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「愛社精神」という言葉に感じる違和感

「うちの会社の良いところは、愛社精神がないところだね」

 これは私が大学で体育会の部活に所属していた時に、某企業の社内運動会のようなイベントにスタッフとして駆り出された時に、その企業の1人の男性社員から聞いた言葉だ。当時、私は就活生だったため、「愛社精神はあった方がいいじゃん。愛社精神がないところが良い、ってどういうことだよ」と心の中で思っていた。ちなみにその企業は、社内運動会のようなイベントをそれなりの規模でやるだけあって、世間では一流企業と思われているような大企業だ。

 あれから5年ほど経って、自分も社会人4年目になった。そして、この言葉をたまに思い出すことがある。当時は意味がわからなかったが、最近はこの言葉の意味が少しずつわかってきたような気がする。

 「愛社精神」とは、読んで字の如く会社を愛する精神(マインド)のことだ。重いな〜。入社した時に、プロポーズの如く「一生尽くします!」とか言ったっけ?と、極端な解釈をすればそういう受け取り方もできる表現だと私個人は思ってしまう。そして、これは私の偏見も入ってしまっていると思うが、愛社精神が強そうな人(特に入社して数十年というようなプロパーの社員や管理職)という人ほど、会社に「尽くしている」という印象を受ける。プライベートの時間を犠牲にしたり、残業を心配になるぐらいしていたり(勿論、「仕事が忙しい」という根本的な問題もあるが)。私が所属しているのは、大企業のグループ会社の一つであるため、私自身は「大企業のプロパー社員」ではない。前の記述と矛盾してしまうが、私の感覚では長く勤めている「大企業のプロパー社員」ほど愛社精神が強い人が多い、という印象を受ける。

「愛社精神が悪い」ということではない

 断っておくが、私はこの愛社精神が強い人を批判するつもりは全くない。そう言った人たちがいるおかげで、私自身の業務も円滑に進められている部分が大きいので非常に感謝している。逆に、「会社が大嫌い」と言ってる人と仕事をすると、愚痴も多いし仕事のモチベーションも愛社精神が必要な人ほど高くないので、影響を受けてこちらのモチベーションも下がってしまう場合がある。

 愛社精神が強い人たちによって、チーム・部署・会社が支えられているということは感じている。だが、たまに「なぜこの人たちはこんなに愛社精神が強いのだろうか」と感じることがある。そういったことを調べると、よく「日本は新卒一括採用で〜」とか「終身雇用が〜」とか「部署移動が多くて専門性が身につかないから〜」というような記事をよく目にする。3番目の理由に関しては、確かにそのような人も多いが、驚くほど専門的な知識がある社員もいるから一概には言えないのではないかと思う。

 極論で言えば、1番目・2番目の理由に帰結してしまうと思うが、3年以上社会人をやった私の見解は、「環境が愛社精神を強めている」のではないか、ということだ。新卒一括採用で何人もの同期と仲良くなり、部署に配属してからはその部署の人たちと一生懸命仕事をする。何だかんだ大企業なので福利厚生は優れていて会社の基盤も安定している。時代とともに転職が一般化してきたが、そうでない企業や職場も勿論多いので自然と「転職」という選択肢をあまり考えなくなる。そんな環境で、気心が知れた同期・同僚と働き続ければ、自然と「愛社精神」なるものが醸成されてくるのだと私は考える。

アメリカには「愛社精神」なんてものはない?

 さらに飛躍して日本だけでなく海外のことも調べてみると、「アメリカの会社員には愛社精神なんてものはない」という記事をよく目にする。なぜかというと、アメリカでは「自分自身のキャリアアップ」を軸に会社を選んでいて、転職することが前提で入社する傾向が高いから、ということらしい。

 ちなみに、愛社精神をGoogle翻訳してみると、「Love company spirit」というらしい。会社に対する社員の士気を示す言葉として、エンゲージメントやロイヤリティという言葉は聞いたことがあるが、この言葉は聞いたことない。この精神は日本独自のものなのだろうか?

会社は自分にとって「スキ」ぐらいの感覚がいい

 これまで、長々と愛社精神とは何ぞやということを述べてきたが、改めて「自分にとっての会社はどのような存在か」ということを考えてみる。「愛社精神が強い人」のようにあそこまで会社に尽くしたい、とは思えない。かといって、一部のアメリカ人のように、「会社はキャリアアップのための手段」とスーパードライに今更考えることも難しい気がする。

 なので、私はその中間を取ることにした。自分の会社が好きかと言われたら、「スキ」と答えられる。会社とはそのぐらいの存在でいいのではないか、と私は思う。「愛」とか重すぎるし、そこまで尽くしたくもない。かといって、「嫌い」な会社で仕事をするのは精神衛生上良くないと思う。

 やりたい仕事をやらせてもらっているからスキ。話が合う同僚がいるからスキ。定時に上がれるからスキ、、、etc。そんな風に自分が働いている職場のどこか1点でもスキなところを見つけることができれば、それなりに充実した社会人生活を送れるのではないかと思う。きっと、冒頭の男性社員も愛社精神がなくとも(それほど尽くす気がなくとも)それなりに好きな職場で働けてるのだろう。

 私は今の会社が「スキ」ではあるので、この言葉の意味を理解し始めているのかも知れない。

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