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救急車を呼ぶこと

唐突ですが、救急車を呼んだことはありますか?
事故などでけが人を目の前にしたときに経験したことがある方はいるかも知れません。

経験があっても、自分や家族の体調が悪い時に、いざ119をするという時は、救急車を呼んでいいものか悩んだり、ためらったりするもではないでしょうか。

在宅療養をしている家族の場合どうでしょうか。

退院の話しが進んで、私たち訪問看護師に依頼があった場合に、退院前カンファレンスといって病院スタッフと在宅の関係者が集まって情報収集をします。

療養する方がどんな説明を受けて、これから家でどんな生活をしていきたいのかを聞いて、退院後の支援方法を確認していきます。

このカンファレンス時に退院日を決めることが多いです。

在宅療養で関わるスタッフの中で、特に体調変化があった時に必要となる訪問看護は、可能な限り退院日から間を空けずに、初回の訪問看護の予定を組みます。


退院してからの1ヶ月、病状が安定していることが最初のハードルだからです。
この退院直後の期間に、本人や家族の困ったことへの解決方法がわかって、このハードルを越えられると、療養する方も在宅スタッフもお互いに安心感が増します。

だから、退院日からチームで関わることが大事だと思うのです。

退院カンファレンスでは、予測できる限りの病状変化への対応方法を確認します。

私たち看護師は、医師の指示のもと医療行為を行い、医師しか許されていない医療行為があります。
そこで在宅(家)で解決できない事態が生じて、病院に行かなければいけないことがあります。

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ある70歳代女性は病気のため食事ができないので、高カロリー輸液を鎖骨のところから入れていました。

退院したら昼間はご主人と二人で過ごしているので、ポンプでつながっている点滴をみるのは、ご主人です。
奥さんの病状を理解して、点滴で栄養を補うことを選択して、在宅(家)で療養することにしました。病気がすすんだら、入院することを希望しました。


退院カンファレンスで、病院から家族に「何かあったら(病状が変化したらという意味だと思いますが)救急車を呼んでください。迷う時は訪問看護に相談してください」と説明されました。

退院日から私たち訪問看護師は伺い、在宅(家)療養が始まりました。

それから、輸液ポンプのアラームが鳴ることがあって、ご主人からの連絡で私たち看護師は緊急訪問をしました。

到着して気づいたのですが、お宅にある固定電話のメモ用紙の一番上に、奥さんの名前と生年月日、住所が書いてある紙があります。聞けば救急車を呼ぶ時に慌てないように書いたのだそうです。

地域の役員をしていて、輸液の管理を難なく覚えた ご主人が、救急車を呼ぶことに不安があることを知りました。

それからは「まずは訪問看護に連絡をください。私たち看護師が救急車を呼ぶこともできるので、一緒に考えましょう」と伝えました。

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医療的ケアが多くても家で安心して過ごす時間が続くようにという視点、そのために医療が継続して介入することを病院と在宅の両方が重視できるかが、この不安を軽くするのだと思います。

救急車で病院に行くことを提案するのも、その一つではあるけれど「救急車を呼んで」と安易に伝えてはいけないのだと思うのです。

伝えなければいけない時は、救急車を呼ぶことへ抵抗があるのは当然だと、言葉を受け取る方の気持ちを踏まえた上で伝えなければいけないのです。


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