テトラサイクリン系と歯牙黄染
総括
・特に8歳未満へのテトラサイクリン系抗菌薬はなるべく避ける
・必要性がある場合、ドキシサイクリンで治療開始することを検討する
テトラサイクリン系と歯牙変色に関するReview
Int J Dermatol 2004;43:709-715.
【機序・総論】テトラサイクリン系は、カルシウムイオンをキレート化し、歯などの石灰化している組織に取り込まれる。沈着量に影響を与える因子は、投与量、投与期間などである。歯の変色は、体重に対する投与量や薬剤によって、黄色、グレー、褐色など様々である。光の曝露により、黄色から茶色になりうる。
【胎児への影響】発育中の胎児に毒性(歯の変色、エナメル質低形成、骨成長抑制)を及ぼしうるため、妊娠中は禁忌である。テトラサイクリン系は胎盤通過性を有する。
【小児の歯への影響】歯の発育期に投与された場合、乳歯と永久歯の両方に変色とエナメル質の低形成を引き起こす可能性がある。乳歯の石灰化は生後14か月頃に完了する。永久歯の石灰化は出生後に開始し、親知らずを除いて8歳頃に完了する。そのため8歳未満への投与は避ける必要がある。
【成人の歯への影響】テトラサイクリンやミノサイクリンの長期摂取に伴う成人発症の歯の変色も報告されている。有病率はそれぞれ、テトラサイクリン3-4%、ミノサイクリン3-6%と報告されている。
【ミノサイクリンの歯への影響】消化管からよく吸収され、鉄とキレートして不溶性の錯体を形成するため、グレーの歯冠、黒い歯根、歯の着色を起こしうる。
【テトラサイクリン系抗菌薬と歯牙着色】
Red Book 2021-2024 p866
ドキシサイクリンは、テトラサイクリン系の中でカルシウムと結合しにくい。米国やヨーロッパの8歳未満へのドキシサイクリン使用の報告で、目に見える歯牙沈着やエナメル低形成を引き起こす可能性は低いと考えられている。よってAAP(米国小児科学会)は、患者の年齢に関係なく、21日以内のドキシサイクリン投与は使用可能である、というスタンスである。
ミノサイクリン添付文書(内服・点滴同様)
【適応菌種】肺炎マイコプラズマなど。
【適応症】肺炎など。
【注意】他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること。小児(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがある。※禁忌記載ではない。
※商品名:ミノマイシン
※日本では内服製剤、点滴製剤いずれもある
ドキシサイクリン添付文書
【適応菌種】クラミジア属など。マイコプラズマ記載なし。
【適応症】肺炎など。
【注意】他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること。小児等(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児等)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがある。※禁忌記載ではない。
※商品名:ビブラマイシン
※日本では内服製剤のみである。
マイコプラズマ肺炎 / 肺炎に対する、ドキシサイクリン治療
Red Book 2021-2024:投与量や期間の言及なし
Cherry:●
Long:●
日本小児科学会2013提言:言及なし
添付文書: 初日200mg/日分2、2日目以降100mg/日分1、期間言及なし
Lexicomp小児:2-4 mg/kg/日分2 10日間
Lexicomp成人:200mg/日分2、5日間〜
UpToDate:2-4 mg/kg/日分2 (max 200 mg/kg/日)、7日間