SmartHRのライティング組織の3つの役割
こんにちは!
SmartHRのUXライティンググループでマネージャーをしているotapoです。
グループの運営をしていてときどき思うこととしては、「ライティング組織のマネジメントの先行事例、めっちゃ少ないな」ということです。
エンジニア組織・開発組織やマネジメント一般論のドキュメントは山のようにあるのですが、プロダクト開発と密接に関わるライティング組織に関する事例や、他のチーム・組織との関わり方について触れたものは、Splunkのライティングチームがまとめた『The Product is Docs』以外は寡聞にして知りません。
とはいえ、少ないことを嘆いていても仕方がないので、まずは自分自身が出せる情報を出してみようと思います。
3つの役割
SmartHRのUXライティンググループは「一貫性のある・わかりやすいコンテンツを作り、探しやすく配置して届けることで、ユーザーと社内の誰もがつまずかずに業務を完遂できるようにする」をグループビジョンとし、24年1月からは5ユニットの構成になります。
5ユニットは役割で3つにわかれています。
以下、この記事では3つの役割がどんなものかを説明します。
開発チームへのイネイブリング&一貫性の担保
1つ目は、開発チームへのイネイブリングとプロダクト全体の一貫性を担保する役割です。
SmartHRでは、主にプロダクトサイドの組織において、2023年6月頃から『チームトポロジー』の考え方を取り入れた組織作りをしています。
チームトポロジーについて簡単に説明するのは難しいのですが、ざっくりいうと、技術や人、ビジネスの変化に継続的に対応できる「適応型組織」を、4つのチームタイプと3つのインタラクションモードでモデル化したものです。
SmartHRの開発組織は、PMとPdEを中心とした7±2名程度の「ストリームアラインドチーム」と、ストリームアラインドチームの能力獲得・進化を支援する「イネイブリングチーム」としてのQAエンジニア、プロダクトデザイナー、UXライターで構成している、という整理がされています。
以前はUXライターなども「開発者」としてストリームアラインドチームの一員という位置づけだったのですが、チームで完結できる範囲が増えたり、バリューストリームマップが短くなるというメリットと同時に、チーム内のコミュニケーションコストが増えるというデメリットも発生していました。
そこで、開発チームの自律性は保ちつつ、開発チームの人数が増えすぎないようにするため、UXライターと開発チームは、以下のような関わり方を目指すことにしました。
UXライターは、UXライターがいなくてもフィーチャーリリースに必要な文言やヘルプページの作成ができるよう、開発チームにUXライティングの職能を移譲する
開発チームに職能を移譲し、チームから離れた後も、チームではカバーできない高度な部分を担ったり、サポートしたりする存在として開発チームに関わる
複数のプロダクトを包摂する「SmartHR」のコンテンツ(プロダクト上の用語や文言やヘルプページなど)全体の統一感づくりの旗振りをする
このような関わり方の方針があり、その後「これってどうやら『チームトポロジー』という本の中に出てくるストリームアラインドチームとイネイブリングチームという概念と近いっぽいぞ」という発見を経て、「開発組織全体でチームトポロジーの考え方を取り入れてみよう」という流れで現在に至っております。
UXライティンググループでは今後、開発組織の3つのドメインに合わせて、労務ユニット・タレントマネジメントユニット・プロダクト基盤ユニットという3つのチーム構成で、イネイブリングチームとしての役割を担っていきます。
個々の開発チームに対するスキルや考え方の移譲に加えて、各開発チームが共通で使うSmartHR Design Systemのガイドラインを整理・共有し、開発中の個々の判断にかかる時間を短くすることで、開発速度の向上にも貢献します。
また、各開発チームが共通のガイドラインのもと、統一した表現をアウトプットすることで、マルチプロダクト環境におけるユーザーの学習コストの軽減に貢献していきます。
サポートコンテンツのプラットフォーム
2つ目は、サポートコンテンツのプラットフォームチームとしての役割です。
SmartHRが事業戦略としてマルチプロダクト化を進めていく中で、ヘルプページの制作をストリームアラインドチームが担っていく以上、共通の基盤をマネジメントしていくチームが必要です。
以前からヘルプページを書く開発チームにとっても使いやすいヘルプセンターを自社開発して運用していたのですが、23年の7月に、ヘルプセンターの運営も含め、プラットフォームとしての役割を担うチームを作りました。
このチームはまだ立ち上がって間もないのですが、今後、各ストリームアラインドチームで共通して使えるコンテンツ指標を定めたり、コンテンツごとの指標を可視化するためのダッシュボードの提供、使い方のレクチャーなども担っていきます。
また、各ストリームアラインドチーム単位では検討しにくい、サポートコンテンツ全体の情報設計なども進めていけそう、という期待を持っています。
利活用コンテンツで課題解決に貢献する
3つ目は、カスタマーサクセスやカスタマーサポートなどの顧客対応チームと共にストリームアラインドチームとして、ユーザーの課題解決に貢献する役割です。
SmartHRというサービスの価値が生まれるのは、プロダクトをリリースしたときでも、ユーザーがSmartHRにアクセスしたときでもなく、SmartHRを使ってユーザーが目的を成し遂げたときです。
開発チームへのイネイブリングが進み、これまでUXライティンググループが開発サイクルの中で持っていたタスクが開発チームのタスクになることで、プロダクトの隣接領域にもコミットできる体制ができてきました。
そのため、24年1月から「サポートコンテンツライティングユニット」というチームを作り、ストリームアラインドチームとしてより積極的に動いていくことを目指しています。
最後に
このように、SmartHRのUXライティンググループは、今後はグループ全体としては3つの役割を担っていこうとしています。
そうなると、現在「UXライティング」としているグループ名ではなく、3つの役割を包摂するグループ名、具体的にいうと「コンテンツデザイングループ」という名前に変えるのもありかなと考えています。
冒頭でも触れたように、UXライティンググループのグループビジョンは「一貫性のある・わかりやすいコンテンツを作り、探しやすく配置して届けることで、ユーザーと社内の誰もがつまずかずに業務を完遂できるようにする」です。
Content Design Londonによるコンテンツデザインの定義 "It’s about using data and evidence to give the audience what they need, at the time they need it and in a way they expect.” には、勝手にシンパシーを感じています。
今後、どのような名前の組織に変化していくかはわかりませんが、SmartHRのようなB2B SaaSにおいて、ライティングの専門性はどのように機能するのか、という部分はまだまだ開拓の余地があると考えています。
SmartHRのUXライティンググループに少しでも興味を持っていただけたら、まずはカジュアル面談などの場から、お話しさせていただけたらうれしいです!
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