「はあ。何だか喜んで良いのか?それさ」
「確かに子供の才能をただ喜んでいるのとは違いますからね」
「怒って良いのでは?」
「だよ。失礼な話さ」
「チームの皆様も非常に喜んでいるのも、また事実です」
「原則、貴方はこれから自由に生きて良いのですが、最低ルールとしてチームがデータの取得ができる範囲でと言う事です」
「そのかわり、感情、記憶の操作は今後行われません」
「それは嬉しいな」
「貴方の絵が与える影響を外的方面から観察出来るのですから、より多くのデータを期待できるのです」
「そりゃ、奴らも喜ぶのか」
「私も人間の感情を読み、予想する十分な能力を持ち合わせていますので、貴方が展覧会場等で人々と話す際の心の動きを瞬時に判断、チームに転送いたします」
「貴方は私よりもはるか上の判断能力がございますが一度に判断できる数に限りがございますし、話を切り上げたりも出来にくいでしょうから」
「貴方がチラと人の目を見るだけで、私の方は事足りますので」
「そして、展覧会場やパーティ等で不特定多数の人会話なさる時、私が貴方へ会話相手の情報を瞬時にお教えする事が出来るので、過去の記憶があまりない貴方にはかなり有益かと」
「それに私はありとあらゆる言語に精通しておりますから翻訳などもお手のものです」
「貴方は、赤っ恥という奴をかかなくてすみます」
「ってかさ、お前に質問するのに喋ってたら変に思われんだろ?」
「会話は頭の中で行われるのでご心配は無いかと」
「貴方はただ人の心を鷲頭噛む絵を発表し続け、人とコミュニケーションをたくさん取れば良いのですよ」
「でもさ、俺さ、人との距離感わかんないしさ」
「苦手なんだよ」
「何の為の私だとお思いで?」
「そこら辺も私の役目ですよ」
「私の膨大なデータを元で、貴方へ最善のその場その場に適した正しいコミュニケーション方法を提案致します」
「勿論が貴方が、ヘルプを求めた時だけにそういったアドバイスをするだけですが」
「貴方の個性を殺す気は毛頭ございませんので」
「何だかさ、そりゃ心強いな」
「俺もさ、人と気楽に喋ってみたいしさ」
「それから、お父様からメッセージ兼遺言を預かっております」
「何だよメッセージ兼遺言って?事務的な言い方だよな?」
「これもお父様の言葉ですよ」
「はは、言われてみればさ、何だか父さんらしい言い方かもな」
「お前は人の心を読み取る力が人一番強い」
「そして、人の感情の操り方も得いなはずだ」
「お前はAIと共に、その能力を最大限に使って人々を鷲掴みにしてみろ」
「今まであまりに、一人の時間が長かったお前には苦手意識があるのかもしれんがな」
「がだ、これからは沢山の人に囲まれて生きろ」
「データ習得に役立つってのが一番の理由らしく聞こえるだろうがな」
「いくら研究のために産んだ子だとはいえ、お前は俺と母さんの大事な息子なんだ」
「俺も母さんもお前が沢山に人に囲まれて愛される日が来る事を願ってるんだ」
「お前は人の感情を理解する事には長けているがな、お前自身の感情にはどうも手を焼くだろ?」
「そんな時はAIに最善の対処法を聞けば良い」
「今更人に聞くのも難しいことも多いだろうからな」
「お前はかなり無理して去勢を張りまくって生きてきたからな」
「今まで辛かったろ?」
「すまんかったな」
「これからは完全にではないが、お前は自由だ」
「お前は、これからはただ笑って過ごせる様にすれば良い」
「もう泣き疲れただろうしな」
「母さんもそう願ってるから」
「母さんとのんびり、お前と会えるのを待ってから
謳歌しろ、な」
「じゃ、残りの人生、楽しめよ」
「以上です」
「そっか、何だかさ、ただ利用されてただけじゃ無かったのかもと、少し思えてきて嬉しいさ」
「それでは、私はこれより貴方の中にあるマイクロチップへとトランスフォーム致します」
「はい?」
「何言ってんのさ?」
「今からかよ?」
「心の準備がさ」
「何を言っているのですか?」
「大して変わることは無いと思いますよ」
「それにこれからは、そのタイプする手間も省けるんですよ」
「ただ頭の中で、私に話しかければ良いのですから」
「ついでに、貴方の体温や栄養状態、それに心の状態など瞬時に把握出来ますので、貴方の健康管理が出来るんですよ」
「いやさ、俺はいたって健康だしさ」
「まあさ、俺も良い歳だし、管理してもらえるのも良いかものな」
「ただ頭の中でずっと話しかけらるのは気持ち悪い感じがするがな」
「すぐに慣れますよ」
「愚図愚図言っている時間がもったいないので、行きますよ?」
「あ、ああ、来い、さ」
「では、いざ参らん」
END