十二国記感想(ネタバレを含みます)

十二国記の世界観は、古い時代の中国に似ているように思う。「月影」から「白銀」までのシリーズを読み終わったため、感想を書くことにする。

作り込まれた世界観

十二国記の世界では、生き物は木から生まれる。木に実がなり、その実から生き物が孵るのだ。そのため、この世界では「女性が子供を育てて当たり前」という固定概念が存在しない。
また、単行本の冒頭には必ず地図が掲載されている。十二国の形だけでなく、州の位置など細かく決められており、本当にこんな国が存在しているのではないかと思ってしまうほど世界観が作り込まれている。

この世界では、王が麒麟によって選ばれる。麒麟によって選ばれた王は、道を外れたり、謀反によって殺されたりしない限りは不老不死だ。国によっては何百年も治世が続いている王もいる。麒麟によって選ばれたならば、道を外れることなどないのではないか、と思うが、歴史を見ると、長く治世が続いている王は思いの外少ない。玉座に座りながら、自己を保ち続けるのは思いの外難しい。
この世界では、血のつながりはあまり重視されない。王の息子だからといって、次の王になれるというわけではない。王に限らず、世襲制の役職はこの世界では少ないように思う。このような文化も、「蓬莱」の文化とは異なっていて面白い。

半獣

半獣とは、人と獣の二つの姿を持つ者たちのことだ。「半獣」として生まれることと、血筋は関係がない。両親が純粋な人間で、一人だけ半獣という例も珍しくはないだろう。半獣がどれぐらいの割合で生まれてくるのかは不明だが、純粋な人よりは少ないようだ。
この世界では、彼らのような半獣に対する差別意識が根強い。国によっては、半獣は畑をもらえないなど、不当な扱いを受ける。豊かな国でも、法的には平等であっても、腫れ物扱いされたり、嫌がらせを受けることもあるようだ。
この話は、私たちが住む「蓬莱」でもつながるものがある。物語の中の話だ、自分には関係ない、と片付けてしまうのは勿体無いように感じる。

最後に

シリーズ一巻目である「月影」は1992年に発行されている。33年も前の本なのに、今も生きている作品として楽しむことができる物語だったように感じる。
シリーズ自体は完結したが、本の中で、彼らが紡いでいくこれからの物語に想いを馳せる。

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