このnoteで目指すもの
太田幸夫 略歴
デザイナー。1939年、愛知県生まれ。多摩美術大学卒。同研究科およびイタリア国立美術学院修了。東京造形大学、ピクトリアル研究所などを経て、多摩美術大学元教授、日本サイン学会元会長。著書に国際本『ピクトグラム〔絵文字〕デザイン』(柏書房)、『サイン・コミュニケーション』(全2巻・共編著・柏美術出版)、『コミュニケーションデザイン』(全5巻・共編著・遊子館)など。非常口サインの国際規格化、避難誘導サインシステムの研究開発に尽力。
関係のデザイン
人間は色、形、光、動きなど視覚的シグナルをうけて、或いは文字に代表されるシンボルなどを手掛かりに、環境を情報(意味の集積)として識別、認知、判断、評価して行動します。それはアメーバーが温度、光、酸、アルカリを識別・評価して、食べ物を捉え、敵から逃れて生存するのに似ています。
「関係のデザイン」は「人と人の関係」を整える話し言葉や書き文字のような言語インターフェースと、「人とものの関係」を整える車・カメラ・パソコン、アイロンなど機器類の操作用アイコン。「人と環境の関係」では、街区案内サイン・トイレ、避難誘導サインなど、すべての人に、いつでも、どこでも多くの関わりを持っています。太田のデザインは多くの場合、ピクトグラム(絵文字)を開発し、インターフェース(媒体)として、活用するところに特徴があります。
私が手掛けてきたサイン・コミュニケーションデザイン、つまり「関係のデザイン」の例として次のようなものがあります。
世界の政策担当者に、国際相互依存の重要性を見取ってもらう絵ことばのデザインだったり、国連大学の理念と実践を、ジョン・レノンの名曲「イマジン」のBGMを聴きながら楽しく理解できる、世界初のコンピュータアニメーションも紹介します。
名古屋の都市ゴミを機械が自分で選別して、火力発電の燃料を創るプラントの仕組みを見学者に理解させたり、あらゆる薬の正しい服用法を、世界の人にわかりやすく示したり、危険が伴う世界の職場での安全確保や、暮らしの場での防災対策の手立てなど、すべての人の日常生活と切り離せないものを多数デザインした成果です。
誰でも1時間でマスターできる、形、意味、発音が一体化した絵ことばLoCoS:普遍的な理解を促進するグローバルなコミュニケーション・システムも開発しました。5歳から11歳の子ども30名のLoCoS講座を開いたところ、単語の形と意味もすぐ理解して、文章を作ったり、発音の仕組みも使って名前を書いてくれました。「LoCoSがおもしろい」と書かれた印象カードもたくさん提出されました。
講談社の依頼で300頁の本にしてから50年目にあたる2023年には、あなたの助言で、あなたと一緒に、LoCoS を完成させたい。
この度ドイツの「サインの世界」展で、請われるまま出展した唯一の条件は、LoCoSの基本構造の是非を会場でアンケート調査して、その集計結果を日本に送ってくれることに、美術館が了解したからです。日本にその調査結果が届いたら、ご覧いただきます。同様の調査を数カ国で実施し、その結果を踏まえて、みなさんと一緒に、誰でも使えるようにしたいと思います。
長年培ってきた認識と多様な実践に助言、あるいは軽いつぶやきを皆さんからいただいて進化させながら、可能な限り社会資産に育てたい。それは全ての人が希求する共通の課題に対して、有効な手立てになるはずです。
これまでは産官学に身を置いて尽力してきました。3.11の大災害以後は、軸足を民間に置き直しました。これからは組織でなく、生活する個人に座標を置き直したい。ブログはそのための有効なネットワークのシステムです。人と物と環境における「関係のデザイン」が、このnoteによって、一人一人の満足の共通性に向かう可能性を予感できるからです。
このnoteでは、「関係のデザイン」の事例を中心に展開し、11名の協力者も、折々、紹介させていただきますので、どうぞご期待ください。
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