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【ハースストーン昔話】エレメンタルシャーマンというデッキのこと②【3万字超】
1.はじめに
こんにちは。前回、ウンゴロ期のエレシャーに関する記事を書いた者です。
今回はウンゴロ期よりも後、特にウィッチウッドからエレシャーのパーツがスタン落ちして実質使用不可になるまでの1年間の話をしていこうと思います。
筆者がエレシャーというデッキをどれほど好きで、どんな想いを抱いて使っていたのかは上の記事に書いた通りです。
この記事で話すのは、ウンゴロよりも後の拡張版によって強化されたエレシャーです。
少なくともウィッチウッドからの1年間は、自分にとってエレシャーが最も楽しい時間でした。追加されたカードやスタン落ちなどの要素もかみ合って、環境トップではなくとも十分戦っていけるくらいの強さにはなっていたと思います。
ウンゴロ期の半ば悲しみを背負っていたようなエレシャーを知っている自分からすると、惚れ惚れするほどの変わり様でした。
そこまで言わしめるほどの、エレシャーを取り巻く環境の変化とはどんなものだったのでしょうか。
順を追って、話していこうと思います。
ただ、書いているうちにどんどん書きたい話が膨らんできてしまい、気づいたら3万字を超える超長文になってしまいました……。
しかしその分内容は充実したものになったと思うので、よろしければ空いた時間にでも少しずつ読んでみてください。
2.「騎士団」「コボルト」時代 ~インフレとボーンメアの呪い~
えー、こんな書き出しをしておいてなんですが、一つ謝らなければならないことがあります。
私は「ウンゴロ」の次の拡張版である「凍てつく玉座の騎士団」とその次の「コボルトと秘宝の迷宮」環境において、一切エレシャーを使っていませんでした。ごめんなさい……。
この記事のメインとして紹介したいエレシャーのデッキは「コボルト」よりさらに次の拡張版となる「妖の森ウィッチウッド」からのものです。
ハースストーンそのものをやっていなかったわけではなく、もちろんこれには深い理由があるのですが、それを話すにはまずハースストーンの拡張版がどういうものなのかを知ってもらわなければなりません。
どっちみち、これらを知っておいた方がエレシャーの話もしやすいと思いますし、元々知らない人は勿論、当時プレイしていた人でも7年前の拡張版の名前や順番を完璧に覚えているという人はあまりいないと思うので。
ハースストーンには4月・8月・12月の1年に計3回拡張版がリリースされます。エレシャーが生まれた「ウンゴロ」が2017年の4月にリリースされているので、
2017年
4月:大魔境ウンゴロ(ここでエレシャー誕生)
8月:凍てつく玉座の騎士団
12月:コボルトと秘宝の迷宮
2018年
4月:妖の森ウィッチウッド
8月:博士のメカメカ大作戦
12月:天下一ヴドゥ祭(ここまでエレシャーが使えた)
のような形となります。
そしてハースストーンには「スタン落ち」という制度があり、一定以上古くなったカードはメインとなるフォーマットで使用できなくなります。
そのタイミングは何月に実装されたかに関わらず、リリースされた年の2年後の4月の拡張版が出るのと同時です。
例えば「ウンゴロ」時点の環境では、ウンゴロの他に2016年に実装された3つの拡張版(「旧神のささやき」「ワン・ナイト・イン・カラザン」「仁義なきガジェッツァン」)のカードが使用できました。
そして「騎士団」「コボルト」の実装時には使用不可になるカードはなく、翌年4月の「ウィッチウッド」の実装の際に2016年の3つが一気に使用不可になるという形です。
エレシャーの主要パーツは「ウンゴロ」に集中しているため、「ヴドゥ祭」の次、2019年4月の拡張版が出ると同時に実質的にエレシャーは使用不可になるということですね。
察しのいい方は気づいたことでしょう。
この仕様上、ハースストーンでは4月にカードプールが一番狭く、12月に一番広くなります。
「ウンゴロ」の時期はカードプールが狭く、比較的デフレした環境でした。「レノ・ジャクソン」「ソーリサン皇帝」「ジャスティサー・トゥルーハート」等がいなくなったことにより、めちゃくちゃな防御力・持久力を持つようなコントロールデッキが存在せず、遅めな割に大した爆発力もない初期のエレシャーでもなんとか戦えていたと言えます(エレシャーは対アグロの方が比較的得意です)。
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完全に回復する←?????
その証拠に、ウンゴロ環境でも「相手が本領を発揮する前に攻め切る」ことを求められるデッキは大の苦手で、クエスト達成という実質的なタイムリミットがあるクエストローグ、「ドラゴンファイア・ポーション」によりどうあがいても盤面を取られるドラゴンプリーストの二つは「当たったら諦める」レベルでした。
逆に意外にも、史上最強(当時)レベルのアグロデッキと言われた海賊ウォリアーには有利を取れていました。もちろん引き次第では普通に負けますが……。
ともあれ、ウンゴロ環境の比較的デフレしたカードプールでなら、かろうじてエレシャーもやれていたわけです。
2-1.「騎士団」環境 まさかの実質新カードゼロ
しかし当然、新カードが追加されればそうもいかなくなります。
前述の通り、8月と12月の新拡張のタイミングでは使用不可になるカードは存在せずカードプールが純増となるため、当然周囲のデッキも相応に強化されます。
しかも「ウンゴロ」の次の拡張版となる「凍てつく玉座の騎士団」では、各ヒーロー(プレイヤー自身が操作するキャラ)が闇堕ちしたデスナイトという存在になる「ヒーローカード」というものが実装されました。
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台詞がマジでかっこいい
この「ヒーローカード」は、使うと自分のヒーローが置き換わるというユニークなもので、試合中盤や終盤からこの「デスナイト」化したヒーローに変身し、強力な雄叫び効果やヒーローパワー(カードを消費せず毎ターン2マナで使用することができる能力)によって圧倒することができるデザインになっています。
例えばこのデスナイト化したジェイナは、「敵1体に1ダメージを与え、対象が死亡した場合3/6のエレメンタルを出す」というヒーローパワーを毎ターン手札消費なしで使うことができます。
さらに雄叫び効果によって自分のエレメンタルに生命奪取という、与えたダメージ分ヒーローの体力を回復する能力を付与しているため、端的に言えばこいつに変身された時点で無理やりライフを詰めて勝つプランはほぼ不可能になります。その上で毎ターンのように無料で3/6が出てくるため、盤面で勝つのも難しくなります。
勝ち筋があるとすればそれを超える圧倒的な盤面を築いて圧殺するか、デッキ切れまでもつれ込んでリソース差で何とかするくらいです。まあ、自分もデスナイト化すればやりようはあるのですが……。
因みに「エレメンタル」という言葉が出てくるので知らない人には勘違いさせてしまったかもしれませんが、これはメイジのカードであるためエレシャーでは使えません。
何でシャーマンではなくメイジにエレメンタルシナジーを寄越すんですかね……しかもこの弾でのシャーマンの新カードは……(後述)
この「ジェイナ」だけを見ても「ヒーローカードは出されるだけでロングゲームが相当にきつくなる」というのは理解してもらえると思います。
この「騎士団」パックではヒーローカードが全クラスに実装されました。つまりこんなのがうようよいる環境になってしまったわけです。
中には「2ダメージ与える。カードを使うたびに再使用可能になる」というヒーローパワーと「自分のヒーローパワーを0コストにする」というカードを組み合わせて0マナになったヒーローパワーを顔面に撃ちまくり、引きが良ければ10ターン目付近でワンキル級のダメージを出してくるラザカスプリーストなんてデッキもありました。
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普段から悪行しといてよく言う
エレシャーが馬鹿正直に7マナ、8マナでコスト相応かちょっと強いくらいのエレメンタルを出している間に、相手はヒーローカードやその他の強力な新カードでコスト無視の宇宙ムーブをしています。
他にも「拡がりゆく虫害」「究極の浸食」「魔蝕の病霜マルフュリオン」「ボーンメア」等で理不尽なほど盤面を取る力が強く、隙あらば「蓮華紋」で全体バフをしてくるミッドレンジのドルイドなども強かった記憶があります。
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最初5コスだったけど強すぎてナーフされた
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5ドローって何????
こんな環境で、少なくともウンゴロ期と同じ非力なエレシャーではとてもやっていけません。
他のデッキが強力な新カードをもらっているのと同じように、エレシャーにも強い新カードがあれば……
![](https://assets.st-note.com/img/1732358395-fkv0nU78NgCL5SMu3KOriPeJ.png)
……なぜか、この時の拡張でシャーマンに渡されたのは謎の凍結シナジーでした。
そんなシナジー今までなかったし、元々シャーマンに凍結効果を持つカードが豊富にあったわけでもなく(何枚かはありましたが別に強くない)、結局新カードも何をさせたいのかよく分からないデザインでデッキとして成立しているか怪しいレベルでした。この「ムウラビ」もそうですがそもそも全体的にパワーが足りておらず純粋に弱かったというのもあります。
結局失敗だったと開発が認めたのか、以降にこの凍結シナジーのカードが実装されることはありませんでした。当然「凍結シャーマン」なんてデッキを使ってる人も全く見かけませんでした。マジでなんだったんだ……。
言ってしまうと「凍てつく玉座の騎士団」において、エレシャーに採用できるようなカードは1枚たりともありませんでした。今カードリストを見返しても本当に1枚もなかったです。
それはつまり、周りがかなりの強化を受けている中、ウンゴロ環境ですら強くなかったエレシャーを、完全に据え置きの性能のまま使うことを強いられる状況だったということです。正直言って無理です。
上記のように「騎士団」パックでのシャーマンは謎の凍結シナジー推しで新カードの枠をかなり食われてしまい、同時に「エレメンタルシナジーの効果はウンゴロ特有のもの」という認識だったのかエレシナジーを持つカードは全く追加されませんでした。
まあこれは「各パックごとの特色」を重視していると思われるハースストーンではよくあること(1拡張限りのキーワード能力とかよくあります)なのでまあ良いです。シナジー効果を持たずとも、純粋に優秀なカードがエレメンタル種族を持っていればエレシャーの強化にはなるので。
問題はエレメンタル種族を持つカード自体がほぼ追加されず、かろうじて追加されたのもこんなんだったことなんですが……。
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ウンゴロで「エレメンタル」という種族を追加したのを忘れたのか?ってレベルで、エレメンタルとそのシナジーカードは放置されていました。
なら、エレメンタル以外の新カードで使えるものはなかったのか?というと、それも難しいです。
前回の記事で書いた通り、エレシャーはエレメンタル以外のカードを入れすぎるとすぐに回らなくなってしまう特性があるため、よほど強かったり、エレシャーの動きを邪魔しないようなカードでないと採用できません。
しかもシャーマンの固有カードは謎の凍結シナジーに枠を取られていたため「汎用的で使いやすい除去呪文が追加されて実質強化」みたいなこともありませんでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1732374699-QiGexsno2WE3OhDJX517zgLS.png)
ここまで敢えて言及を避けてきましたが「シャーマンのヒーローカードはどうなの? 強いんじゃないの?」と思った方もいるでしょう。
確かにエレシャーもヒーローカードの恩恵を受けることができればロングゲームに強くなり、インフレした「騎士団」環境でもなんとかやっていけたかもしれません。
いくらエレシャーが不純物を許さないとはいえ、1枚でゲームを変えられるほどの影響力を持つカードをデッキに1枚採用するだけなら(それがコストの重いカードだったとしても)気合で何とかすることはできます。
ですが、シャーマンに与えられたヒーローカードは……
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味方のミニオンを、よりコストの高いランダムなミニオンに変身させるという、所謂「進化」と呼ばれている効果を前面に押し出したものでした。ヒーローパワーも、味方1体を「進化」させるものです。
ただこれ、使ったことのある人は分かると思いますがかなり運要素が強いです。進化先は当たりもいれば露骨なハズレもいますし、そもそも「進化先は〇コストが当たりが多くて強い(6か8が強かった記憶)」などの知識を持った上で、そのコストに進化できる進化元を用意できる専用構築にでもしていないと安定して恩恵を得るのは難しいギミックでした。
運が悪いと弱くなることもあり、強くなったとしてもコスト相応の働きをしたかと言われると微妙だったりもします。楽しいのは間違いないんですけどね……。
環境でこの「進化」ギミックが使われたことはありますが、それは「ドッペルギャングスター」という、これ以上ないほど相性の良いカードがあってのことです。
6マナで盤面に6コストのミニオン3体を生成できる「ドッペル進化」と呼ばれたコンボは強かったですが、正直それ以外の使い方はあまり強くなかった印象です。
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「3人に見えるか」は空耳だよ!よく聞いてね!
少し話が逸れましたが、結論から言えばシャーマンのヒーローカードはエレシャーに採用できるものではなかったということです。
前述した凍結シナジーほど悲惨なものではなかったにせよ、他のヒーローカードと比べて明らかに汎用性が低くクセのあるカードなのは間違いなく、少なくとも最初に挙げた「ジェイナ」のように、1枚でロングゲームが格段に強くなるようなものではないです。
このカードそのものを批判するつもりはないですが、エレシャー目線だとこの結果はがっかりとしか言いようがありません。他のヒーローカードのような強さを持っていたら、もしかしたら少し違う未来もありえたのかな……と今になっては思います。
というか、凍結シナジーと言い「進化」ギミックと言い、この時のシャーマンは開発の遊び道具になってたんですかね? さすがにもう少しまともなカード渡してやれよ……とカードリストを見て思ってしまいます。
そんな感じで、「騎士団」ではまさかの実質新カードゼロの上に周りはインフレしまくりという、あんまりな仕打ちをエレシャーは受けてしまったのです。
2-2.「ボーンメア」に死体蹴りされるエレシャー
ですが、エレシャーを襲った悲劇はまだあります。
それはこの「騎士団」パックのダークホースとも言える存在だった「ボーンメア」というカードが大きく関わっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1732377796-FM5PcSsC6OngGKqmdR0k1z8t.png)
一見よくあるシンプルな効果のコモンカードで、注目に値しないようなものに見えるのですが、蓋を開けてみるとこのカードは強すぎました。
7コストという遅すぎないコスト帯から+4/+4という強烈なバフを掛けられ、何より既に召喚酔いの解けているミニオンにバフを掛けてそのまま殴りかかってくるのが本当に強かったです。
例えば3/3くらいの小型を1体放置しておくだけで、急に7/7のデカブツになって(おまけに挑発もついて)殴ってくるのです。地味に本体も5/5という結構なサイズを持っているのもいやらしいです。
どのクラスでも使える中立カードであり、特に何かしらのシナジーを持つわけでもないため速度帯さえ合っていればあらゆるデッキに採用できる異常な汎用性も特筆すべき点です。
少し話したミッドレンジのドルイドが特に上手く使っていた印象ですが、その他にも複数のデッキが使っていたと記憶しています。
あまりに強かったために、後に8コストになるナーフを受け環境で見る機会はなくなりました。
さて、このカードが強いのは分かってもらえたかと思いますが、これがどうエレシャーに関係するのでしょうか。
一言で言えば、このカードはエレシャーの主力カードであった「ブレイズコーラー」を食ってしまったのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1732378583-hXDCf0j9IYKZx4GQMagb1Hn2.png)
(当時は7コスです)
同じ「7コストで、本体もそれなりのサイズを持ちながら、盤面に干渉することのできる強力な雄叫び効果を持つカード」として、役割が被っています。
もちろん細かい違いはあり、上位/下位互換のような関係では決してありませんが、総合的に見れば間違いなくボーンメアの方が強いです(エレシナジー条件を無視したとしてもです)。
特に相手の盤面に大したミニオンがいない場合が顕著で、ボーンメアはバフを掛けながら相手の顔面を殴ることでライフに圧を掛けながら強い盤面を形成できますが、ブレイズコーラーの場合は「しょぼい小型に5ダメージをぶつける」か「損を承知で顔面に5点入れる」しかありません。ブレイズコーラーの性質上、雄叫び効果が盤面に残らないものなのが痛いです。
もちろんボーンメアは「味方に1体もミニオンがいないと使えない」という明確な弱点こそあるものの、このカードを使うようなミッドレンジデッキでそんな状況は稀です。バフを掛ける相手が特定の種族でないといけないとか、そういった縛りもありませんしね。
少なくともエレシャーは6ターン目に「ファイア・エレメンタル」を出しているはずだし、それでなくとも7ターン目以降はエレシャーで一番強い時間帯です。「ボーンメアを持っているけどバフを掛ける対象がいない」という状況には基本ならないであろうと思います。
つまりこの「ボーンメア」というカードはエレシャーにおける「ブレイズコーラー」の採用意義を奪ってしまったのです。
早い話が「ブレイズコーラー使うくらいならボーンメアでよくね?」です。
エレシャーが過酷なエレシナジー条件を突破してやっとブレイズコーラーを使っているのに、その横でボーンメアは何の条件も縛りもなく同じ以上のパワーを発揮しています。馬鹿馬鹿しいったらないです。
そして何より、「エレシャーはボーンメアを使いたくても使えない」のです。エレシャーに非エレメンタルかつ7コストのカードを2枚も入れる懐の深さなんてありません。
ボーンメアの性能自体はエレシャーの戦い方とかなりマッチしており、正直「使わない理由がない」レベルですが、残念ながら「エレメンタルではない」という一点でエレシャーにおいては採用できなくなってしまいます。
エレシャーはボーンメアよりもはるかに重い条件をクリアした上で、ボーンメアより弱いと言って差し支えない性能のブレイズコーラーを重宝するしかないのです。こんなでもブレイズコーラーは、エレシナジーのカードとしてはかなり優秀な方だったのだから笑うしかありません。
「ボーンメアは超強いし超使いたい」「でも使えない」「それどころか劣化品に近いものをありがたがるしかない」という有様です。
前述した「周りのインフレに置いていかれる」という現象とは別に、こんな悲劇が起こっていたのです。
いくら筆者がエレシャー大好きと言っても、新カードで一切強化されずに時代に取り残された上に、使うと「ボーンメアのが強いじゃん」と論破されるデッキを使い続けるほど変態ではありませんでした。
「騎士団」環境におけるエレシャーがどれほど悲惨だったのか、分かっていただけたと思います。誰よりもエレシャーを好きな自信のある自分でも、この時ばかりは使うのを諦めました。
結局ボーンメアは8コストにナーフされ、ブレイズコーラーと比べる必要もなくなったのでこの問題は一応解消したのですが、その頃には次の拡張も近づいていました。
2-3.「コボルト」環境でも大した改善はされず
「騎士団」の次の拡張「コボルトと秘宝の迷宮」ですが、この時も状況はほぼ同じでした。
繰り返しになってしまうので詳しくは語りませんが、まともな新カードもなく、インフレに置いていかれる結果になった形です。
当然この「コボルト」実装時もカードプールは純増だったため、周りのデッキは騎士団環境の時よりもさらに強力になりました。ますます無理です。
ただ、「騎士団」の時と違う点として、一応今回は「世界揺さぶるグランブル」「ざわめきのエレメンタル」という、エレシャーに採用できそうなカードが(2枚だけですが)存在していたというのはあります。
ただはっきり言って「今さら2枚追加程度でどうしろと」と言いたい感はあり、開発がエレメンタルデッキをまともに強化する気がないのも透けて見えていたので、とどめを刺されたどころか死体蹴りされている状態のデッキをこの2枚だけで使う気にはなれませんでした。
結局「ヒーローカードを使ったロングゲームに付いていけない」のは変わりませんしね。
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ですが、ここに関しては私が試す前に諦めてしまっていた部分も大きく、騎士団環境よりかは幾分可能性があったと言えるでしょう。
なぜならこの2枚は後々復活を遂げるエレシャーにとって、かなり優秀なカードだったからです。
もしかしたら、コボルト環境ではエレシャーはまだ戦えたのかもしれませんが、今となっては分かりません。今思うと諦めずに色々試しておけばよかったとも思います。
もしかしたらこの時にエレシャーを使っていた人がどこかに……いないですよね……。後述しますが、「グランブル」はともかく「ざわめき」の強さに気づいていた人は自分くらいのものだったので……。
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実はコボルト出身でした
3.「ウィッチウッド」期 復活のエレシャー
さて、エレシャーがまともに使えない時代の話が思いの外長引いてしまいましたが、これからが本題です。
「コボルト」の次の拡張「妖の森ウィッチウッド」で、エレシャーは復活を遂げました。
これ以降のエレシャーはウンゴロ期の悲しい性能が嘘のように生き生きとしており、使っていても環境で十分戦っていけると感じられるパワーを持っていました。
比較的プレイングが結果に与える影響が大きく、勝つも負けるも「自分の実力」だと感じられる中々に歯ごたえのあるデッキで、使っていてとても楽しかったです。また、他のデッキにはないエレシャーならではの強みも複数あり、そういう意味でも本当に優れたデッキでした。
自分のリストを有名プレイヤーが使って広めていたら、普通に環境入りしてたのではないかと思ってしまうほどです。もちろん実際のところは分かりませんけどね。
そんなエレシャーの華々しい復活の軌跡を、綴っていきます。
3-1.スタン落ちがほぼノーダメージだった
まず一番大きな要因はこれです。
2018年4月の拡張である「ウィッチウッド」実装と同時に、2016年に実装された3つの拡張「旧神のささやき」「ワン・ナイト・イン・カラザン」「仁義なきガジェッツァン」は使用できなくなりました。
特にコントロール寄りのデッキで切り札として使われたり、コンボによってエレシャーでは到底巻き返せない状況を作り出してしまうカードがかなりの数減ったのが追い風でした。具体的には「頽廃させしものン=ゾス」「希望の終焉ヨグ=サロン」「翡翠の偶像」「カザカス」等です。
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最終的に1コスで10/10とか出るよ!
対してエレシャーが失ったカードは「メイルシュトロームのポータル」くらいで、それも重要カードというわけではありません。前回の記事で載せたデッキリストを見てもらえばわかりますが、他のカードは全てスタン落ちの影響を受けないものでした。
主要カードのエレメンタルが基本ウンゴロ産なおかげでエレシャーは弱体化とは無縁で、相対的に強化されたと言っていいです。
3-2.待望のヒーローカード「魔女ハガサ」
ついに、ついにです。
「ウィッチウッド」で実装されたシャーマンの新しいヒーローカード「魔女ハガサ」により、エレシャーの持久力が大幅に強化されました。
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お前がいなきゃエレシャーは終わってた
雄叫び効果の全体除去もさることながら、ヒーローパワーが「ミニオンをプレイする度に、ランダムなシャーマンの呪文を1枚手札に加える」という効果を持っており強力でした。
一度変身してしまえば、リソース切れとはほぼ無縁になります。加えてエレシャーはその性質上、デッキのほとんどがミニオンのため相性も良く、ハガサが8コストの非エレメンタルであることを加味しても十二分に採用する価値のあるカードだと言えます。
「ハガサ」を使っている時点で8ターン目以降であることは確定なので、ヒーローパワーで手札に加えた呪文を使っても、同じターンにエレメンタルを出すマナがないという状況は基本起こらず、エレシナジーを切らさないまま持久戦が可能でした。
元々エレシャーは8ターン目より前に勝負を決められるようなデッキではないので、「ハガサ」を使うターンにエレシナジーを維持しづらいこと以外はほぼ全てが噛み合ったカードでした。
他のクラスが騎士団環境からずっと使っていた「ロングゲームに強くなるヒーローカード」を、シャーマンは年をまたいでようやく手に入れたのです。
(というか、ウィッチウッドでシャーマンだけ急に2枚目のヒーローカードが追加された辺り、騎士団の時の「告死隠者スロール」が微妙な性能でかわいそうだと思ってくれたんでしょうか……?)
また、ウィッチウッドには「大地の力」というエレメンタル種族をサポートする呪文も収録されていました。エレシャーに今までなかったバフカードかつエレメンタルをデッキ外から補充する効果もあり地味ながら優秀でした。
2コストと軽いため呪文カード(=エレメンタルではないカード)が採用しづらいエレシャーの事情とも噛み合っており嬉しい存在でした。
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このような新カードに加え「コボルト」の時に密かに(?)獲得していた「グランブル」「ざわめき」を合わせ、生まれ変わったエレシャーのリストがこちらです。
「ウンゴロ」から1年、ようやくエレシャーが輝ける時代が来たのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1732866274-5UKvHfCryXazwFcIYZS0ni7J.jpg)
元々長所だった「序盤の挑発ミニオンの硬さ」「中~終盤にかけての大型エレメンタルの連打」という部分はそのままに、新カードによって持久力・決定力が大幅に強化されました。
また、当然ながらエレメンタルの枚数も22枚と十分なくらい確保し、常にシナジーの起動ができ「エレメンタルデッキ」として胸を張れる動きが可能です。しかもそれがしっかり強いのが嬉しいところです。
ではここからは、この復活したエレシャーの強みや、このリストでの採用カードや不採用カードについて解説していこうと思います。
4.新生エレシャーの強み
4-1.持久力があり、かつデッキ切れが遅い
かつてのエレシャーは、リソースを補充する手段が「カリモスの下僕」くらいしかなく、基本的には「手札がなくなる前に勝たないといけないデッキ」でした。
そのため、対アグロはともかく対コントロールになると攻めを全てしのがれて負けることが多かったです。エレシャーの主力は高コストのエレメンタルで、コントロール相手に守りを許さないような速度は決してなく、かといって守りを突破できる爆発力や持久力もなかったので厳しい戦いを強いられていました。
しかし、新しくなったエレシャーは違います。
前述した「魔女ハガサ」を始め「大地の力」や、多少変則的ですが「世界揺さぶるグランブル」、登場は次の拡張になりますが「荒ぶる雨雲」など、リソース力を強化してくれるカードを多数獲得しました。
また、「ハガサ」以外ではデッキ外から持ってくるカードは全てエレメンタルのためシナジーの邪魔もしません。それどころか2枚目の「カリモス」や、「グランブル」によるコンボ(後述)によって大きく勝ちに近づくこともありました。
さらに、場合によっては「ざわめきのエレメンタル」を「カリモスの下僕」などに使ってさらにリソースを確保することも可能でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1733020607-MEwU7eHYGmsfuqxyRv4jQK52.png)
(当時は攻撃力4)
これらからくるリソース力と、さらに環境で「翡翠の偶像」を使った翡翠ドルイドのような「長引けば長引くほど逆転不可能な盤面を作ってきて、さらにデッキ切れもしないようなデッキ」が存在しなかったのもあり、エレシャーでも十二分にロングゲームを戦い抜くことができるようになりました。
その上で、エレシャーならではの強みとして「他のどのデッキよりもデッキ切れが遅い」という点があります。
前述したリソース力を強化してくれるカードは、全て「デッキ外からカードを持ってくる」ものです。元々デッキに入っていた「下僕」を含めても、エレシャーには「デッキからカードを引く効果」を持っているカードは1枚も入っていません。
それはつまり「毎ターンの通常ドロー以外ではデッキ枚数が減らない」ということであり、大抵はデッキからドローするカードを使って手札を増やしていくコントロールデッキに対して明確に優れている部分と言えます。
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同じカードが2枚手札に来るの使いづらすぎる
ハースストーンではデッキが切れても即座に負けにはなりませんが、デッキがない状態でドローすると1ダメージ、次は2ダメージ……と累積ダメージを受けます。そのためデッキが切れないに越したことはなく、相手よりずっと早くデッキ切れを起こしてしまった場合、勝つのはかなり絶望的です。
エレシャーにおいては「相手が通常ドロー以外でデッキからカードを引いた枚数」がそのまま「デッキ枚数のアドバンテージ」になるため、「相手のデッキはもう0だけどこっちは5枚もある」みたいな状況も珍しくなく、このようなデッキ切れまでもつれ込む試合に関しては無類の強さを発揮したと言っていいです。
持久力を得てロングゲームでも戦えるようになったばかりか、他のコントロールデッキにはない「デッキ切れの遅さ」というエレシャーだけの強みを獲得するという、ウンゴロ期からは考えられないほどの強化をこの時のエレシャーは得たのです。
もちろん「デッキ枚数を増やすカード」を相手が使ってきた場合は事情が変わりますが、少なくともこの時の環境ではそのようなカードを使うコントロールデッキは存在しなかったと記憶しています。つまり環境も味方してくれていたということですね。「翡翠の偶像」がいなくなって本当に良かった……!
4-2.ミニオンの質と量
これはどちらかと言うと、元々エレシャーにあった強みがさらに強化されたものです。
エレシャー最大の強みは高コストエレメンタルの質と量にあります。この「質と量」という表現がキモだと思っていて、「質」だけでもないし「量」だけでもないのがエレシャーの面白いところです。
エレシャーにはウンゴロ期の時点で「原始の王カリモス」を始めとして「ファイア・エレメンタル」「ブレイズコーラー」「ストーン・センチネル」といった6コスト以上の大型エレメンタルが複数存在しました。
これがエレシャーの根本的な強みであり、「何ターンにも渡って大型のエレメンタルを出し続ける」ことで勝ちを狙うことができました。前回の記事で散々語った「エレメンタルシナジーの厳しさ」や「1枚ではゲームを決められないこと」を踏まえても、この戦い方は理にかなったものと言えるでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1733021419-2daOiArC3LETfNHJb4p0Xq7j.png)
全体除去された返しにこれ出すの楽しすぎる
新しくなったエレシャーでは、そこにさらに7/7というサイズを持つ「世界揺さぶるグランブル」や、他のリソース補充カードで入手した2枚目のカリモスや3枚目のブレイズコーラーなどが加わることになるのです。
もちろん後者に関しては運次第でカリモスなどを引けるとは限りませんが、デッキ外からエレメンタルを入手する機会そのものが増えたためそこまで珍しいものでもありません。それに、エレシャーとしては前述したように「大型のエレメンタルを出し続ける」ことが重要なため、「ボグシェイパー」や「大釜のエレメンタル」など、多少カードパワーの低いものでもデッキ外から引く分には「デカければ良い」精神で割と歓迎できることが多かったです。
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この強みを裏付ける話として、当時存在した「バ獣ハンター」というデッキに明確に有利を取れていたということが挙げられます。
「死線の追跡者レクサー」のヒーローパワーで「バ獣」という、「既存の獣カードを複数選び、そのステータスや能力を合成したカード」を生成して使ってくるデッキです。
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正直言ってエレシャーのおやつだった
ヒーローパワーという性質上、このデッキは変身してから毎ターンのようにバ獣を生成してくることになります。
実質的にリソースが尽きることはなく、生成するバ獣の能力もある程度融通が利くため、生半可な継戦能力では太刀打ちできません。
しかし新生エレシャーでは、この「バ獣」に真っ向から立ち向かうことが可能でした。
元々獣種族には有用な雄叫び効果を持つものが少なく、ハンタークラス特有の呪文カードの使いづらさもあって一度盤面を取られると巻き返すのは難しいという事情がありました。また、提示された選択肢が低コストのものしかなく「大型のバ獣を作りたいのに小型しか作れない」ということもあります。
対してエレシャーには強い雄叫び効果を持つエレメンタルや、盤面に圧を掛けることができる大型のエレメンタルが数多くいます。その気になれば「カリモス」で全体除去しながら7/7を出すことだってできます。そして、前述したように強化されたリソース力があります。
言ってしまえば「バ獣よりエレメンタルの方が強えんだよ!!」と、はっきり叩きつけられる程度には、戦っていて有利を実感することが多かったです。
毎ターン特殊なカードを生成してくるような敵に対しても一歩も引かず、そのエレメンタルの「質と量」によって相手を押しつぶす、まさにエレメンタルの軍勢を率いていると感じられる強さが、新しくなったエレシャーにはあったのです。
エレメンタルや「カリモス」が好きでエレシャーを使い続けていた私としては、もう最高と言うほかありませんでした。
4-3.バーストダメージによる決定力
当然ですが、ハースストーンで勝つためには相手ヒーローの体力をゼロにする必要があります。
そこに至るためのアプローチは様々でも、最終的に目指す場所は同じです。一部の特殊勝利デッキでもない限り、どこかで「相手ヒーローの体力を削る」必要が出てきます。
それはもちろん、エレシャーも例外ではありません。
勝つためには必ず相手ヒーローの体力をゼロにしなければならず、それをどのくらい確実に、あるいは迅速に行えるかが、このゲームにおけるデッキの強さだと言い換えることもできるでしょう。
エレシャーの勝ちパターンは、何度も言っているように「大型エレメンタルを出し続ける」ことです。
しかし、それだけでは勝ちにはつながりません。盤面を取るだけではなく、そうして出したエレメンタルで相手ヒーローを攻撃し、体力を削ることで初めて勝ちに近づくのです。
ですが、それが不確実かつ遅い行いだというのは、なんとなく分かっていただけると思います。
ハースストーンは召喚酔いのあるゲームですし、敵のヒーローを攻撃するということはその分敵のミニオンを放置することになります。
エレシャーは他のアグロ・ミッドレンジのデッキよりも攻めに転じられるタイミングが遅いので、そこから敵ヒーローの体力を削りきるまでには相応の時間がかかります。その間に回復や全体除去、逆転できるパワーカードなどを使われてしまう可能性は十分にあるわけです。
つまりは「決定力」、もう少し具体的に言うと「勝ち切るための手段」が昔のエレシャーには足りませんでした。
自分の出したエレメンタルが次のターンまで生き残って、それでリーサルが取れる状況になって初めて勝てるわけです。当然、見えているリーサルは可能なら相手も回避しようとするので、それすらできないくらいに相手を圧倒しないと勝ちをもぎ取れないというのがエレシャーの弱みでした。
この問題は「手札からダメージを出せるカードを使ってリーサルの範囲を広げる」、つまりバーストダメージで解決できるのですが、エレシャーにあるその手のカードは「ブレイズコーラー」の5点か、最大でも「原始の王カリモス」の「火の加護」での6点くらいで火力不足と言わざるを得ませんでした。これらのカードはコストが重いため2枚以上同時に使うことができず、1ターンの間に出せるダメージはこれが限界だったのです。
もはや言うまでもないことかもしれませんが、これのために火力を出せる呪文を採用するということがエレシャーにはできないのも困ったところです。
メイジがとりあえずで「ファイアーボール」「フロストボルト」を採用して最大15点のバーストダメージを出せるようになっても、エレシャーはそういうわけにはいきません。
しかしこの問題は、コボルト期に実装されていた「ざわめきのエレメンタル」によって解決します。
次の雄叫び効果を2回発動させることによって、「カリモス」「ブレイズコーラー」が出せるダメージを2倍にし、大幅に決定力を上げることができたのです。2コストなので「カリモス」と同時に使っても10マナの範囲内に収まります(ハースストーンではマナの上限は10)。
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これにより、エレシャーの出せるバーストダメージは倍の最大12点になりました。ハースストーンは初期体力30のゲームなので、40%を手札から削れるようになったことになります。
この差は数字以上に大きいです。体力6の場合と体力12の場合、数字としては2倍の差ですがプレイヤーの心理として感じる危機感の違いは倍どころの話ではないはずです。
体力6は間違いなく「何かあったらすぐ死んでしまう、まずい」と感じるでしょうが、12あれば「危なくはなってきたけどここから一気に死ぬことはないだろう」と思うはずです。「血の渇き」以外でバーストダメージを出すイメージのないシャーマンが相手であればなおさらです。
使わないと分かりにくい感覚かもしれませんが、「6点では足りないけど12点あれば足りる」という状況は本当に多く、「ざわめき」があるのとないのとでは天と地の差だと感じました。
実際、12点という数字はハースストーンにおいてそれなりに優秀なバーストダメージだと言って良く、過去にはドルイドの「自然の援軍」→「獰猛な咆哮」で9マナ14点のバーストダメージを出す通称ロアコンというコンボが環境で猛威を振るい、ナーフされたこともありました。
もちろん厳密には、エレシャーの方は10マナ12点だし、ロアコンは場にミニオンが残っているとさらに打点が上がるという利点もあったので同格に見れるものではありませんが、12点という数字が決して小さくないことは分かっていただけると思います。
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体力14以下でこれ使われる=死の宣告
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スマホ版でSEがうるさくて修正されたり色々あったカード
「ざわめき」→「カリモス」「ブレイズコーラー」のコンボは、そんな風に相手の意表を突くことができます。マイナー故に警戒されなかったというのもありますね。
そして当然、決まれば敵の体力はゼロなので、その時点で勝ちです。エレシャーに足りなかった「決定力」「勝ち切るための手段」という問題は、まさしくこの「ざわめきのエレメンタル」1枚で解決したと言っていいでしょう。
(「ざわめき」についてはもっと語ることがあるのですが、それは後程)
このように、新しくなったエレシャーは本当に、ウンゴロ期の非力さが嘘のように頼もしいデッキになりました。
正直言って、この時のエレシャーを使っていてパワー不足を感じたことはほとんどありません。負けるとしても「プレイング次第で何とかなったんじゃないか」と思うことも多く、少なくとも自分にとっては理想のデッキ以外の何物でもなかったです。
5.採用・不採用カードについて
さて、ここからはデッキ全体の話ではなく、特定のカードの採用・不採用やその理由について話していきます。
ウンゴロ期ほどではないにせよ、相変わらずエレシャーは環境入りしているデッキではなく、それによって研究も進まず、正しい認識が中々広まらなかった節があります。
前回の記事で扱った「翡翠」カードに関してはそもそもこの時にはスタン落ちしていたため、不純物を入れる構築こそあまり見られなくはなってきていましたが、それでも色々と言いたいことは当時からあったものです。
さすがに全てを語りきることはしませんが、いくつかピックアップして紹介していきます。
5-1.世界揺さぶるグランブル
まずは採用カードから。
既に何度か登場している隠れた強カード「世界揺さぶるグランブル」です。
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このカードの強さですが、まずは何といってもシンプルに7/7というスタッツの高さと、6コストという絶妙な軽さです。
7コストに「ブレイズコーラー」「ストーン・センチネル」が存在するエレシャーにおいて、それより1コスト低いおかげで枠を食い合わないというのは数字以上に優秀な要素です。
6コストのカードとしても、今まで「ファイア・エレメンタル」くらいしか有用なカードが存在しなかったエレシャーにとっては嬉しい選択肢です。上記の7コストエレメンタルへの繋ぎになるカードが1枚増えたことになるわけですからね。
(ちなみに前回の記事で紹介したウンゴロ期のエレシャーでは、6コストエレメンタルを少し増やしたくてわざわざパワーの低い「フロスト・エレメンタル」や「フローズン・クラッシャー」を入れてたりしました。その必要もなくなったわけですね……)
また、7/7というサイズはエレシャーでは「カリモス」と並んで最大ステータスということになります。
昔のエレシャーは「カリモス」「ブレイズコーラー」以外のカードは軒並み体力が5以下で、5点以上の全体除去に非常に弱いという欠点がありました。「ドラゴンファイア・ポーション」で壊滅しかしてなかった記憶があります……。
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この時は既にスタン落ちしてた
そのため、6コストという軽さから7/7というステータスのカードを出せるというのは、エレシャーにとっては字面以上に強力でした。
そして雄叫び効果ですが、こちらも当然強力です
自分のミニオン全てを手札に戻してしまうのはデメリットにも思えますが、優秀な雄叫び効果持ちの多いエレシャーでは再利用できるメリットになります。
また、戻したカードが1コストになるというのも非常に強力で、7ターン目以降にグランブルを出した場合は戻したカードを即座に出し直して強力な盤面を構築できます。
既にいる中・大型ミニオンで敵ミニオンを攻撃した後に「グランブル」で回収、すぐに出し直して雄叫び効果を使いまわすという動きが決まると、場合によってはそれだけで勝てるくらいのポテンシャルがあります。
その際に、傷付いている味方ミニオンを回収して出し直すことで、実質的な回復効果としても使えるのが本当に強いです。それがしやすい中・大型のエレメンタルがエレシャーに数多くいるのもなかなかに噛み合っています。
出した「カリモス」が1コストになって雄叫びを使いまわせると考えると、それだけでワクワクが止まらないことでしょう。
そして、これはかなりの上振れ要素ですが、この「グランブル」をデッキ外から入手して合計2枚確保した場合、ワンショットキル級のバーストダメージを出すコンボが可能です。
場に1枚目の「グランブル」と「ブレイズコーラー」などのダメージを出せるカード、手札に1枚目の「グランブル」により1コストになった2枚目のグランブルという状況を作れた場合、
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手札の「グランブル」を1コストでプレイ
雄叫び効果で元々場にいた「グランブル」ともう1枚(ここではブレイズコーラーとします)が手札に入る
手札に入った「ブレイズコーラー」を1コストでプレイ、敵のヒーローに5ダメージ
①に戻る
このように、マナの許す限り「グランブル」と「ブレイズコーラー」を両方1コストで交互に出し続けられます。
10マナ使えた場合、5回ループできるので(ブレイズコーラーの場合)合計25ダメージ与えられます。このコンボをする前に5ダメージくらいは削っているはずなのでつまり勝ちです。
出した「グランブル」「ブレイズコーラー」が1ターン生き残らないといけないため難しいコンボに思えますが、コントロールデッキ相手だと1ターンくらいは猶予がある場合もあり、また元々これらのカードを出す10ターン目前くらいはエレシャーが一番強い時間帯でもあるので思ったほど非現実的なコンボでもありません。
実際、私はこのコンボを3回くらいは決めたことがあります。そもそも前提として2枚目の「グランブル」をデッキ外から入手する運ゲーが入った上で複数回成功していると考えると、割と可能だと思ってもらえるのではないでしょうか。
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(左のログを見ると交互に出してるのが分かります)
こんな感じで、この「グランブル」はエレシャーにとって地味ながらかなり優秀なカードでした。
高いステータスと無駄にならない効果を持つエレメンタルのレジェンドカードというだけで採用する気になれますが、実際はそれどころの話ではなく多方面での優秀さやエレシャーとの相性の良さがあったカードなのです。
余談ですが、このカードは環境では「シャダウォックシャーマン」というコンボデッキのコンボパーツとして採用されていたくらいで、その場合でも雄叫び効果を「シャダウォック」で繰り返すために予め出しておく使い方しかされていませんでした。本当に「後々のためにポン出ししておくだけ」みたいな使い方です。
つまりエレシャーこそが、このカードの隠れた高スペックを一番生かしきれるデッキだったということですね。エレシャー最高!
5-2.ざわめきのエレメンタル
このカードに対しては本当に並々ならぬ想いがあります。
ここまでの話にも何度か登場している通り、このカードはエレシャーにおいて非常に強力で、採用は必須と言っていいというのが私の考えです。
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ですがそのような認識は全く広まっておらず、苦しい思いの中「ざわめきは強い」と主張し続けていた記憶があります。
……が、似たような話を前回の記事で既にしたのでそれについては割愛します。ほぼ同じです。悲しい……。
そのためここでは、このカードがなぜ強いのかを話します。
まず前章でも語った通り、エレシャーの「決定力」に大きく影響していることが挙げられます。
このカードがないとエレシャーは6点のバーストダメージしか出すことができず、「最終的にどうやって勝つのか」という問題への回答の大半を失います。
もちろん強くなったエレシャーは「魔女ハガサ」を始めとしたリソース力でデッキ切れ付近までもつれ込んで勝つこともできますが、そのような勝ち方と「ざわめき」を絡めたバーストダメージで倒しきる勝ち方とでは体感半々くらいだったと記憶しています。つまり「ざわめき」がいないと勝ち筋が半分消えると思っていいです。
デッキ切れまでもつれ込まない場合、エレシャーの高コストエレメンタルで盤面を取れることは多いですが、そうなったら適当に殴って削った後にさっさとバーストダメージで勝ち切った方が確実かつ早い、つまり強いというのは前述した通りです。
ですがこれだけではありません。
「ざわめき」の本当に強いところは「バーストダメージ以外にも使える」というところです。このカードの本来の効果は「次に使う雄叫び効果を2回発動させる」ことのため、別に他のカードに対して使ってもいいのです。
その時その時の判断で「今欲しいのはどの効果か」「この相手に対する勝ち筋は何か」を考え、最も効果的な雄叫びを倍化することで、エレシャーというデッキ全体の対応力や手の届く範囲を飛躍的に上昇させるというのが、このカードの真の効能です。
「バーストダメージの倍増」は、その中で最もポピュラーな1パターンに過ぎません。
バーストダメージではなく、リソース力によって勝ちが狙えると思った場合は「カリモスの下僕」を、
目の前の盤面さえ処理すれば勝てると踏んだなら「魔女ハガサ」(エレシナジーも維持できて一石二鳥!)を、
相手のバーストダメージに耐えられる体力さえあれば良いのなら「温泉の守護者」を、
とにかくミニオンを展開したいなら「ストーン・センチネル」を、
倍化すれば良いのです。
……まあ正直、後ろ2つはあまりやった記憶がないですが、とにかく組む相手が豊富に居て、それぞれが違った方向へ働きかけることができるというのが重要です。
バーストダメージの必要ない試合展開になったとしても邪魔にならないどころか、どんな展開であっても自分の判断次第で勝敗を決定づけるキーカードになり得るポテンシャルを持っています。
そしてもちろん、最も強力な相方こそ我らがエレシャーのエース「原始の王カリモス」です。
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(当時は8コス)
「ざわめき」を「カリモス」に使った場合、「4つの加護から1つを選ぶ」を2回繰り返すことになります。つまり違う効果を使ってもいいし、もちろん同じ効果を2回使うこともできます。
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「火の加護」を2回使って12ダメージ、というのは散々語ってきましたが、「ざわめきカリモス」の強さはそれだけじゃありません。
「風の加護」を2回使って6点AoEにすれば大抵の盤面は空にできます。極論、6/6が盤面いっぱいに並んでても倒せちゃうわけですからね。
「水の加護」2回にすれば「レノ・ジャクソン」に迫るほどの実質全回復と言っていい回復量になり、「水」と「風」を1回ずつ使えば小型を一掃しつつ回復という器用なこともできます。
ウンゴロ期はカリモスの絶妙に色々届かない器用貧乏さに悲しくもなりましたが、「ざわめき」と併用するとどうでしょう。一気に何でもできる最強カードになった気さえします。バーンも回復も全除去も高次元にこなすカードが強くなくて何だと言うのでしょうか。「地の加護」?知らんな。そのカリモスをここまで強くした「ざわめき」がどれほど有能なのか、もはや言うまでもありませんね?
そして当然ながら、「ざわめき」はカリモス以外に使うこともできます。
「ざわめきカリモス」の効果がどれも刺さらない場面だったとしても、カリモスを引けていなかったとしても、「ざわめき」が腐ることはありません。
考えれば考えるほど「ざわめき」を使わない理由がなさ過ぎて、どうしてこのカードの強さが認知されていなかったのか本当に謎です。
この優秀さと、元々大好きだった「カリモス」との相性の良さ、そしてその強さをもっと知ってほしいという想いから、note含めSNSのアイコンをこのカードにするくらいには自分の中で存在の大きいカードというわけです。
強さの話とは少しズレますが、エレシャーを使う上での「楽しさ」にも大きな影響を与えているカードだと言えます。
エレシャーは元々、遅めの速度帯なのもあって「毎ターンただカードを投げているだけでは勝てないデッキ」でした。常に先の展開を考えてプレイする必要があり、特に相手の全体除去のケアは必須です。
新生エレシャーでは、それに加えて「ざわめきを何に使うか」がかなり重要となり、より一層プレイングの大事なデッキとなりました。負けても「ざわめきの使い方次第で違ったかも」と思え、勝った場合には「自分の判断が上手かったんだ」と思えます。
記事の途中で、”勝つも負けるも「自分の実力」だと感じられる中々に歯ごたえのあるデッキ”と言ったのですが、それはまさにこの「ざわめき」の影響だと言えます。
ウンゴロ期のような露骨なパワー不足感もなくなり、新しくなってからのエレシャーは本当に、本当に楽しいデッキでした。
余談ですが、「ざわめき」が「他のエレメンタル達の力を増幅させている」と考えると、なんというかこう、非常に良いな……ってなりますね(?)
「ざわめき」のおかげで炎はより激しく、水はより泰然と、大地はより強固に、嵐はより鋭く、それぞれの力を増しているわけです。エレメンタル達の多様性がそのままエレシャーというデッキの可能性になり、その可能性を開花させるのが「ざわめき」なのです。
そして、その多様性の象徴とも言える「カリモス」と、「ざわめき」は相性抜群……「ざわめき」にエレシナジー効果はありませんが、エレメンタルデッキのために作られたカードなのではないかと思えます。
「カリモス」の複合属性感が大好きな私としては、エレシャーがこのようなデッキになってくれて本当に嬉しいですね。強さなどの実用的な面以外でも、フレーバー的にも文句なしの好みど真ん中です。
そんなフレーバー的観点から見ても、他のエレメンタル達を触発させる「ざわめき」をデッキに入れないわけにはいきませんね!
5-3.ファイアプルームの先遣者
ここからは不採用カードについてです。
このカードはウンゴロ期から存在しており、その時から色々と言いたいことはあったのですが、文量の関係もあり前回の記事には書きませんでした。
話の趣旨は新エレシャーでも旧エレシャーでも変わらないのでここで一気に話そうと思います。
「ざわめき」から一転、正直言って顔も見たくないカードです。
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まず不採用カードと言っていることからもわかる通り、このカードは弱いというのが私の考えです。
ですがこのエレシャー記事ではもはやお約束と言うかなんというか、そのような認識は全く広まっていませんでした。それどころか必須級の扱いを受けていたような節さえあります。
私も最初はこのカードを使っていました。他の人と同じように「なんか強そう」というフワッとした理由(後述)で、ウンゴロが実装されたばかりの4月の時期まではデッキに入っていました。
しかしエレシャーを使っていくうちにある時「ちょっと待て、こいつ弱くね?」と気づき、2枚積みが1枚になり、5月のレジェンド達成時には0枚になっていました。前回の記事にこのカードが登場しなかったのはウンゴロ期の時点でこのカードが弱いと既に気づいていたからなんですね。
先入観のない、初見の人がこのカードを見て強いと思うのか弱いと思うのかは、正直分かりません。
ですが、当時のハースストーンプレイヤーはこのカードを「強そう」だと感じてしまうある理由がありました。
それはズバリ「メカワーパー」というカードの存在です。
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古の最強カード、なのに変わり果てた姿に……(当時は2/2/3)
……なんかナーフですごいことになってますが、当時は2コス2/3で同じ効果でした。
ウンゴロの実装時には既にスタン落ちしていたので環境で共存していたわけではないのですが、大事なのはかつて「メカワーパー」というカードがあり、それが非常に強かったということです。
このカードは主に「メックメイジ」という、メカ種族を使ったアグロデッキで使われており、そのデッキの中でもかなりのパワーカードでした。またこの「メックメイジ」は環境でもかなり存在感のあったデッキです。
2ターン目に「メカワーパー」を出すだけで、手札の1コストのメカが0コストで場に出せます。「メカワーパー」が生き残れば3ターン目に「手動操縦のシュレッダー」などの4コストのメカが出せます。
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おかげでシュレッダーガチャが日常茶飯事だった
このようにして早々に手札を吐き切る勢いでメカやそのシナジーカードを盤面に並べ、「ゴブリンのブラストメイジ」や「ファイアーボール」などの火力カードでとどめを刺すのがこのデッキです。
お手本のようなアグロデッキであり、そんなデッキが手札のコストを下げるカードを使ってくるともなれば、その速攻を捌き切るのは容易ではないことは想像できるでしょう。
最速「メカワーパー」はメックメイジの黄金パターンであり、出てきた「メカワーパー」を返しのターンで除去できないと、アドバンテージ差は雪だるま式に大きくなってしまいます。つまりはそれくらい強いカードだったのです。
話をエレメンタルに戻しましょう。
つまりはこの「強かったメカワーパーと似てるカード」、言い換えれば「エレメンタル版メカワーパー」ということで高い評価を得(てしまっ)たのが「ファイアプルームの先遣者」なのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1733902557-2UsFJPSQIklrhTZodOfM4KVi.png)
確かに「2コストで」「手札の同種族のコストを下げる」点は同じです。
ですがこのカードと「メカワーパー」は全く違います。それなのに、「なんとなく同じに見える」「あのメカワーパーっぽくて強そう」というだけで大して精査もされずに強い扱いを受けていた気がしてならず、私はその風潮が本当に嫌いでした。
カードに罪はないですがそのせいでこのカード自体も好きになれません。
前回の記事にも書きましたがエレシャーは環境レベルのデッキでないが故に色々と研究が進まなかった面があり、このカードはそれを象徴する1枚と言っていいでしょう。
現にウンゴロ期からずっとエレシャーを使っていた私はこのカードが強くないと気づきましたし、何がどう強くないのか全て説明もできます。
順を追って解説しましょう。
まず「メカワーパー」と比較するにあたって、前提となる条件が既に違います。メックメイジは完全なアグロデッキですが、エレシャーは好意的に見てもミッドレンジがせいぜいで、速度帯が全く違うのです。
手札のコストを下げる効果というのは、言い換えれば「手札が捌けやすくなる効果」です。アグロであるメックメイジは手札を全て吐き切ってでも早い段階でミニオンを並べて、とにかく敵のライフを削っていくことが重要なので、手札を吐き出しやすくなるメカワーパーの効果は有用なのです。
対してエレシャーの場合、手札を早々に枯らしてしまうと、本来強いはずの6ターン目以降に強い動きができません。エレシナジー条件を安定して満たすのも手札が必要です。
エレシャーは手札を吐き切った爆発力で勝つデッキではなく、手札がなくならないように立ち回りながら強いエレメンタルを出して勝つデッキです。その時点で既に相性が悪いのです。
また、マナカーブの観点から見ても難点があります。
エレシャーは元々のコストの時点でマナカーブが整うように作られているのに、そこで中途半端にコストを下げられてもあまり意味がないのです。
例えば「ファイア・エレメンタル(6コスト)」→「ブレイズコーラー(7コスト)」→「原始の王カリモス(8コスト)」の動きをすると仮定した場合、その内の1枚だけが1コスト下がっても結局どこかで1マナ余らせるターンが生まれるだけでコスト減の恩恵を生かしきれない場合が多いでしょう。
永続的に全てのエレメンタルのコストが下がるならともかく、「ファイアプルームの先遣者」が下げるのは出したときに手札にあったエレメンタルのみで、後から引いたカードのコストは下がりません。これも地味ながらメカワーパーと比べて使いづらい点です。
上記の6・7・8コストのカードが全部手札にあれば全て綺麗に1ターン早く動けますが、このカードを出すであろう2ターン目にその手札はただの事故です。
結局、このカードを使って「複数のエレメンタルのコストを下げて大量展開!」みたいなことはできず、仮にできても手札が枯れて弱くなるだけです。エレシャーに低コストで攻めに優れたエレメンタルなんていませんからね。
実際に受けられる恩恵はせいぜい「コストを下げたうちの1枚くらいは1ターン早く出す意味がある(かも)」くらいのもので、これが正味としての性能です。
ですが、そうして1ターン早く出せたとしても、そこまで意味のあるカードがエレシャーにはないのです。
エースである「カリモス」を含め、高コストのエレメンタルは1枚でゲームを変える力を持っているわけではありません。「カリモス」を7ターン目に出せたとして、別にそこまで強くはないです。
都合良く回復や全体除去が強烈に刺さる場面だったならいいですが、そうでなければあまり意味のない6点バーンか、4つの中で1番弱い1/1召喚を使うことになります。
なら2コストであることを生かして「4コストのカードを3ターン目に使える」という点に注目してみても、一番使いたい性能をしている「トルヴィアのストーンシェイパー」は非エレメンタルでコストが下がらないという体たらくです。
![](https://assets.st-note.com/img/1733906793-IY4aAtJbmwsfTd1KuVepFv27.png)
これのコスト下げられないやつのどこが強いんだ?
「メカワーパー」にとっての「手動操縦のシュレッダー」や「メカ・イェティ」のような存在が、エレシャーにはいません。いるのはそこまで強くない「ファイアプルーム・フェニックス」くらいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1733907172-lQA4jHfFPhNxIKGRW8Ve17zd.png)
そして、これまで敢えて触れずにいましたが、最も弱い点は別にあります。
それは何といっても本体のステータスが1/1と非常に弱いことです。
ハースストーンでは2コストのカードは効果なしやおまけ程度の効果の場合で2/3または3/2が基準で、それよりステータスの低いカードは相応に強い効果を持っていることを求められます。
それどころか、2/3や3/2なのに強い効果を持っているカードも中にはあります。何よりここまで比較してきた「メカワーパー」は2/3であり、仮に効果が発揮できなかったとしても本体のサイズだけで最低限の仕事はできるのです。
「ファイアプルームの先遣者」にはそれができません。
![](https://assets.st-note.com/img/1733907808-8FVmePywMAHGSnXfrTcD4kov.png)
ハースストーンにおいて、1/1のミニオンは正直いてもいなくてもあまり変わりません。1枚で複数体1/1を出せたり、頭数を生かして全体バフを掛けるデッキでもない限り、わざわざカード1枚を使って1/1を出すだけというのは手札を1枚ドブに捨てているのと同じです。
前述した通り「ファイアプルームの先遣者」の効果はそこまで強くありません。それなのに盤面にも1/1しか出ず、戦況に特に変化をもたらしません。
そんなカードのために手札を1枚使い、しかも使った「先遣者」で手札のコストが下がるなんて言ったらすぐに手札切れしてしまいます。
大体、本体が1/1で大して役に立たない以上、このカードのやっていることは「コストを払ってコストを下げるだけ」になります。手札に2枚以上エレメンタルがなければ差し引きマイナスだし、あったとしても前述の通りその下がったコストを有効活用できるかは怪しいです。
「下がったコストを有効活用できる場面」が2回以上あって、初めて査定がプラスになります。それでも「カードを1枚使って1/1しか出ない」ことに変わりはなく、カードアドバンテージ的にはかなり損です。
実質0コストで1/1を出せたとして、それはただの「ウィスプ」です。
![](https://assets.st-note.com/img/1733909039-vICZPm7lpDqhxB8n0tJbs6cX.png)
それに「ウィスプ」はマナを使わないのでいつでも出せますが、「ファイアプルームの先遣者」はそうはいきません。
「2ターン目の2マナ」という、序盤における大事なリソースを使って出すのが1/1では、手札が事故ってヒーローパワーを使わされるのと何も変わりません。
後のターンで下げたコストを活用すればそのマイナスを返済できるかもしれませんが、「2ターン目に1/1しか出せなかった」という事実は変わりません。相手がアグロデッキだった場合、2ターン目を実質パスするなんていうのは殺してくれと言っているようなものです。
それなら、コストを下げるなんていうのは最初から考えず、他の低コストカードを採用してそちらで序盤をしのいだ方が良いでしょう。
幸い、ウィッチウッドでは新しい2コストカードの「大地の力」が追加されましたし、それを踏まえると今まで少し使いづらかった「グレイシャル・シャード」も採用圏内に入ります。
そこに元々入っていた1コスト「ファイアフライ」や、優秀な3コスト「タール・クリーパー」「温泉の守護者」を合わせれば、序盤は十分に戦えるというものです。また少し後には「荒ぶる雨雲」という、待ち望んだ使いやすい2コストエレメンタルが追加されたことを加味するとなおさらです。
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「こおれはどうだ」は実は攻撃ボイスの方
なぜか強い扱いされている「ファイアプルームの先遣者」がいかに弱いかというのが、分かってもらえたでしょうか。
少し話は逸れますが、前回の記事で「エレシャーには強い2マナがいない」と何度も書いたのを覚えているでしょうか。
それはこのカードが弱かったことが元凶で、他にいた2マナと言えばこちらも弱い「即発のエレメンタル」くらいだったので、本当に何もなかったのです。大体両方とも1/1とかどうしろと……
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でも今ならワンチャンあるかも(当時は攻撃力1)
そのため、ウンゴロ期のデッキでは「メイルシュトロームのポータル」「炎の舌のトーテム」「原始フィンのトーテム」と、前回記事のリストには入っていませんが「ゴラッカ・クローラー」などの汎用カードを使って何とか2ターン目をしのいでいました。
幸い2マナなので、後から引いてきても他のエレメンタルと一緒に出しやすく、エレシナジー条件の邪魔をしづらいのが大きいです。実用圏内のエレメンタルがとにかく少なかったウンゴロ期では、2マナ帯に汎用カードを集中させることによって序盤の強さとエレシナジーの安定発動を両立するという手法にたどり着きました。「ファイアプルームの先遣者」が弱すぎたせいで、そうするしかなかったのです。
今見てもあの時代のリストは工夫の塊でしかないですね……頑張ってたんだなあ……。
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特定のカードへのメタカードは全てカニと呼ばれた
「ファイアプルームの先遣者」の話に戻りますが、こう思った人もいるでしょう。
「さっきあんなに褒めてた『ざわめき』も2/1/1じゃねえのかよ?」と。
確かに数字だけ見れば「ざわめき」も同じ2/1/1です。ですが、使い方が全く違います。
「ざわめき」を2ターン目に出すことは絶対にありません。仮に他に出せるカードがなくても出しません。
直後に使う雄叫びを倍化するという性質上、同じターンに別のカードをプレイするのが絶対条件のため、そもそも「2ターン目に使う2マナ」のカードではないわけです。
1/1というステータスが役に立たないというのは、確かに「ざわめき」にも同じことが言えます。
ですが「ざわめき」はそんなことどうでもいいくらいに効果が強いです。というか、最初から雄叫び効果のみを当てにして採用しているし、仮にこれが「次に使う雄叫びを2回発動させる」という効果の2コスト呪文だったとしても変わらず重宝することになったでしょう。
こと「ざわめき」に関しては、本体がエレメンタルであることに特にメリットはないんですよね。「魔女ハガサ」と使う時以外はどうせエレメンタルと一緒に出すので、仮に「ざわめき」がエレメンタルでなかったとしてもシナジーの継続には支障ないです。
何か違いがあるとしたら「グランブル」で回収できる可能性があって嬉しいくらいでしょうか。
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奇しくも同じステータスを持つ「ざわめきのエレメンタル」と「ファイアプルームの先遣者」は、その実あまりにも違いすぎる性能差を持っていたわけです。少なくとも私はそう思っています。
巷では「先遣者」を入れて「ざわめき」を入れないリストばかり出回っていました。私はそれに納得していなかったし、その気持ちは今も変わりません。
役割は全く違うとはいえ、同じ2/1/1として否が応でも比べてしまうカード同士、どちらが強いかはこれを読んでくださっている方には分かっていただけるのではないでしょうか。
どちらにせよ、2/1/1で単体では機能しないカードを2種4枚もデッキに入れるスペースはありません。
なら、デッキの総合力を上げてくれてバーストダメージという勝ち筋もできる「ざわめき」の方が優秀なのは火を見るよりも明らかなはずです。
仮に「先遣者」でコストが下がって展開が多少強くなったとしても、「ざわめき」なしでは決定力が足りません。
色々と思うところのあるカードのため長くなってしまいましたが、このカードを採用しない理由はこのようなものでした。
このカードに限ったことではありませんが、先入観や思い込みによって目が曇ってしまうことは往々にしてあります。
前回の記事でも言ったことですが、エレシャーが大好きだからこそ私は皆にもっと考えを深めてほしかった。「メカワーパーと似てるから強そう」というだけのところで止まってほしくなかった。
それが伝わってくれたなら幸いです。
5-4.シャダウォック
このカードは、どちらかと言うと「入れても良いけど、わざわざ入れる必要もない」といった感じのカードです。
「対戦中に使用した雄叫びを全て繰り返す」というド派手な効果を持っており、当時はこのカードを使ったコンボを主軸にした「シャダウォックシャーマン」というデッキが存在していたくらい、構築によっては出すだけで勝ちを狙えるくらいのポテンシャルのあるカードです。
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こいつが1コスで大量に出てくるデッキがあったらしい
ですが、「シャダウォックシャーマン」の「シャダウォック」がゲームエンド級の力を持っていたのはあくまでそのためにデッキ全体を調整されていたからです。
「ライフドリンカー」「サロナイト鉱山の奴隷」などのコンボ専用カードを多数デッキに入れており、「シャダウォック」1枚によってゲームを終わらせることを目的とした純然たるコンボデッキなので、エレシャーが真似をして「シャダウォック」を使おうとしても、同じようにはいきません。
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この雄叫びをシャダウォックで繰り返すと……?
確かに、エレシャーには有用な雄叫び効果が数多く存在します。それこそ、雄叫びを2回発動させられる「ざわめき」が強いのなら、この「シャダウォック」も相性は良さそうに思えます。
しかし、「シャダウォック」で繰り返す雄叫びは対象がランダムに決定されるという無視できない欠点が存在します。
特にエレシャーには「ブレイズコーラー」「ファイア・エレメンタル」「温泉の守護者」などダメージや回復を飛ばす効果が多く、それらが不本意な対象に飛んでむしろマイナスの結果を招く可能性があります。
他にも、マイナスというほどではないにしても「カリモスの下僕」は発見するカードを選べないし、「原始の王カリモス」も4つの加護からランダム発動になります。「魔女ハガサ」に変身済みなら全体3ダメージが確定なので「シャダウォック」自身を含めた自分の盤面が傷つきます。
本家シャダウォックシャーマンと違い、繰り返すことを前提としてカードを選んでいるわけではないので、どうしてもパワーが低くなるのです。当然、「シャダウォックで繰り返して強い雄叫びカードを入れる」のは本末転倒かつエレシナジーの阻害になるため論外です。
そしてこれもエレシャーの宿命、「非エレメンタルかつ重いカードをデッキに入れるのはかなり難しい」という事情もあります。
ただでさえ「魔女ハガサ」という、非エレメンタルで8コストのカードが既に入っているのに、もう1枚似たような条件のカードを入れるのはもう厳しいです。リソース力を大きく強化してくれる「ハガサ」を抜くわけにはいかない以上、「シャダウォック」の方を諦めるしかありません。
9コストという重さ自体も足を引っ張り、10ターン目以降での使用かつ都合よく1マナのエレメンタルを手札に持っていないと次のターンにエレシナジーが途切れることが確定してしまいます。9、10ターン目にシナジーが途切れて強いエレメンタルが出せなくなってしまうのは、エレシャーにとっては致命的です。
というか、身も蓋もない話ゲームを決められるほどのパワーがあるわけでもない「シャダウォック」でガチャガチャやってる暇があるなら、「ざわめき」を使ったバーストダメージでとっとと勝負を決めた方が強いです。
この頃のエレシャーは割とそういうデッキで、6ターン目辺りから盤面を制圧して敵ヒーローの体力をある程度削り、10ターン目前後で「ざわめき」からのバーストで勝利、というのが一番多い勝ちパターンでした。
それ以外の場合は「ハガサ」やその他リソース補充カードでいくらでも長期戦できるし、前述の通り長期戦の末にはデッキ切れが遅いことによる絶対的な有利が待っています。
ロングゲームになってもならなくても、「シャダウォック」の出る幕はないのです。
以上のことから、エレシャーにおける「シャダウォック」は全く仕事をしないわけではないが、別にわざわざ使う必要性もないカードだったと言えます。
雄叫び版の「希望の終焉ヨグ=サロン」とでも言うような効果はつい使いたくなりますが、冷静に考えるとエレシャーには別にいらないんですよね。
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なんだかんだ有利に働く呪文が多いのでね……
6.その後のエレシャー
さて、「ウィッチウッド」で新しくなったエレシャーのことを解説してきましたが、その後の「博士のメカメカ大作戦」「天下一ヴドゥ祭」でも概ね使用感は変わりませんでした。
しかしそれは決してネガティブな意味合いではなく「楽しくて適度に強いデッキという立ち位置を維持し続けた」ということです。
何か革新的な新規カードが来たわけではありませんが、「騎士団」の時と違って少数ながらしっかりと強化されていました。
そのため「メカメカ」「ヴドゥ祭」でのデッキを細かく解説することはせず、追加されたカード単体にフォーカスを当てていきたいと思います。
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「ヴドゥ祭」のリストは見つかりませんでした……
追加されたカードでエレシャーに関係あったのは「元素反応」「エレクトラ・ストームサージ」「荒ぶる雨雲」「ドロバッシャー」くらいです。
「元素反応」はそもそもデッキに採用しておらず、「エレクトラ」は一応採用しているもののそこまで相性が良かったわけでもない(正直抜いてよかった)ので割愛し、残り2枚について解説していきます。
6-1.荒ぶる雨雲
「ウィッチウッド」の次の拡張である「博士のメカメカ大作戦」で実装されたカードです。
ずっとずっと語ってきた「強い2マナのエレメンタルがいない」という問題をついに解決してくれた、本当にありがたいカードです。
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やっっっっと来たよ!!って思った(当時は体力2)
2コストで2/2と気持ち小さめなものの、どっかのコストを下げるやつと違って2ターン目に出してしっかり仕事をするステータスを持ち、効果も腐ることなく優秀です。
「カリモスの下僕」と比べると補充するリソースの質は低くなりますが、それでも運が良ければ強いカードがもらえるし、そうでなくともエレメンタルが増えるというだけで大歓迎です。
「ハガサ」や「大地の力」そして「ざわめき」でリソース力が強化されたエレシャーの方向性とも噛み合っています。何よりデッキから引くのではなくデッキ外から手札に加えるため、デッキ切れが遅いというエレシャーの長所を潰さず本当にエレシャーというデッキと相性が良く非の打ち所がないです。
敢えて文句をつけるなら「ウンゴロの時に来てほしかった」です。本当に……!
6-2.ドロバッシャー
こちらは「メカメカ」のさらに次、「天下一ヴドゥ祭」での追加カードです。
実質的にエレシャーが使える最後の拡張にも関わらず、採用できそうなカードが1枚しかなかった上にこんな頭の悪そうな名前のカードなんてバカにしてんのかと実装前は思ったのですが、蓋を開けてみればかなり優秀なカードでした。
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でも使わないと分かりにくい強さ
エレシャーに有用な雄叫び持ちが多いというのは何度も言っていますが、それを回収できるというのがまず注目する点です。
ただ「グランブル」と違ってコストが下がらないため出し直すマナがあるのか?というのが懸念点だったのですが、使ってみると思ったより余裕がありました。
というのも、「雄叫びを使いまわせる」と言われてまず思いつく「カリモス」「ブレイズコーラー」などの大型エレメンタルを戻す使い方は基本的にしません。というか重くてできません。
ですがその代わりに、3~5コストのカードに対して使うのが使いやすく、かつ強いということが使っていてわかりました。
例えば6~7ターン目に既に場に出ている「タール・クリーパー」や「トルヴィアのストーンシェイパー」を戻してすぐに出し直す動きが分かりやすいです。
元々この辺りの時間帯はエレシャーが攻めに転じるタイミングであり、そこで攻めにはあまり役立たない挑発ミニオンを戻して+2/+2を付与した盤面に圧を掛けられるサイズで出し直せるというのが非常に有用でした。
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(当時は体力5でした)
どちらかというと雄叫びを使いまわすよりも+2/+2の方が本命と思ってしまうほど、このバフ効果は見た目以上に強かったです。
エレシャーの速度帯なら中コストのカードを戻して出し直す動きを1ターンの間にしてもそこまで無理はないし、バフを掛けるのに向いているステータス(攻撃力<体力)のカードが多かったのも相性が良かったです。
もちろん「カリモスの下僕」に使ってリソースを補充しつつ6/7を出すということもできますし、少し弱いですが「ファイアプルーム・フェニックス」で2ダメージを飛ばしながら5/5というのもアリです。
3~5コストのカードであれば「ドロバッシャー」自身と組み合わせても6~8コストで「戻してすぐに出し直す」動きがしやすいのです。
また、3ターン目に出すには性質上少々心許ないものの、2ターン目までに前述の「荒ぶる雨雲」や「ファイアフライ」が並んでいればそれを戻しても全然良いです。そのターンに出し直すことはできませんが「ドロバッシャー」自身が3/3あるためそれなりに頼りになり、次のターンになれば4/4になった「雨雲」や3/4の「ファイアフライ」が出せます。
それにエレシャーの3マナには元々優秀な「タール・クリーパー」「温泉の守護者」がいるため、それらを3~4枚採用しておけば3ターン目にはそちらを出して「ドロバッシャー」を後のターンに温存できることも多いです。
総じて、「一見強さが分かりづらいけどちゃんと強いカード」だったと言えます。
エレシャー最後の拡張は「やる気あんのか?」と思うほどのふざけた名前から、実際は地味ながらしっかり強いカードを貰い、堅実に強化されたという結果だったわけです。
6-3.そして……
このような強化もあり、エレシャーは「ウィッチウッド」で復活してからの1年間、少しずつ強化を貰いながらそれなりの強さを維持し続けたのです。
インフレに置いていかれることもなく、致命的に相性の悪いデッキも特になかったと記憶しています。
ミッドレンジとコントロールの間とも言える独特の速度感や、デッキ切れが遅いという半ば唯一無二の長所、そして「ざわめき」によって奥深くなったプレイングなど、この時のエレシャーは本当に使っていて楽しいデッキでした。
私はエレシャーが使えなくなってからもしばらくの間ハースストーンを続けていたし、今も他のカードゲームをプレイしていますが、この時のエレシャーほどあらゆる面でお気に入りなデッキには出会えていません。
こうして「天下一ヴドゥ祭」を最後に「カリモス」を始めとしたエレメンタル達はスタン落ちとなり、少なくとも私の知るところの「エレメンタルシャーマン」というデッキの歴史は幕を閉じたのでした。
思えば「ウンゴロ」の不遇時代から始まり、「騎士団」「コボルト」のさらに不遇な時代、そして「ウィッチウッド」で華麗に復活し、その後も強さを維持したというのは、終わってみればかなり満足のいく歴史だったようにも思えます。
まともな強化を貰えないまま、使えないデッキのまま終わっていた可能性もあったと考えると、色々なめぐり合わせに感謝したいですね。大好きなデッキが、しっかり日の目を浴びたまま最後を迎えられて本当に良かったです。
7.おわりに
前回の記事と合わせ、私の大好きなエレメンタルシャーマンというデッキの生涯を語ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
特に今回は想定よりもかなり記事が長くなってしまったのですが、その分様々なカードの解説やその時の環境の話など、余すところなく語れたかと思います。
ここまで読んでくれた方には当然分かっていただけると思いますが、私は本当にこのエレメンタルシャーマンというデッキが好きです。
「カリモス」の存在はもちろん、デッキとしての動き方や新しくなってからの程よい強さなど、どこを取っても好きなところしかありません。使える時期はずっと使っていたし、その中でこれだけの記事を書けるくらいには考えが深まりました。
私の作ったエレシャーのリストは、その採用カード1枚1枚全てにしっかりとした採用理由があり、なんとなく入っているカードは1枚もありません。だからこそデッキリストそのものに対する愛着も大きく、本当に思い出深いデッキなのです。
そんなエレシャーの記録を、何らかの形で残しておきたい。このデッキのことは、自分が一番よく知っているから。それが、この記事を書いた理由です。
特に新しくなった後のエレシャーに関しては、その価値が十分にあると言えるほどに個性的かつ完成度の高いデッキだったと思います。
前回の記事でも書きましたが、ただ「こんなデッキがあったんだ」と知ったもらえたら、それだけで私は嬉しいです。
それでは、あまりに長くなってしまったため今回の記事はここで終わろうかと思います。
ハースストーンで記事を書くことはもうないかもしれませんが、それ以外では気が向いたときに記事を書くと思うので、機会があればその時にまたお会いしましょう。
既に使えなくなってから何年も経っていますが、今でも変わらずに思っています。
「エレシャー最高!!!!」
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