29歳で脳梗塞になった話 ┈┈ 第11回
7月24日(月)
右腕の肘裏にぶすりと激痛。血管が脈打ち、静脈から血液を抜かれる感覚が全身を伝う。起き抜けの採血は何度経験しても慣れないものだ。
昨夜看護師から頂戴した鎮痛剤のお陰か、朝には頭痛がすっかりよくなっていた。しかし肩凝りは相変わらず継続中で、それどころか日に日に悪化の一途を辿っているようにも感じられる。硬めのマットレスは患者間でも賛否が分かれるらしい。
今日は珍しく朝から忙しかった。朝食の後、9時過ぎから高気圧酸素治療、リハビリ、MRIと続いた。MRIは昨日が後頭葉で、本日は頸部付近の検査だったそうだ。
病室に戻り洗面台を見ると、頭髪が酷く乱れていることに気が付いた。そう言えば、先週の金曜日からシャワーを浴びていない。お陰で髪の毛が随分と油分を帯び、心なしか頭皮も少し痒い気がする。点滴に来た看護師へ洗髪が可能か尋ねてみたところ、有難いことに予定をやりくりしてシャワー室を空けてくれた。15時頃に妻が面会に来るので、それまでに身だしなみを整えられたのは幸いだった。(後から聞いた話では、自分のシャワーの順番が何かの手違いで1回飛ばされていたらしい。どうりで慌てて準備してくれていたわけだ……。)
お見舞いに来た妻は、心なしか少し疲れて見えた。それが仕事のためか外の暑さのためなのかは分からないが、最近越したばかりのマンションに、突如として1人きりにさせてしまっていることが要因の一つではありそうだ。寂しい思いをさせて申し訳ないが、昨日私も辛くて泣いたくらいなのでどうか許してほしい。妻とは互いの体調や近況など他愛のない話をした。15分の面会時間の何と短いこと。新たな下着や文庫本を受け取り、手を振る妻をエレベーターの前で見送った。
面会が終わると再びリハビリの時間。エアロバイクを20分漕いだ後、ペーパーテストが行われた。1から9までの数字には○や△など決まった記号が付されている。設問には1から9の数字がランダムに並べられ、その下は空欄となっている。見本を見ながら、制限時間内に幾つの記号を空欄に書き写すことができるかを計測するという内容だ。最後まで終わらなかったが評価は上々。頭の体操は死にかけの脳へ喝を入れるに丁度いい。(以下に課題の参考URLを載せておく)
理学療法士の話によると明日以降、屋外歩行訓練が始まるそうだ。連日猛暑を伝える天気予報を前に若干気が引けつつも、1週間以上振りに訪れる外出の機会に少なからず心が躍った。