来れば来るほど楽しめる。リピーター続出の「預時間通帳」【お宿会議】
こんにちは!おてつたびのさきっちょです!🌼
おてつたびとは、「地域の人を通じてその地域を好きになる」を信念に、人手不足で困っている地域の方と、地域に興味がある方とをつなぐマッチングプラットフォームです!
◆お宿会議とは?
現在、新型コロナウィルスの影響で観光業や宿泊業が打撃を受けていることをうけて、私たちおてつたびでは毎週月曜日に、宿泊事業に関わっている方限定の情報交換の場「お宿会議」を設定しています。
(※お宿応援プロジェクトについてはこちら)
6月15日のお宿会議のゲストは、山口県長門市(ながとし)にある「ホテル楊貴館」取締役の岡藤 明史(おかふじ あきふみ)さん。
地域資源を活かすための取り組みや、リピーターやファンを大切にしていくお宿の姿勢についてお話いただきました。
記事ではインプットセッションの部分をまとめていますが、実際のお宿会議では、参加者の皆さんでの意見交換が活発に行われる、濃い時間となりました。
◆ゲストプロフィール
油谷湾温泉 ホテル楊貴館 取締役 岡藤 明史(おかふじ あきふみ)氏
1988年、山口県長門市(ながとし)生まれ。同市にある温泉宿「油谷湾(ゆやわん)温泉 ホテル楊貴館(ようきかん)」の4代目。
ホテル楊貴館は油谷湾を一望できる場所に位置し、1973年の創業から今年で47年目を迎える。
現在、「地域の食材×山口県が誇る日本酒」を最高に楽しめる「日本酒BAR」を館内に作りたい想いでクラウドファウンディングに挑戦中!
◆はじめに
皆さんはじめまして!山口県長門市で、海のそばにありますホテル楊貴館をやっています、岡藤明史と申します!今日はよろしくお願いいたします!
ホテル楊貴館は今年で創業48年、その間に3段階くらい増築を重ねています。右が8階建て、左が3階建てという、増築を繰り返して大きくしていった温泉宿で、温泉を掘り当てて小さな民宿をつくったことから始まっています。
私自身、大学卒業後は就職で福岡に出ていたんですが、Uターンで戻ってきました。前職は建設会社の営業をしており、ホテル業は一切やったことはありませんでした。何も知らずに戻ってきて、約5年ほどが経ったところです。
さて、今回のコロナのなかで、考えていかないとと思ったことがいくつかあります。
まずは地域資源を活かしたサービスの差別化をはかることについて。
それから、ゲストハウスやホテル、旅館などそれぞれの業態がありますが、それぞれの形に合ったお客様からのニーズに確実にこたえること。「このお宿にはこれが必要だ」という部分を見極めて、ある一定のレベルまで到達させることの必要性について。リピーターのお客さまをどう掴まえておくかという、リピーターへの対策について。
今後何かが起きたときに、こちらでコントロールすることができない外部のものばかりに頼っていたら身動きが取れない状況になってしまう。
今日は皆さんと、そのあたりのお話ができたらなと思っています。
◆”地域資源を活かした”サービスの差別化を考える
私のいる長門市というところは、元乃隅神社(もとのすみじんじゃ)、角島大橋(つのしまおおはし)、秋吉台(あきよしだい)、錦帯橋(きんたいきょう)、とらふぐ料理、棚田がきれいなところなど、実は色々な観光資源があるところです。
でも「長門市」とか「油谷湾」って聞いても、どんな場所か皆さんよく分かっていないことが多い。以前から、それに対してどう手を打っていこうかと考えていました。
皆さんのお宿の周りにもそういった、めちゃくちゃ強いキャッチになるものってあると思います。でも、これだけに頼っていると他のお宿との差別化があまりできないんですよね。
”ふぐのフルコース”だとか、”獺祭が飲める”といったことは山口のどこの宿でもやっているんですよ。
そのなかでどうやって目立つものができるのか考えていくと、組み合わせたり他のところがやっていないことをするしかない。
今回、私のところではクラウドファンディングを使って日本酒バーをつくります。
このプロジェクトでは、夜に日本酒を飲める場所をつくるというだけではなくて、昼間はどう使う、とか冬の間はどうする、というところも考えています。春夏秋はアイスパーラーにして、冬は練り物・かまぼことかちくわが有名なのでそういうのを焼きたてで楽しんでもらうとか。
プロジェクトをする背景には「泊まらせるために夜を魅力的にする」というテーマがあります。夜の楽しみ方を作って、泊まってもらうことが目的です。夜の楽しみ方をつくる方法の一つとしての日本酒バーなんですね。
こういったものを作る上ではやはり、独自のエッセンスが必要です。
いちばん大切なことは、地域の魅力を活かすこと。そのうえで、そこに尖らせる何かをつけ加えることが必要だと思います。
◆お客様視点のキーポイントをおさえた上での+αを
ゲストハウスやホテル、旅館などそれぞれの業態がありますが、それぞれの形にお客様からの期待値というか、求められているニーズがありますよね。
そんな「このお宿にはこれとこれが必要だ」という部分を見極めて、ある一定のレベルまで到達させることが必要です。そのために何をしていくのか。この点もとても大切なことだと考えています。
お客様からの評価基準のどれにおいても”ずば抜けて良い”となるのが理想なんですけど、”ずば抜けて悪い”が一個でもあれば評価は下がってしまいます。
当館の場合、キーポイントとしては「温泉」「料理」「絶景」「サービス」「客室」の5つがあります。
ここに期待があるため、ここの満足度が欠落すると、評価がマイナスになってしまいます。上記のポイントをおさえた上で、さらに+αの価値を提供することを心がけています。
「愚直なまでにお客さまのことを考えられる人しか残らない」「ビジネスの上手いだけの人は残らない」とスタッフさんにも言っています。
こちらから「これが良いでしょう?」と押しつけるのではなくて、あくまでお客様の視点がスタート地点です。どこまでお客様視点にたてるか。何故、うちを選んでくれるのか、その入り口をすごく大切にしています。
だからアンケートなどを使って、選んでくれた人は何故選んでくれたのか、耳を傾ける。もし、そこがずれてしまうと全然違うサービスになってしまいますからね。
クレームだったり評価が低かったとき、なぜ満足していただけないのかを分析していくと、うちの場合は先ほど挙げた5つのポイントが最低レベルに達していないといけないんです。
そうやって見ていくと、より楽しめるものがなかったら満足度が2になるとかはあまりなくって、5つのうちのどこかが欠けていたら、全体の満足度が下がってしまうんですね。
キーポイントにも優先順位があります。
もちろん、キーポイント自体はお宿さんごとに違うと思います。5つじゃなくて3つのところだとか、1つのところだってあるかもしれないですよね。
自分のお宿は何がキーポイントなのか。ここが大切な基準になると思います。
◆直接予約してくれるお客様を大切に、来ることを楽しんでもらえる宿を目指して
ホテル楊貴館では、リピーターさんへの施策として、お客さまの余った時間をお預かりする「預時間通帳」サービスをやっています。
ホテルの基本の滞在時間としてはチェックインが14時、チェックアウトが12時の22時間ステイなのですが、遅めの17時に来られる方や早めの9時に出発する方もいらっしゃいますよね。
預時間通帳は、そのぶんの余った時間をお預かりするというサービスです。預時間通帳は宿泊者個人に紐付いているので、来るたび、違う方と来たときにも使えます。
22時間貯まると一泊できて、早い方だったら3回とか4回とかで貯まります。これがリピーターの中で流行っていて、結構多くの方に使っていただいています。多い方だと年間20回、30回と来てくださっていて、楽しみながらリピートしてもらえているという感じです。
楊貴館には仕様の異なる客室が39部屋ありまして、年間2万人の方に宿泊していただいています。
今までの比率で行くと、そのうち自社HPや電話での予約が半分ほど、それに続いて楽天トラベルやじゃらんなどのOTA(インターネット予約の旅行会社)が4割、店舗のある旅行会社が1割という比率で、すごく低い比率なんですよね。
先代の社長、父の遺言でも「エージェント、旅行代理店に頼る宿にはうちはならない」と書かれていますし、直のお客様に喜んでいただくことを大切にしている宿なんです。だからもともとエージェントを利用する割合は少ないです。
使った場合でも、エージェントさんの大切なお客様を送っていただくわけなので、そのお客さまを大事にするという考え方です。エージェントさんと仲良くすることが目的ではなく、お客さまを大切にするという営業方針です。
山口県全体、特に長門市はもともとインバウンドが弱いエリアでしたし、75%は近場のお客さんが来てくださっていました。インバウンドの割合は2〜3%で問題視されていたんですけど、それだけもともと近くの方にきてもらっていたんですね。
でも、周りに飲み屋も飲食店もそんなにないし、コンビニもない場所。だから、宿のエンターテインメント性を高めていかないといけないな、と思っています。
このことはスタッフさんたちとも話していて、「ないものねだりはできないけど、できることからやっていこう」とそういう姿勢ですね。
宿を楽しんでもらいたい。うちはそれしかできないので、その部分を作り込もうと思っています。
ここからは参加者の皆さんで、気になった話を共有したり、気づいたことをシェアする時間となりました。
◆編集後記
”山口県の萩市、岩国市、山口市の旅館の4人のオーナー、地元の飲食店さんとも連携するキャンペーンをしている”という話題に、「地域連携というと狭い範囲を想定しがちだけれど、もっと広く見直してもいいのかなと思った」という感想も。
また、地域や各種組合の中で新しいことを始めたいときの「今までは良かったから」という意見の人たちとの折り合いの付けかたについての話や、自身の宿の強みをどこにおいてどうアピールしていくかなど、今気になっていることについて意見交換が続きました。
おてつたびでは、Facebookにて宿泊事業者の方限定の情報交換グループを作っています。参加した方同士でもぜひ繋がっていただいて、お宿会議の場を超えて情報交換をするなど活用していただけると嬉しいです。
また、当初300万円をゴールにスタートした岡藤さんのクラウドファンディングですが、ネクストゴールの500万円も超え、204人の支援により189%の達成で終了したそうです!👏
日本酒BAR、完成が楽しみですね!
岡藤さん、どうもありがとうございました!!
<記事執筆:田中沙季(さきっちょ)>
⭐今回のゲスト⭐
◆ホテル楊貴館
〒759-4505
山口県長門市油谷伊上10130番地
◆HP
http://www.hotelyokikan.jp/hotspring/
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