椿組キネマの大地

2月15日、夜は、椿組「キネマの大地ーさよならなんて、僕は言わないー」(脚本・演出:鄭義信、主題歌・山崎ハコ)を見に新宿シアタートップスへ。
昨夏、惜しまれつつも39年間続けてきた新宿花園神社野外劇が幕を閉じた。座長の外波山文明最後のプロデュース作品ということで、ハコさんからお誘いを受け、新宿シアタートップスに駆けつける。
物語は、満州映画協会(満映)を舞台に昭和19年から20年までの最後の2年間を描く。
徴兵された撮影助手の代わりに日本から満映にやってきた池田五郎(十河尭史)は、撮影所のスケールの大きさに舌を巻く。
五族協和のもと、日本人と中国人が共同で映画を作っているが、さまざまなトラブルに見舞われる。
勝手気ままな監督・永澤(鈴木幸二)に振り回されて、理不尽な度重なる書き直しに翻弄される脚本家、王国慶(趙徳安)。
スケジュール変更や様々な注文に真正面からぶつかる助監督、張凌風(外波山流太)。
絶えず喧嘩をしながらも3人は絆を深めていく。
日本人も満州人も同じといいながら、差別や分断に苦しめられる満州人スタッフ。

スターになるために様々なことを呑み込んでいく炭鉱町出身の女優、陳美雨(山中淳恵)、陰気な照明技師、北川正彦(佐久間淳也)、日本からやってきたスター気取りの俳優・澤田(犬飼淳治)と謝ってばかりの付き人・大森(鳥越勇作)、鉄の女と恐れられている編集&スクリプターの佐藤みねこ(長嶺安奈)、いかず後家を自負する衣装係の西山乙子(井上カオリ)と美粧担当の大和田勝子(岡村多加江)、凌風の義父でアヘン中毒の佐藤三重吉(外波山文明)など個性的な登場人物が揃っている。
そして、甘粕正彦をモデルにした
満映理事長の高村國雄(斉藤健)は、謹厳実直で日本人にも現地人にも平等で映画作りに情熱を傾け、豪放磊落で酒癖が悪いなど史実をもとに魅力ある人物像に作りあげていた。
一方でアヘン密売で財を成した影の部分が薄くなり、ただの好人物になっていたのが残念だった。
清濁合わせ飲む怪物感が足りない。
高村は敗戦直後の1945年8月20日、青酸カリを飲んで自殺する。
ハリボテの満州は終焉を迎える。
だが、撮影所は残る。その遺伝子は東映に受け継がれるが、それはまた別の話。
満映から東北電影と名前を変えて再出発。登場人物が皆、第二の人生を歩み出したところで幕となる。
映画作りの情熱と椿組の集団創作へのパワーを重ね合わせて、外波山へのオマージュに見立てているあたりはさすが鄭義信。
2時間30分、椿組らしい活劇だった。

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