最後の身支度 エンゼルメイク(化粧)のこと
エンゼルメイクは、生前の姿をリアルに思い出せるように整えたい。
私たち看護師は、病気になってから知り合うので、パジャマにすっぴんしか
知らないんです。
在宅(家)では、多くの場合、お別れの時に、近所に住む親戚や友人がかけつけてくれて、大勢の人が集まります。
だから今までの生活を知っている親族にお願いしてみます。
「一緒に最後の身支度をしませんか」
ある人は、孫がチークを上手に入れてくれました。
それを見た家族は、泣き顔で「おばあちゃん笑ってる」と喜びました。
娘さんが色の濃いアイシャドーをしっかり入れて、
口には出さないけれど、驚いたこともりました。
娘さんいわく、ちょっとやんちゃした頃があって濃い色が好きだそう・・・私たちの知らない一面です。
「お母さんらしい顔」を息子さんの監督でシンプルに施した方は、
葬儀屋さんのメイクは断ったそう。
身内に美容師さんがいるとシャンプーをしてもらいます。
エステティシャンの姪が、本格的なマッサージをしてからメイクしたら、
肌が生き生きします。
エステの技術に感激します。
勉強になります。
手先までマニキュアで整えることもあれば、
普段から化粧はしないからと、一切手を加えない方もあります。
男性なら、ひげそりを息子さんや男の子の孫にしてもらいます。
ネクタイも男性の家族にお願いします。
衣装も大切。
家族に選んでもらいます。
娘たちに愛されたお父さんは、父の日のプレゼントのポロシャツ、
趣味を楽しんだ人は、カラオケのステージ衣装、
家族旅行で着たワンピースやスーツ
お百度参りの装束。
透析が長かったから、いつも着ていたパジャマ、
僧侶や茶道の先生は着物や袴。
帽子やメガネは必須という人も多い。
クリスチャンだった人は「キリストのお嫁さんになるから」と
衣装を自分で決めていました。
本当に様々。
それぞれの歴史や思い出が違うからその人を表す物が違います。
長く寝たきりだったお父さんに、おむつじゃなくて、パンツを履かせたいって、コンビニに走ってくれた息子さんもあったなぁ。
泣いたり笑ったりしながら想い出話しを聞かせてもらえるエンゼルメイクの時間を尊く思う。
家族の想いを叶えるお手伝いが、できていたならいいなと思う。