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29歳で脳梗塞になった話 ┈┈ 第12回

7月25日(火)

 斜向かいにいた寝たきりのご老人は病室を移動になったらしい。気が付けば唸り声や痰を吸引する音が聞こえなくなっていた。脳血管障害の患者、特に言葉がうまく喋れないほど症状が進行している者は、1日の大半を寝て過ごしている。意識がはっきりしていても、血糖値などに問題があり、1人で出歩くことを許されない者もいる。程なくして別の患者が病室の一角を埋めた。なぜこの病が三大疾病の一つに数えられるのか、その所以を察するに難くない日々を送っている。

 午前中は金曜の予告どおり、眼科で視野検査が行われた。机上には小さなドーム型の機械が置かれている。片目をガーゼで覆い、顎と額を機械に固定、そのままドームの中心にある黒点を凝視すると、視野の端から小さな丸い光が見えてくる。光が見えたところで手元のスイッチを押す。これを様々な角度から繰り返すことで視野を測定するのである。

 結果は良好だった。私の血栓は脳の下方にあり、幸いにも視神経を僅かに圧迫するにとどまっている。これが更に上方に広がると、視野の左右どちらかがまるっきり見えなくなるなど、重度の障害が残るのだそうだ。時折目の端にギラギラするものが見えるのは「閃輝暗点(せんきあんてん)」という偏頭痛に関連する症状の一つで、眼球に起因するものではないらしい。まずは視野、眼球ともに問題ないことが分かり一安心だ。

 さて連日の肩凝りで首、肩の痛みが限界突破していた私は、リハビリの折、理学療法士に助けを求めることにした。どうやら私は典型的な巻き肩らしい。日々のパソコン業務やスマホ操作が祟ってか、左右の肩が内側に巻き込まれた姿勢になっているとのこと。ここで、彼にご教授いただいた肩凝り改善のストレッチを2つ紹介する。

1)肩ほぐし
両腕を正面に突き出し左右交差させ掌を合わせる。その状態のまま腕を耳の後ろぐらいまで上げて体を左右に曲げる。脇の下あたりに伸びを感じていれば○。

参考画像(イラストACより)

2)肩甲骨ほぐし
両腕の掌から肘までを体の正面で合わせ、その状態のまま上半身を反らす。

参考画像(イラストACより)

 巻き肩は放置しておくと四十肩、五十肩の原因になるらしく、日頃から柔軟を習慣化することが望ましいとのこと。たいへん勉強になるリハビリであった。

 そういえば、私の脳内にある血栓の影は、治療の甲斐あってか小さくなってきているらしい。脳梗塞を起こした細胞は助からないが、その周りの細胞はまだ辛うじて生きている。それらを回復させるために必要な治療が点滴であり、リハビリなのだ。退院へのカウントダウンは始まったか。今後、主治医から下される検査結果に期待が高まる。

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