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外で食べた忘れられないPNKT飯(中編)
前回は大阪駅前ビル某店で遭遇した白米をおかずに白米を食べさせる「ライスコロッケ定食」をマクラとして紹介した。
わざわざ「外で食べた」というのにはわけがあって、たまに自分で作る時はPNKT飯になる確率が高いから別に珍しくもなく、またこういった場所に書いてわざわざ人目に晒すようなものでもないからだ。
どうせ自分がやらかすようなこととしたら、火加減や加熱時間を誤ったり、材料の準備、下ごしらえを中途半端にしたため手順が狂ったり、材料を加熱する順番を間違ったり、あるいは、包丁で怪我をしてしまったり、というようなありがちなミスだ。あまりにも平凡すぎる。
一方、店であればお金を取っている以上、ミスった状態のものを客に出すわけにはいかない(はず)。また、手慣れた料理人が作るのであれば、先に挙げた凡ミスが起こる確率も低く、また起こってしまったとしても、リカバーする技術を持っているか、そうでなければ始めから作り直すことだろう。
しかし、ヒューマンエラーは必ず起こる。自分はPNKTだから身をもってそれはよくわかっている。
自分の「完璧主義のくせに小さなミスを連発する」傾向には、平素気をつけていてもなかなか改善しないため、自分でも困っている。本当なら第三者による度重なるチェックが望ましいのだが、それが実行されることは自分の経験上では殆どない(まあ本当に困るものであれば修正や、やり直しを言ってくることだろう)。
だから本人が入念にダブルチェックをするしかないのだが、これとて決して当てにはならない。
たまに自分が配信しているメルマガで、記載内容の間違いを指摘する返信をもらうことがある。軽微な間違いなどは見逃されているか、そもそも読まれてもいない可能性があるだろう。
そこまでちゃんと読んでわざわざ返信までしてくれる人が(に限って)、ライブには、来ないのである。ただただお手間をかけてしまって申し訳ないと思う。
閑話休題。
ここで「PNKT飯」と呼んで紹介したいのは、お店で「ミスって出しちゃった」食事のことである。
まあ前回のものだって、「献立のミス」と言えば言えなくもないか。
先にも書いたように、本来であれば、ミスが起こった時はリカバーするか、最初から作り直すものだろうから、ミスったまま出てくるということは珍しいケースでもあろう。そして、そんなことが頻繁におこることもないだろう。
そのような「お店では普通食べられない」「多分二度と出会うこともない」食事に出会ったのは昨年のことであった。
やはり大阪駅前ビルである。今回も店の特定を避けるために店の詳細には触れない。
定食680円という値段に惹かれて入った揚げ物屋さんである。
もちろん主菜は揚げ物で、そこに味噌汁と白米がつく。
主菜の揚げ物は見たところそれほどボリューミーなインパクトがあるわけではないし、付け合せの野菜もキャベツの千切りが控えめに乗っているという非常に地味な感じだったが、値段を考えれば相応というところだった。
問題は白米であった。前回も白米絡みの話だった。
自分が日本人だからかどうかはわからないが、「しろごはん」についてはいろいろと思うところがあるようだ。
いつも目にする白米に比べて、やってきたそれは表面上の水気が多いように感じられた。
口に入れて噛む。
見事なまでのアルデンテだった。
アルデンテな白米。
圧倒的な歯ごたえ。噛み締めても味ではなくボソボソとした食感だけが口の中に拡がる。
とんかつをおかずにアルデンテなパスタ、というならありかもしれない、いやないだろう。
主菜の揚げ物の衣がカリカリなのと相まって咀嚼に時間がかかる。
よく噛んで食べる練習なのか。穀物ならわかるがそもそも白ごはんだぞ。
白ごはんを噛んでいるうちに揚げ物のほうがさっさと存在感を消してしまう。
次第に腹だけが膨れていく。
ランチタイムに半生の白ごはんを出さなければいけなかったとは、何が起こって、どのように、何を、どの工程でミスったのだろうか。
普通に考えれば、水に浸けておく時間が圧倒的に足りなかったということだろうが、なぜそういった事態になったのか。
そもそも、白ごはんがこのような状態だということに店の人は気づいていたのだろうか。
まあ、炊きあがってから気づいたとしても、もはやランチタイムのかき入れ時に蒸らし直す時間はなく、ええいもう出してしまえ、という判断に至ったのかも知れない。
キャンプの飯盒炊爨で失敗したご飯を食べた時のことを思い出した。
キャンプで食べるのであれば、ボソボソのご飯にだって、シャバシャバのカレーと非日常感というスパイスがある。
しかし、駅前ビルの食堂街でサラリーマンが限られた休憩時間に一刻を争うように食べるランチに「アルデンテご飯」は殺伐さを付け加えるのみである。
たとえおかわり自由だったとしても頼むことはなかっただろう。
安い米を下手に炊いたと思われる白米が出てくることはままあるが、完全に炊き方を失敗したアルデンテご飯を食べたのは生まれて初めてのことだった。
そして最後であって欲しい。
(つづく)