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【自治体視察】枚方市における健康経営の取組み

今回は、2025年1月10日(金)に自治体での健康経営の取組みを視察するために、枚方市に行ってきた内容をまとめていきます。
こちらの内容、Voicyでもお話しておりますので、合わせて見聞きしていただければと思います。

こちらのnoteでは、事前に先方に投げていた質問の内容を中心にまとめていきます。


○背景

健康経営の取り組みは民間(特に大阪府内)で盛んに行われている。健康経営に取り組み始めて経営状況が良くなったという事例は数多くある。社員が健康になり、仕事へのエンゲージメントが高まることで成果に結びつきやすいからだと考えられる。
一方、自治体では税収というものはあるが「売上」という概念がなく、健康経営の取組みを数値として見える化することが難しいように思われる。
枚方市では、2023年、2024年と「健康経営優良法人」に認定されているところから、以下の項目で質問を投げかけ視察を実施しました。


○枚方市の健康経営の取組みについて

①健康経営を取り組み始める契機とその時期

  • 取り組みを始める契機としてどのような出来事があったのか?

健康経営というものを知ったのは平成30年度頃で、令和元年には担当者レベルで健康経営に関わる部署(企画、健康福祉、保健所、職員課)で現状確認と、課題整理を行った。

その後、令和2年度あたりに、市長から「健康経営優良法人」の認定取得ができないか?という話があった。そこから、目的を「職員一人ひとりの健康維持・増進を図ることで、職場の活性化、公務能率のさらなる向上を進め、より質の高い市民サービスの提供につなげる」として、令和4年度から本格的に取り組みを進めている。

②健康経営宣言に至るまでの作業

  • 担当部署とそれにかかる人員はどれくらいからスタートしたか?

職員の健康経営の推進については、職員化の福利厚生係で担当している。保健師2名、事務職員4名の計6名の体制で、令和3年度以降実施している。

③健康経営優良法人として認定されるまでにかかった期間

  • 2023年に最初の健康経営優良法人に認定されているが、いつ頃から取り組みを開始したのか?また「健康経営宣言」の時期はいつ頃か?

令和3年度に、認定を受けている他の自治体の情報収集や、枚方市と包括連携協定を結んでいる民間事業者から助言を受けつつ、推進体制の構築の準備を進めてきた。
令和4年度に入り、認定取得のための申請書の作成に向けた取組みとして、「健康経営推進本部」を立ち上げ、6月に健康経営宣言の策定、発信を行い、10月に「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」の申請書提出を行った。
職員への健康診断未受診者への受診勧奨や、労働安全衛生法により実施が義務付けられているストレスチェックなどについては、認定取得などの健康経営を本格的に推進する前から実施している。

④健康経営について、行政職員へのっ情報提供とその理解度

  • 健康経営はトップの指示や音頭だけでは成り立たず、職員のセルフケア意識も非常に大事である。取り組みの初期と現在ではどのくらいの変化がみられるか

認定取得については、職員課から出ている事務連絡などで庁内周知に努めている。
メンタルヘルス対策として、職員のセルフケアの意識も非常に重要だと考えていて、人事担当課が参加を希望するものを対象としたセルフケア研修も実施している。
職員の意識の変化については、初期と現在でアンケートを実施していないので把握できてはいないが、民間事業者との連携で別途アンケートは実施を予定している。

⑤健康経営について、議会とのやり取り

  • 健康経営の取り組みについて議会への説明はしているのか

令和4年2月の総務委員協議会において、「健康経営の推進」を案件として、枚方市も一事業者として、令和5年度の健康経営優良法人の認定取得をめざし、健康経営を推進します、という報告を行った。

  • また、質疑がある場合、どのようなやりとりがあったか。

令和4年6月定例月議会の一般質問で「健康経営を推進する上で、職員の禁煙対策についてどのように取り組んでいくか?」という質疑があった。

他にも、がん治療が必要となったときの治療と仕事の両立支援についての質問がもあった。枚方市にも制度はあり、職員にとっても安心材料になると思う。

⑥健康経営の取組みによる変化

  • 市職員の健康状態の変化

健康状態が良化したと言えるものはまだない状況。ただ、令和5年度の定期検診受診率は過去10年間で最高の値(R5 97.3%)であり、健診の重要性は浸透しつつあると感じている。
また、市内の企業向けに健康経営を推進している健康づくり課が主催する健康講演会に職員も研修として参加可能とし、数名~十名程度と多くはないものの参加を希望する職員がいて、健康意識、ヘルスリテラシーの向上に役に立っていると考えている。

  • 市職員のメンタルヘルスの変化

全国的にはメンタルヘルス疾患による休職者が増加傾向といわれてるが、枚方市は特に増加の傾向は見られない。

ストレスチェックの受検率も高く(R5 95.9%)推移していて、一定の高ストレス者はいるが、回答結果はその秘匿性から率直に回答してもらっていると考えている。
高ストレス者には健康管理医の面談だけでなく、秘匿性の視点から面談を躊躇することも想定し、委託業者のカウンセラーによる面談も受けられる。毎年、健康管理医に20~30名、カウンセラーに40~50名程度が面談を受けている。

  • 採用、離職に関する反応

現状では直接採用や離職に関する反応に結びついているかは不明。令和6年度の採用に向け、職員採用セミナーを開催した際、健康経営優良法人を取得していることを紹介している。
また、市のウェブページにおいて、健康経営優良法人を取得し、ワークライフバランスの推進やメンタルヘルス対策など、健康経営に係る取組みを進めていることを掲載することで、市職員、職場環境の特色・魅力の発信にもつながることを期待している。

○視察を終えて

まずは、約1時間半にわたる時間を割いていただき、枚方市の職員へ感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

質問にも事前に回答を作成いただいていましたので、中身を深く理解することができました。人の健康は”一日にしてならず”であり、なかなか目に見えて数値の改善は見られないと思いますが、昨今のメンタルヘルスで体調を崩される方の増加傾向の中、現状維持ができていることでも効果があるのではないかと思います。

また、心身ともの健康を維持することで、休職者・離職者が減ることは財政的にも技術や知識の継承の面からとても意味のあることだと思います。
一旦途切れたものを穴埋めするためには、多額の支出が伴いますし、失われた技術や知識を挽回するのは至難の業です。

健康維持の取組みはどの組織でも行われていると思いますが、客観的な評価の入る「健康経営優良法人」の取得に取り組み続けていることはとても素晴らしいことだと思います。

メンタルヘルス対策についての取組みはなかなか難しいところがありますが、枚方市では門戸は開かれており、全体の数%ではあるものの利用者がいることは良いことだと思います。
日本人はなかなかメンタル不調に陥る前にカウンセリングを活用することは少ないですが、多くの方が利用することで敷居が下がり、健全な状態を維持できるように引き続き努めてほしいなと思います。
また、カウンセリングはメンタル面だけでなく、キャリアデザインの面でも重要視されているのでその点もお伝えできたかなと思います。

能勢町ではまだ健康経営としての取組みはされていませんが、一つひとつできることから改善し、人的資本の評価の観点からもそれらの状況がわかるように取り組んでいきます。

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