寂しさにまつわる宴会
蒲田温泉の宴会場で芝居があると聞いて驚いた。
場所と座組に惹かれて、2月1日、京急蒲田駅から徒歩15分の蒲田温泉2階宴会場が舞台の「Projectumï」旗揚げ公演「寂しさにまつわる宴会」へ。
ポップで派手なチラシはドン・キホーテと同じデザイナーらしい。かなりチケットが売れたらしい。
「寂しさ研究家」で、主宰兼、作・演出・出演の上田久美子は元宝塚のヒットメーカー作家、演出家。
2015年の雪組公演「星逢一夜」で読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。
他に大衆演劇で絶大な人気を誇る三河家諒、フランス国立高等演劇学校で学び、フランス俳優国家資格を持つ竹中香子。華々しい肩書きを持つ三人の異種格闘技戦。
宴会場は、ビール片手の観客や風呂上がりのお客さんの熱気に溢れていた。
圧倒的に女性客ばかり。70人の観客のうち男性は10人もいない。
テーマは「推し活」と消費されてしまうアイドルと疲弊するファンの関係を描いたもの。
たまたま見た大衆演劇の雑用係のような役者(三河家)に惚れ込んだ工場勤めの女性(竹中)が、なけなしのお金を役者に注ぎ込み、やがて破滅していく二人をトークと解説を挟んで進めていく。
トークは上田久美子の司会で二人の背景を語る。
物語は三人で合宿をしながら、質問形式で人物像を作り上げたという。
美空ひばりの「愛燦燦」の歌に合わせて三河家諒が踊るラストシーンが白眉であった。やはり間近で見る輝きは只者ではない。
竹中香子はおよそこんな芝居は初めてだろうが、圧倒的な台詞回しでキャリアの違いを見せた。
宴会という名の芝居、芝居のような宴会。
上田久美子には、音響照明など一切をこなして元宝塚の大演出家から裸一貫出直す覚悟が見える。
もはや、ありきたりの芝居はやりたくない。
劇場から出て、あらゆる場所で演劇を立ち上がらせる。
次回、竹中香子は福祉の現場でケアの芝居をやるという。
新しい芝居の場所を作ろうとする三人の悪戦苦闘から目が離せない。