最新の子どもの貧困率発表 おてらおやつクラブの見解は
厚生労働省が発表した国民生活基礎調査で、最新の「子どもの貧困率」が明らかになりました。
子どもの貧困率(所得水準などに照らして貧困の状態にある18歳未満の割合を示す子どもの相対的貧困率)は、今回の発表によると2021年に11.5%となりました。
過去の調査を見てみると、2018年13.5%、2015年13.9%、2012年16.3%(おてらおやつクラブが活動を開始し始めた頃、子どもの7人に1人が〜といわれていた当時の数字)です。経年の推移を見てみると、指標としては改善傾向にあることがわかります。
さらに今回の調査では、ひとり親世帯の貧困率は44.5%となっています。こちらも直近2018年の調査(新基準)では48.3%で、指標としては改善していますが、それでもいまなお半数近くが困窮にあえぐ状況が続いています。OECD加盟国の中でも3番目から8番目に改善されましたが、依然悪い状況となっています。
おてらおやつクラブでは今回の子どもの貧困率11.5%について、以下のように読み解いてみました。
1.「生活苦」と乖離する指標の改善
私たち事務局ではパンデミック期の世情を含み、今回の発表は指標の悪化を想定していました。しかし、発表はご紹介の通り改善という結果になりました。
よく言われるように、相対的貧困率、子どもの貧困率はあくまで貧困という社会課題を捉えるひとつの指標に過ぎないということに注意が必要です。指標測定は世帯の収入ベースでおこわれるため、今回の調査においては、コロナ関連の特別給付金や、扶養控除の改定により発生した収入増の影響を受けています。相対的貧困の指標を算出するために用いられる貧困ラインの年収をみてみると、今回の調査では127万円となりました。過去の調査では2018年が124万円、2015年が122万円と増加傾向にあります。
収入が増加しても、支出がそれ以上に増加していれば生活苦は増えていきます。昨今の物価高や光熱費増加など、支出面での影響を加味した生活実態はこの指標には現れてきません。そのことが、指標の改善と私たちに寄せられる生活苦の声との乖離となっているという考察です。
活動に寄せられる声にも、増大する生活費で貯金を切り崩し、また貯蓄がない状況で「おすそわけ」を求める声も少なくありません。
2.婚姻率の低下、少子化の影響
少子化が進んでいます。2022年の出生数は、厚生労働省の人口動態統計によれば、統計開始以来初めて80万人を下回る77万747人となりました。
少子化の要因は婚姻率の低下や社会の価値観の変化など様々ですが、その要因のひとつとして子育てにかかる経済負担があげられます。子どもを育てることに大きな経済負担があるため、そもそも「子どもを生む」という選択肢を選べない家庭が増えているのでは、と考察する学者もいます。結果、貧困線以下の世帯における子どもの数が減っているため、子どもの貧困率という指標が改善しているように見えるという見解は、感覚的にも納得できます。
3.おてらおやつクラブのこれからの活動について
"子どもの貧困率はご存知ですか?16.3%、実に日本国内において7人に1人の子どもたちが様々な事情により生活に困窮し、貧困状態にあると言われています。18歳未満の人口をかけ合わせれば280万人もの子どもたちが苦しんでいる計算になります。"
当初から私たちの活動を紹介するに当たり、子どもの貧困率のご紹介をしていました。
社会課題に興味関心を持ってもらい、その実態をお伝えしたいということでお話するメッセージですが、子どもの貧困率が年々改善されていくに連れ、このメッセージでは大事なことが伝えられないのではないかと感じています。
私たちはとくに生活に困窮するひとり親世帯への「おすそわけ」を行っています。ひとり親世帯に関して言えば、44.5%と実に半数が困窮しています。OECD諸国においても日本が突出している状況です。
引き続き、この実態を様々な形でお伝えするとともに、たとえ指標が改善されていったとしても、「○人に1人」の「1人」がいることに注目し、その「1人」がどんな暮らしぶりをしているのか、何に困っているのか、しっかり眼差しを向ける(想像力を働かせる)ことを続けていきます。
事務局に日々寄せられるお一人お一人の声。そんな声をみなさまにお伝えすることにより、数字では見えない困窮世帯の暮らし・困りごと・解決の糸口を知ってもらい「自分には何ができるだろう?」と一緒に考え、実践される方が増えることを願っています。
*困りごとを抱えるご家庭からの「たすけて」の声に十分に応えていくため、継続的に活動を支えてくださるマンスリーサポーターを募集しています。
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