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形の良し悪し -1

ブログの話題として“形の良し悪し”についても書いて欲しい、との声を耳にしますので、形の種類と目的を明確にした上で取り上げてみたいと思います。

日英2ヶ国語で1987年、『Pictogram Design』(太田幸夫著、柏書房刊、定価20,000円)を刊行しました。コンピュータも自由に使えない時代に、写植の文字を手貼りして仕上げた版下のページ数はA4サイズ800ページでした(約8cmほどの厚さ)。協力者メンバーは延べ30名で10年の時間をかけました。本の流通では最大手の日販が、初版4,000冊を買い取って、豪華本として欧米で販売したので、すぐに重版が求められました。「学生の教科書としてあまりに高価なので、定価を下げるなら重版もあり」と申し上げたところ、出版社の判断で、最後の12章資料編を削除し定価5,500円で、現在でも入手できます。35年後の現在でもこの一冊は世界で唯一、ピクトグラムの教科書です。

その中で、歴史に現れたすべてのピクトグラムを列記し、その役割を9種類の年表にまとめました。現代になって初めて現れたピクトグラムの役割:「案内・誘導」「指示・操作」「注意・警告・禁止」「安全・衛生」が、一眼でわかる図表になりました。

左:1970年大阪万博「迷い子案内所」(デザイン 福田繁雄)
右:代官山ヒルサイドテラス「契約済み駐車場」(デザイン 太田幸夫)

「象徴」「証明・認証」の機能や「伝達・記録・表示」「識別・分類」や「教育・啓蒙」などの役割を持つピクトグラムは、古代から現代までを通して、拾うことができることも年表で分かるのです。「形の良し悪し」で扱う形の事例は、以上9種類の役割を果たすものに限定します。広告のための形、イラストの形、アートの形などは対象にしません。

「国際標準化100周年記念事業」シンボルマーク(デザイン 太田幸夫)

「形の良し悪し -1」の最初の例は2006年、国際標準化100周年記念事業シンボルマークで太田幸夫デザインです。電気標準会議(IEC)と国際標準化機構(ISO)の合同委員会にも永年協力してきたので、太田が指名されたのでしょう。1997年には、ISO創立50年の記念ポスターも太田がデザインしています。

今回のテーマを形にする時、今後の100年を見据えることが趣旨でありながら、設立以来の100年を踏まえた今後がどのように同じであり、同じでないか、二つの円をシンボリックな対比関係でデザインすることにしました。左の円の中は地球、右の円の中は小さくなりすぎた地球が肉眼では見えない広大な宇宙。地球と宇宙という二つの立ち位置の違いによって、これまでの100年と今後の100年を対比させました。それが妥当な証拠として、近年のISOも、それまでなかった「水」とか「空気」を中心とする環境マネジメント関係(ISO14001など)が、最も重要視されるようになりました。これからの100年では、地球を含む宇宙に対応することが最優先になることをシンボライズしているのです。

地球を取り巻く円と宇宙空間を取り巻く円の大きさには、サイズの違いを盛り込みました。ただしそれは左右の円の中のスペースの違いであって、地球と宇宙のサイズの違いを意図的に作り出しながら、黒い外円のサイズ自体は同じです。黒い2つの円形サイズは同じで、地球と宇宙のサイズは同じにしなかった。このシンボルマークの形としての良さは、太い円形の枠のサイズを変えないで、その中の地球と宇宙の大きさだけを変化させたところにあります。

なぜ地球と宇宙の大きさに差をつけて、サイズを変化させたかについては、次の一言を読む以前にわかっていた人は、形の良し悪しに関しての理解と認識の一部を体得している人と言って良いでしょう。2つの円の中の地球と宇宙は、このように大きさを変えても、視覚心理的には同じ大きさの働きをするのです。それだけ宇宙の白い円は印象も強く、中心テーマであることを余すところなく表現しているのです。最後にひとこと言い足せば、100の3文字のかさなりも重要で、これ以上離しても重ねても、全体が壊れてしまうのです。

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