傷の手当を家でするのに便利なもの
私たち訪問看護師が家で手当することが多いのは、寝だこ(褥瘡)です。他には、転んでできた傷の手当や、皮膚の弱い方や血液サラサラの薬をのんでいると、腕や足に紫色の皮下出血が、今にも破れそうになって手当をします。
看護師は傷が新しくできていないかを、訪問する度に見てくるので、手当をする機会はたくさんあります。
傷を見つけたら、どんな傷の手当も洗うことから始めます。
この時重宝するのが、食器用洗剤の空き容器です。持ち歩く訪問バックに必ず入っています。
私が訪問看護を始めたばかりの20年前は「ママレモンの容器」と言っていましたが、今はチャーミー・キュキュット・マジカ・JOY等々、種類はたくさん。ホームセンターヤドラッグストアで販売されている食器用洗剤の容器。簡単に手に入るから、容器目的で購入して、洗剤を使いきったら、泡が出なくなるまで洗って乾かします。
これを持参して訪問するか、個人宅で用意して頂き、訪問した時に使わせてもらいます。
さて、傷を見つけたらどうするかと言いますと。
その空き容器に、お風呂のお湯くらいの温度のお湯を入れて、傷を洗います。洗浄するには流量や圧や温度が大切なのですが、丁度良い量の水分が傷と傷の周りを見事にきれいにしてくれます。
皮膚の表面がきれいになったら傷の状態に合わせて手当をします。
転んでできたばかりなら、傷よりほんの少し大きく切った市販のキズパワーパッドなどを貼ります。
大きさが肝心で、傷より小さいと絆創膏の縁で刺激されて治りが悪くなります。大きすぎると傷のない正常な皮膚が出てきた浸出液(傷から出る水のような汁)でふてやけて傷ができやすくなってしまいます。
切って大きさを変えるとはがれやすいので、フィルムなどで上から保護します。皮膚保護フィルムはドラッグストアなどで販売していますね。周りの皮膚も弱い時はフィルムでなくテープを使います。
お湯で洗浄した後で消毒薬は使いません。
傷の臭いや膿が出ていないかを気にしながら手当は続けて、臭いや膿が出て感染しているようなら消毒を使います。
消毒液は菌をやっつけてくれますが、残念なことに、これから吹いてこようとしている新しい正常な皮膚組織もやっつけてしまいます。
必要ない時に使うと傷が盛り上がることがなく、クレーターのように凹んだまま皮膚ができてしまうことがあります。
傷をきれいに早く治すには、とにかく洗うことが一番大切なこと。
食器用洗剤の空き容器に給湯器で40度に設定した水道水を入れればいいんです。
腕や足の皮下出血は、洗浄してから保護フィルムを貼ります。
寝だこ(褥瘡)は、傷に合わせた手当を最も必要とします。
感染兆候と傷の深さなどで使う軟膏を変えていきます。
同時に原因となる皮膚にかかる圧を取り除くことと、栄養補助として高タンパク、アルギニンを含んだものを摂ることも傷の治りに必要です。
体全体の血の巡りを良くすることも治りを助けてくれます。
原因が複雑なので時間がかかることが多く、治療で使える医療材料がたくさん出ているので、新しい情報に更新していく努力が傷を治すことに直結します。学んだ分、傷が良くなるので、本人や家族にも喜ばれて治っていく過程は看護師冥利につきますね。
他に使ってみたもの・・・100均のマヨネーズやソースの容器は穴が大きすぎて傷の表面にお湯が流れるだけで、汚れが取れませんでした。そして手当で出るゴミはパッドが吸った水が多い分重くなります。
ゴミは最小限にするのも訪問看護の目指すところです。
霧吹き状に水が出るスプレーボトルは、お湯が広がるばかりで傷の表面のヌメヌメした汚れが取れませんでした。
やはり、食器用洗剤の空き容器の穴の大きさが一番良く、汚れは取れるし、使うお湯も最小限です。
傷がある本人が動くことなく、手当する人は傷を良く見ることができるのもメリットです。
身近にあるもので便利に使えるものの1つです。
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