「愛なんですよ」とつぜん考察
導入
実早登です。
今回は愛なんですよ、ひいては椎奈真昼の考察をしていきます。
独自考察ルール等については「弱肉共食 とつぜん考察」をご確認ください。
早速始めていきます!
楽曲ステータス
〇推理難易度 ☆☆☆☆★ 4/10人
〇殺人描写推理難易度 ☆☆☆☆☆ 最難関。いつ、どこで、どう死んだ?
〇心情描写推理難易度 ☆☆☆☆★ 「恋」から「夢」に落とし込まないと難しいかも
〇殺人対象推理難易度 ☆★★★★ 尋問からも一択ですね
〇時系列推理難易度 ☆☆☆★★ 鳥籠パートにちょっとややこしい場所あり
〇反省度推理難易度 ☆☆☆☆★ 反省というより、夢と現実の葛藤
〇周囲環境推理難易度 ☆☆★★★ 考えられているよりはシンプル
〇必要リアル知識難易度 ☆☆★★★ 青い鳥症候群と試し行動程度
〇歌詞難易度 ☆☆☆★★ 先に心理を読んでからでないとただのポエム
〇ホラー度 ☆☆★★★ 初見MILGRAM知らなかったからただのラブソングだと思ってました でも最後…
〇胸糞度 ☆☆☆★★ 等価交換理論に気付いてからDay.16を見ると…
はじめに
ついにとつぜん考察も後半戦になりました。
長く続けられるか不安に思うところもあったので、とりあえずここまでこれたことはとても嬉しいです。
あまり突飛な事実を解明・紹介するわけではなく、メインが心理構造を暴くという考察シリーズのため、界隈の方には受けていないかもしれないという自覚はあります。でも個人的にはこれがめっちゃ楽しいので、懲りずにどんどんやっていきたいです。
それに、はっきりいって心理構造の分析はこのコンテンツには結構刺さっているとも思っています。
心理学を専攻されたクリエイターの方が心理をベースに構成したコンテンツだから、キャラクターの心理を解き明かすことができれば芋づる式に事件や動機も解明しやすくなりますし、今後起こりうることもそこそこ予想することが可能だと思っております。
もちろん完璧とはいけていないですが。受け売り知識の集合体ですし、私心理学専攻でもないですし…。散々考察しておいて二審で大外れだったりするかもしれないんですよ…。めげないけど。
こんな感じでこれからも進めていきますが、よろしければ今後ともお付き合いよろしくお願いいたします!
ということで今回はマヒルの考察です。
私が初めて聞いたMILGRAMの曲で、なおかつMILGRAMにハマったきっかけである曲です。恩返しみたいな感じになります!
後半戦になり、低難度の楽曲はなかなか残っていません。いかに心理の構成要素を細分化するかにかかってくるような気がします…。
マヒルは言ってることがわかりにくい。いっつも抽象的な話ばっかりしてきます。エスもそういってます。何ならマヒルだって自分のこと「語彙力ない」って言ってます。MVもそんな感じです。
だから難しい。あのMVを見て具体的に何が起こった、と言い切るの滅茶苦茶むずいです。感覚で行ったらたぶん詰みます。
そこで今回役立ちそうなのがパズル式考察です。パズル式考察はアフターペイン考察の時系列考察でも採用しました。今回は、被害者の死因推理(物理面も精神面も)に使っていこうと思います。
ハルカみたいな想像力で詰めるタイプの楽曲の方が最凶最悪の地獄だったため、あれよりは全然マシむしろ得意分野!と自分を奮い立たせたいです…。
被害者の死因
今回の考察は被害者の死因特定から始める。
どこからアプローチをかけるかは今までも曲によって異なってきた。弱肉共食は少年の正体、アフターペインは時系列、といったように。それは曲によって難易度の高い部分が異なるからであり、解像度が元から高いor分析がたやすく明確でもある部分から始めるとやりやすいのである。
はっきりいうと、愛なんですよのMV内に明確な被害者の死亡シーンは出てこない。
ただしそれっぽい場面はある。ここ。
マヒルの表情が一変したシーン。
はっきり言ってMV中ずっと浮かれポンチな雰囲気が続いていたが、ここで今までと釣り合わないほど明確に不穏なパートが挟まる。人死にがあった可能性ならここだと言いたい。マヒルが何かしたのだろうか?
ここで、殺人手段推理にうってつけの恒例のあの根拠を提示したい。
アンダーカバーの殺人立ち絵。
今回の立ち絵では、マヒルが倒れた被害者(エス代理)を後ろから手で絞殺している…ように見えなくもない。
本当に?
個人的には、絞殺説は否定したい。理由はかなりある。
一つ目。この事件の被害者はマヒルの彼氏。
このMVで言及されるマヒル以外の登場人物はマヒル彼氏である男性と、美容室の女性のみ。そしてボイスドラマでマヒルはヒトゴロシとなった理由を「愛」と述べ、その後も死の話に必ず恋愛の話を絡めるため、恋愛対象が死んだ、つまり彼氏が死んだと考えるのは妥当。
それにこんな尋問もある。ほぼ疑いようがない。
これが確定すると違和感に行き着く。
彼氏は男子大学生。マヒルは女子大学生。しかも身長が154cmとなかなか小柄。さらにランニングの際のテキストに「運動苦手」とあり実際にヘトヘトになっていた。彼女が男性を絞殺などできるだろうか?
そりゃ力を入れれば…となるかもしれないが、力を入れているうちに逃げられるだろう。
しかもアンダーカバーの立ち絵だとマヒルは寝転んだ体勢の彼氏の首に触れている。今まで考察してきたが、この殺人立ち絵は自殺のような例外を除き被害者の死の瞬間を描いているはず。
もしマヒルがこの体勢で彼氏を絞殺したのなら、わずか154cmの運動苦手な女性が大の男を後ろから転倒させ固めて抵抗もさせず起き上がる前に圧倒的腕力で絞め殺したことになる。そんなゴリラやだよ。
しかも後で判明するが彼氏はスポーツマン。絶対無理だって。
二つ目はマヒルのヒトゴロシについての意識。
先ほど挙げた尋問で、マヒルは生き返らせたい人に「好きな人」を挙げている。単純な話、生き返らせたいような人を殺すだろうか。
それにボイスドラマ「Love is mine」でも、「ヒトゴロシ」呼ばわりはともかく実際に人を殺したと言われると困惑しながら否定する。フータのような動揺ではなく、「さすがにそこまではしていない」というニュアンスで。
マヒルは価値観などについてはともかく、真の意図的な「殺人」というものには人並みの嫌悪感を抱いているようだった。そんな人間に、それこそ素手で生々しく相手の死を感じられる絞殺という手段がやすやすととれるだろうか。
三つ目はこの尋問。
いや直接殺人したらわかるだろ!!
意図的だろうと過失だろうと実際に殺人していたらこの発言はおかしい。せめて「悪くないと思う」ではないだろうか。「わかんない」は変。
四つ目。ここからは彼氏の本当の死因も考察する。
根拠にするのは二周年記念アートワーク。
これも以前の記事(特にアンビリカル記事)で被害者の死因や殺害方法を特定するのに役立つと解説した。
そして私は「事変上等とつぜん考察」記事でこんなことを述べていた。
(今思えばユノもなのだが)
他のキャラクターはまるで殺人をしたかのように飛び散った血痕が印象的だが、マヒル周辺の血痕は背景に限らず返り血も妙で、上から落ちてきている。
そして手についた返り血の法則についてもこれまで語ってきた。
マヒルは掌こそ見えないが返り血はない。このアートワークでは掌が見えなくても掌の返り血はわかるように描写されている(例:ハルカ、ユノ、ムウ、アマネ)。
それでもマヒルの掌付近には返り血の描写は一切ない。これはマヒルは被害者に直接手をかけていない証拠ではないだろうか?
マヒルが手を下しておらず、しかし彼氏が確実に死ぬ手段で、「上」のベクトルにまつわる死因は一つある。
首吊りである。
最後の五つ目の根拠も提示する。
MVの終盤、上から青い羽根が落ちてくるこのシーン。マヒルはこの羽根を見て表情を激変させていた。
そういえば、この羽根は直前こんな目に遭っていた。
マヒルが飛びつくことで大量に飛び散っていたのだ。ここでまた、今までの考察で考えてきた要素を挙げる。
「物が壊れたら高確率で人死にの描写」
「愛なんですよ」のMVは構造上静止画がとても多く、マヒルがヒトゴロシと呼べるような挙動をしているシーンはほぼほぼない。その中で唯一マヒルが物体に対してアクティブに働きかけていると言えるのがこのシーン。そして物体の破壊。
そういえば青い羽根はMV開始時点では上から常に舞い続けていた。
落ちてきているとはいえ絶え間なく健康的。しかしマヒルが羽根の山に飛び込んでからは…
なんということでしょう。
羽根は無残にも下に散らばっている。上からもう降ってこない。まるで青い羽根を持つ鳥が息を引き取ったような描写である。
そして静かに一枚の羽根が上から落ちて来る。上から。二周年アートワークスとベクトルが一緒。
この羽根は彼氏を指していたのではないだろうか?
このように、マヒルは直接彼氏を手にかけているとは思い難い発言や描写が多く、さらに死因のベクトルが「上」に集まっている。
最後の羽根が落ちてきた瞬間、彼氏は上にいたのでは?
というわけでこの記事では、彼氏の死因は首吊り自殺と判断する。
そうなると殺人立ち絵の意味も変わる。
殺人立ち絵は自殺などの理由で被害者が死んだ瞬間囚人が近くにいられなかった場合、代わりに囚人がその後被害者に近づいた際の情景を描くようになっていると思われる(例:カズイ)。
マヒルの描写は直接死んだと判断した場合違和感が多かったが、自殺と考えればその後を描いたと考えられ、違和感がなくなる。
雑誌が示す最終日はDay.16。服装も一致。この日マヒルは料理を作って彼氏の自宅で待っていた。しかし彼氏の帰りがおそらく遅くなったので寝てしまう。そして目を覚ますと彼氏が首を吊っていた。
当然あの絶望顔になるだろうが、まず降ろすのではないだろうか。この時点で彼氏はぐったりしているはずだから、立ち絵のような体勢になるはず。正しい救助法は不明だし正直助かる見込みもないと思うが、マヒルが助かることを願って彼氏の首を直そうとしたのなら、殺人立ち絵と全く同じ構図になるのでは。
エスの片方の靴が脱げているのも殺害としてはおかしかったが、自殺の拍子に片方のスリッパなどが脱げたと考えれば自然。
(ここまで言っておいて実は食べ過ぎ嘔吐説も考えていたりする…。理由はだいぶ後でかるく記載)
青い鳥を求め続けるロマンチスト
ところで、彼氏を表現するものが青い羽根と仮定してきたが、おそらく青い羽根が示すのはそれだけではないと考えている。
マヒルは直接彼氏を手にかけたわけではないのに、なぜ自ら鳥を潰すような描写がなされているのかという点を解明したい。。
…といってもここについてはもうファン間で有名な説が紹介されあっており賛同もできるので、ここでも活用したい。
青い鳥症候群とは、身近な幸せに気づかず、また現実を見ず理想の幸せを求め続ける人を指す言葉である。
このような様子はマヒル本人にも見られた。
Day.2において、マヒルは東京にやってきたことを喜ぶ。新鮮で楽しいと言いながら、「あとは恋の予感さえあれば言うこと無いんだけど」と足りないものを求めるような発言をする。かなり高望みである。
こういった描写をはじめとして、マヒルは交際を始める前からやたら恋愛をすること自体を求め続けている。
勉強集中しろ。
この服装を選んだ時点で彼氏となる男性にはまだ出会っていない。文中で「大学のテラスでその人と目があった」とあり、実際に目があったような演出があるためである。
にもかかわらず出会いの予感を引きつけるために服選びをしている。元から恋愛をするために生きているようにすら感じる。
たぶんこれもいつ始まるかわからない恋愛のための準備。
この恋愛脳は相当昔から続いているもののようである。昔から決めている巨大な(巨大すぎる)夢に向かって常に邁進続けているのがマヒル。
ペアの法則により、マヒルと対比できる囚人はシドウ。
シドウが究極のリアリストなら、マヒルは究極のロマンチストということになる。
(記事は男性を語っていますが、要素はだいたいマヒルにも通じると思います)
しかしマヒルは恋愛においてより理想に近づきたいと思ってはいるものの、理想を基準にし過ぎて当たり前の幸せの価値に満足できない。恋愛がないことに少し不満を持つせいで東京で新鮮なことができるという価値だけに満足できない。
ボイスドラマにおいても、マヒルは人を愛する素晴らしさを知ってしまい、それから毎日が輝いて色づいて見えた、当たり前の景色がドラマみたいに映画みたいに変わったと語る。さらには「恋が、愛がなければ私の人生はもう味がしない」「それがだめだっていうなら生きている意味がない」とまで言う。
この辺りの尋問も同じことを示す。
とくに「死んで残るもの」については、まだ「好きな人と結婚する」という最終的な目標を達成していないのに死んだら何も残らない同然、ということを言っているだろうか。
マヒルの目の色が変化するこの描写も同じ。まさに「毎日が輝いて色づいて見え」ている描写と思われる。
そう思うのはまだいいし、夢だけを追い続けるのも悪くはないが、他に問題があった。
マヒルは理想が大きすぎて、それ以外の小さな、しかしたくさんの幸せ(舞う青い羽根)に見向きもしない、あるいは満足しない。
さらにそれは自分に限らず、相手にも理想を要求する。
(記事作成が遅れた結果先に二審トレーラーが来てくれてよかった…)
完全には聞き取れなかったが「簡単な気持ちで好きって言わないでよ!」とは言っている。言葉を発した時系列は全員不明なのでここの考察は保留するが、マヒルの価値観に基づいた発言ではあるはず。
マヒル自身が全力で相手を愛して人生を捧げているのに、相手はその気持ちで向かってくれない。あるいはマヒルにとってそう見える。そのギャップがマヒルにとっては理解不能なものだったのかもしれない。
その結果、自然と落ちて来る幸せ(落ちて来る青い羽根)では物足りず、青い鳥そのものに飛びつき、価値観の圧力で潰す。
直接的殺人でないとはいえ、マヒルの行動が彼氏を明確に潰した描写と思われる。
とはいえ、愛がないと生きられないというのは一見感情移入しにくい思想に見える。相手に理想を押し付けるなよとか、別にそんなものがなくても我慢して生きてはいけるだろうという考えもできる。
ここまでだと正直恋愛をしたことがない人についてはピンと来ず、考察もしづらいと思うので、もう少し別の例を出そうと思う。
幼い時から野球選手になりたくて野球のためだけに人生を投資してきた人間が、やめろと言われて急に夢を捨てられるか?
野球に限らない。サッカー、他には音楽や美術、さらには大金持ちになる夢などなんでもいい。幼いころに大きな夢を持っていた人というのはそこそこいると思う。
ただその夢は時を経るにつれて変化していくものだが、大きくなっても変わらず志す人間もいる。そういう人間がたゆまず努力して、やがてほんの一握りが大成する。
その人間はまさに文字通り、一つの夢のために人生を賭けている。
スポーツ選手は食事管理をし、芸術家はアイデア取得のために関係ない経験を重ねる…など、人生にまつわるすべての出来事が夢のために存在する。大きな夢を抱える人ならありがちな考え方である。
それを急にやめろといわれて、はいわかりましたと捨てられるか?
人によるが、人生レベルで賭けている人ならおそらく無理だろう。それどころか他人の害になると言われても、それでもどうすればいいかわからないかもしれない。相手の死や苦しみがどうでもいいわけではない。むしろ傷つける意図はない。ただ目標がない人生を生きるための手段など存在しないのだから、本当にどうすればいいかわからないのだ。現代版絵仏師良秀。
だからマヒルはボイスドラマで殺人の責任について問われた際、「私は人を愛することを赦されないの?」と聞いてきた。これを否定されてしまえば、今のマヒルはもう生きていけない。抜け殻になる。エスの「分からない」という回答はそういう意味では妥当な回答だった。
とはいえ大義を持つ人間も、普通なら自分の夢が人に迷惑をかけると知ったなら、自分の夢を譲らずとも迷惑になっている点だけを譲るなど工夫をしようがあることの方が多い。
ただマヒルはそうはいかなかった。彼女が恋愛を理想通り遂行しようとすると、彼氏に必ず理想という莫大な負担が直接かかる。理想を遂行しようとする以上、マヒルには回避しようがなかった。このどうしようもなさが、ヒトゴロシを招いたと思っている。
マヒルの理想の根源
ところでさっきから言っているマヒルの「理想」とは何を指すのか、どこが根源なのか。
それこそこのMVが恋愛雑誌風になっているのがヒント。こういう数日間分のコーディネートをストーリー仕立てで紹介するトピックはファッション雑誌あるあるだった気がするが、そんなに詳しくないので正式名称が分からなかった…。
ボイスドラマでマヒルは、自分をさらけ出すと相手も安心して自分のことを話してくれるようになる、と人心掌握術について語る。エスは自己開示の返報性について理解しているのか…と感心するが、それ自体は全く知らなかった。
この情報はマヒルが女性向け雑誌の恋愛テクニック集で得たもの。「レイン」という雑誌らしい。(ananとかがモデルか?)
まあこれはまだいいが、他にマヒルが参考にしているものは
恋愛小説、
ドラマ。
趣味まで恋愛に偏っているのはもうお察しだが、問題なのはマヒルはこれらの内容を全て真に受けて目標にしていること。
そもそもこちらをさらけ出せば相手が応えてくれるというのは、エスの言う通り「自己開示の返報性」として効果は確かにあるしれないが、それが全ての相手に全てのシチュエーションで通ずるわけではない。現にエスには通じていない。が、通じると本気で思い込んでいる。物語の世界で見るような理想を現実に持ち込もうとしているのだ。
だからMV全体が恋愛雑誌風なのでは? 物語のような人生を目指しているともいえるし、これは根拠がないがどこかの雑誌で見た特集にそのまま自分を当てはめているかもしれないともいえる。
具体的に言うと、漫画家を目指している人がバクマンに倣うようなもの。無理だろ
普通なら「参考になる点はたくさんあるが、まんま登場人物と同じ人生を歩めるわけがない」と一歩引く。だがマヒルは見たままに叶えようとするからとんでもないハードルができてしまっている。
しかもこれらの信憑性のない情報について妄信し切っているのも問題。
マヒルはやたら発言に言い切りが多い。例えば恋愛に興味がないといったエスに対して「ありえない」「恋愛は地雷みたいなものでいつか爆発するんだよ」と強く否定。先ほどの自己開示についても「自分がさらけ出せば相手も応えてくれるんだよ」といったニュアンスの言い切り。情報をうのみにしやすいし、しかも人類共通の価値観だとすら思ってしまう。
マヒルはプロフィールで「騙されやすい」ということも書いてあるくらい本当に騙されやすいのだとも思う。だからファンタジーすら呑み込み、とんでもなく高い理想を追ってしまうのである。
天然故の見返り要求
前項でも軽く触れたが、マヒルは騙されやすい。またそれ以外にもからかわれても厳しいことを言われてもへらへらしていたり、ボイスドラマだとヒトゴロシと呼ばれた際少し悲しそうな様子を見せるも、あまりにもすぐ切り替える。また相手の気持ちに鈍感で、心理的なテリトリーにずけずけと踏み入りがち(ボイスドラマでエスから自由に話せる機会は非常に少なかった)。
心理用語ではないが、まとめるとマヒルは超天然。
まずポジティブ。太陽のような女性と紹介されている理由の一つでもありそう。騙されてもからかわれても強く落ち込むことはないし、切り替えも早い。ヒトゴロシと言われてすら即次の話題に切り替えられるレベル。
ポジティブだからこそ好きなことを追求するのに苦労を感じず、純粋に楽しいと思える。MVにおけるおしゃれへのこだわりようは凄まじいが、同時に苦労せずただただ楽しそうにしているというのもなかなか凄まじい。
これについてはアプリのタイムラインでもユノとの面白い会話を見つけられた。(有料コンテンツのため原文は載せません)
大まかに言うとマヒルは炊事洗濯掃除なんでもできて、しかも純粋に好き。ユノは面倒じゃないの?とファンタジーを見るような目でマヒルを見ている。ユノはかなりリアリストだから、純粋に家事が楽しい女性なんて確かに信じ難そう…。
また純粋なため他人の悪意というものを信じず感じ取れず、また自身にも全くない。だから誰にでも分け隔てなく優しくできるし、非常に魅力的な女性に見える。さすがに当たりがきついフータのことは苦手なようだが。フータみんなから嫌われてて草
優しいが共感性はあまりない。シドウほど全くないというわけではないが、ロマンチストすぎて自分を中心とした独自の世界観の中に常に生きていて、その範疇の中で全ての人間を判断してしまう。そして自分の世界観の中で正しくない、理想にそぐわない異性の行動を許せない。
そして共感性がないために空気が読めない。マヒルは良く喋るが、相手に喋る機会を与えないレベルで喋る。そして他人のプライバシーにあまりにもずけずけ踏み込んできて、自己開示を要求する。これは雑誌で身につけた知識を真に受けまくっているのも一理あるが。
さらには気苦労というのをあまり感じないせいで相手の気苦労も分からない。だから相手に強烈な理想を押し付けても問題を感じない。自分がされても構わないのだから。
それどころか、相手を純粋に信じているので当然見返りが帰ってくると思っている。
最後に、この世界の事象全てに意味があると思っている。
これもタイムラインでユノと喋っていた内容だが、マヒルは全てに意味があると思って生きてきたという。これもロマンチストらしい思考である。
だから自分の与えた善意には必ず等価の善意が返ってくると信じている。そうでないなど信じられない。ポジティブな公正世界仮説。
このファンタジー思考の究極はこの尋問。
22歳ですよね!?
これらがマヒルの恋愛に絡んでくるとどうなるか。
マヒルが彼氏のために一方的に大量に奉仕をし、さらに等価の見返りを求めてくるようになる。
MV精査をしないで先に心理考察をしたのは、ここまで解いたことでやっと次項の問題が分かるからである。
彼氏を死に至らせたもの
彼氏は自殺したと推理したが、なぜ自殺に至ったかをまだ考察していない。この推理では、ここまで推理したマヒルの心理内容をフルに使う。
出会って初期から彼氏のテリトリーに踏み込んでくる。会ったばかりでランニングに食いつくとは…たぶん本人疲れてても嫌とはこれっぽっちも思ってない。
恋愛雑誌・小説・ドラマのような理想の恋愛を達成するため、全力でメンテナンスし全力で奉仕。
だがもうこの時点で噛み合っていない。「彼は鈍感だから気づかないんだけど」。確かに彼女のファッションの変化に気付ける男性は魅力的だが、毎日毎日それに付き合うために目を凝らさなければならないのはひどい心理的負担。もともとオシャレにあまり興味がない男性ならなおさら重圧。
彼氏の外見の要素が唯一登場するのがこのシーンだが、おそらく自身のファッションにあまり頓着が無い方。趣味がランニングというのもありどちらかというとスポーツマンな気質で趣味が異なるのだと思う。そんな人に感性の強要をするのはかわいそう。
さらにここからが問題。マヒルは自身の恋愛のために彼氏の時間を奪い続ける。特に
夜中、
夜中、
夜中……
自殺する前に寝不足で死ぬわ。
夜中の出来事は全てマヒルからのアプローチ。しかも寝ている最中、コンビニでの待ち伏せ、執拗な誘いと全部強要。逃げようがない。憶測だが彼は途中からランニングなどできなくなったりしていないだろうか。自分の趣味を捨てさせられる彼女とは付き合いたくない…。
もうひとつ忘れてはならないのが、
大学には試験がある。講義の前にすべき勉強だってある。
就活だってある。大学生はやるべきことがたくさんある。彼氏に自分のすべきことをする時間はあったのだろうか?
そして極めつけはこれ。
前項で話した内容をおさらいする。
マヒルは彼氏のために一方的に大量に奉仕をし、さらに等価の見返りを求めてくる。
この場面でマヒルが与えてきた奉仕は何か。
彼氏の好物をすべてチェックし、それに基づいた食べきれないほど大量の豪華な料理を準備し、彼氏の自宅で待機。
これと同じことしろって?
あるいはこのレベルの奉仕を返せって?
ほな、死ぬわ………………………………………………………………
それだけでなくちゃっかりテリトリー侵害。ただでさえ彼女の束縛がきついというのに、唯一関わられなくて済みゆっくりできるかもしれない自宅に帰ったら、マヒルが寝てる。起きたらたぶんまたうるさいし、料理一つ一つの感想も聞いてくる。
たぶん彼氏帰ってきてテーブル見て絶句した。気も狂うだろう。
マヒル自身は愛のためにする努力は一切苦にならない。だから相手も苦でないと思ってしまう。
マヒルのこの傾向をこの記事では自己中心性バイアスと捉える。
例えば自分が辛くないことは相手も当然辛くないだろうと思い込んでしまう、自分を中心とした世界を持つ人らしい傾向。故に人の苦しみも分からず、空気もだいたい読めない。
自分ができたこと相手も勿論できるよね?
被害者の死因の直接的描写が最もないマヒルだが、推理する限り、おそらくこれくらいとんでもないことをやらかしていた。
「愛なんですよ」じゃ済まされない。人によって返せる愛は違う。強要したのが罪。
(なお死因項でしれっと言っていた食べ過ぎ嘔吐説は、マヒルの理想になんとか応えようとした彼氏が無理矢理すべての食べ物を胃に詰めた結果嘔吐窒息したという説である。根拠は少なめだが、流れ的になくはないかな程度)
16日メモリアル
もう少し心理考察の余地はあるが、一度MV精査に入る。おおまかな心理構造は把握できたのでやっと意味が分かる箇所が増えていると思われる。
どこまでが婉曲表現でどこからが現実か
愛なんですよのMVは婉曲表現の割合が多い。というか婉曲表現の使われていないシーンはゼロ。一切現実がそのまま描かれないのは、確かに常に高望みしているマヒルらしい。
だがその中でもMVには大まかに二種類のパートがある。
一つは恋愛雑誌風パート。16日分の出来事は大概ここで語られる。外枠の雑誌風のデザインはもちろん婉曲表現だが、その中に写るマヒルの写真風表現は余計な描写が少なく信憑性が高い。
もう一つは鳥籠の中のパート。マヒルは基本中央のソファに座っている。
一見マヒルの自室か彼氏の自室かと思うかもしれないが、オレンジ色一色の背景や、鳥籠あるいは牢に似た部屋は一般的な大学生の家とは思えないし現実とも思いにくい。よってこれも婉曲表現。
しかし恋愛雑誌風パートは明確だからともかく、鳥籠パートはどの時系列に位置するのだろうか。
真っ先に浮かぶのはDay.16。理由は着ている服装が全く一緒だから。
またこの日付が最終日かつ死ぬ理由として相応しい内容になっているため、絶望顔のシーンはDay.16を示していると考えてよさそう。その前の寝ているシーンも、待ちくたびれてソファで眠ってしまったと考えられる。丁度彼氏の部屋は後ろにソファがある。
しかし鳥籠パートがDay.16だけを示すとは言えない。
MV冒頭の一目ぼれするようなシーン。このシーンはDay.16ではありえない。そもそもDay.16においてマヒルと彼氏は生きた状態で顔を合わせることはない。
ではこのシーンはどこにあたるかというと、おそらくDay.3。
このシーンのマヒルは座った状態で本を読んでいる。そして彼氏になる男性と目が合い、一目惚れする。
そしてMV冒頭でも同じことが起こる。
本を読んでいる最中に何かを見て目の色をガラッと変える。
読んでいる本のデザインこそ異なるが、本のサイズやシチュエーションは全く一緒である。
Bメロで完全に惚れ、彼氏の顔を覚えるためなのか走って行くシーンも含め、この場所はDay.16の服装のままDay.3を表しているのでは?
といったように、鳥籠パートはDay.16のパートと鳥籠・ソファの背景を維持したまま、どこかの日にちの出来事を演出する役割を持っていると考えられる。
そのうえで(ほぼ)全日程を見ていく。
冒頭
「家の中」とあり、さすがに他人の家でできそうにないスキンケアをしているので、ここはマヒルの自室。よく見ると後ろのポスターにもタイトルが。
「大学の試験期間が終わって」とある。大学の大規模な試験期間と言えば夏季休暇か冬期休暇直前なので、この時期もそのあたり。
さらにいえば夏にはとても着たくないモコモコ素材の長袖服や靴下を着ているので、冬期休暇直前と思われる。
まだ恋愛は始まっていないが、夢のためにもともと邁進していたということが分かる。
Day.2
いきなり春。冬期休暇をすっ飛ばす。
そもそもこのMVにおける16日は連続した16日を指していない。このように時期が頻繁に飛ぶため、ある程度の期間の中から重要な16日をピックアップしていると考えるのが自然。
東京に来ているというのは旅行だろうか?雑誌のコーヒースタンドが気になってわざわざ県外まで赴くというのもマヒルの行動力や理想重視さをよく感じる。あと、しれっとマヒルが東京以外在住というのも判明。
他の項でも解説したが、せっかく毎日が新鮮でもマヒルの目指す目標は結婚なので物足りなさを感じ、さらに高望みする。うーん。
また、いきなりDay.2から始まっているのが妙。ここは別の項で考察する。
Day.3
考えすぎ
これも解説済。勉強中でもおしゃれに気を抜かず出会いに備えるマヒル。
純粋さや善良さ・天然さ・おしゃれへの気遣いから男性受けは超いいに決まっている。決まっているんだけどいざ付き合うと…こんなんわからん。
この後鳥籠パートが挟まる。状況としてはDay.3の続きとしても自然。
Day.4
マヒルは彼氏と同じことをしたがりなようである。そのかわり彼氏にも自分と同じことをしろというのだが。
パンを買いすぎるというのはかなり困ると思うのだが、ポジティブなため気にしていないし、それどころか恋愛に関わる全てを楽しいと思えるタイプなのでたいして困っていないと思う。
ところでマジでパン多いな? ランニング趣味のスポーツマンな男性だからめっちゃカロリー必要なのだと思う。もうこの時点で方向性の違いに気付けよ…(気づいてもマヒルは困らないだろうけど)
Day.5
やはり彼氏と同じことがしたがり。付いてこさせる男性が優しいのか、やりたいとにかくやりたいと粘ったのか…後者な気がしている。
真似したがりは尋問でも見られる。変な人と付き合ったら大変なことになるぞ… 普通の人と付き合ったら普通の人が大変なことになるが。
Day.6
何故興味があったのだろうか。根拠はないが、雑誌でお勧めと言われた、あるいは小説やドラマのキャラがやっていたから説を挙げたい。
しかしネイルもピアスもしていいとはなんてフリーな職場なんだ。というかエプロンが私物なことに驚いた。制服というのがない職場らしい。
Day.7
春終盤。「新刊」とあることから、恋愛開始前からマヒルはこの作家の恋愛小説を愛読していた。こういったファンタジーにずっと影響され続けて、今のやりすぎロマンチシズムが完成している。
Calling
問 題 の シ ー ン
夜中に無理やり起こされた挙句寝落ちされた彼氏かわいそうすぎる。お互い様じゃないんよこっちはそもそもやらんのよ
電話がダイヤル式でやたら古い理由は今のところ思いついていない。
また、時系列が微妙に不明。Day.3はまだ男性と面識がないので有り得ない。無根拠だが付き合ってからのどこかの日にち(16日に含まれない)か、Day.16の彼氏帰宅前説を考えている(一向に帰ってこない彼氏を急かす電話。この場合「夜中」ではないが、MVと歌詞が完全に一致していないフェイクはMILGRAMあるある)
彼氏に怒りながら電話をかけ、自分から切って拗ねるが、(きつい言葉をかけたことを悪く思ってか、やはり早く帰ってきて欲しいのか)だんだん気になってきて再度電話し泣くように甘える、という流れ。
絵面こそ可愛いが、二審トレーラーで怒る時のマヒルの声は甲高くてかなり圧がある。あんな声で「早く帰ってきてよ!」と言われたら相当ストレスだろう。しかも追撃の電話もあり。
Day.8
記述はないがファッション的におそらく夏真っ盛り。前回から相当時間が空くので、男性との交流はMV以上にはあったと思われる。それでもほんの数ヶ月の交流で告白は早過ぎないか?
しかも待ち伏せからのド深夜数時間拘束。バイト上がりにこれは死ぬ。
断る要素ばかりふんだんなはずだが、男性側がヘトヘトだったうえに深夜に何時間も粘られて想像力が無くなったのかもしれない。一応可愛いし健気な子だし…と。死へ一直線なのだが。
Day.9
マヒルの服装が長袖になりだしたのでおそらく秋突入。地獄のお付き合いスタート。初めてのバーで人酔い潰すな。
マヒルの左にある英字を解読したところ、コープスリバイバーというカクテルのレシピだった。
コープスリバイバーにはレシピが4つもあるようだが、そのうちのNo.1のレシピが書かれていた。材料はブランデー、アップルブランデー、スイートベルモット(スイートベルモットはイタリア産なので、MVではイタリアンベルモットと記載されているのだと思う)。
カクテル言葉は「死んでもあなたと」。人生をかけた激重の愛に相応しいオーダー。
ちなみに度数33。ばか。あほ。
なんで一瞬でも彼氏が弱いと思った? マヒルの酒耐性強すぎだろ! 酒耐性強すぎだろ
Day.10
珍しく彼氏が登場しない。さらに、担当美容師という他人が登場する。彼氏すら一回体の端が映るだけなのに!!
しかし美容師にマヒルを変えることを期待してはいけない。美容室あるあるだと思うが、美容師は営業的にトークが上手い方がけっこういる。
マヒルの異常性を指摘するというより、マヒルにいい気分になってもらいリピートしてもらう為のトークと考えた方がいい。ジャンルは結局恋愛小説やドラマと変わらない。マヒルの理想を上げるだけ。
Day.11
えっマヒルと彼氏映画の趣味合うの…? 恋愛ものばっかり見てるマヒルと…?
と思ったらそこ君の名は。の階段やろがい!!
運命とか言ってるけど君の名は。は相当数の人間が見てるから運命って程じゃないと思う…。
Day.12
なんと彼氏から自宅に招いたらしい。ここまでされてもまだマヒルを愛せる彼は鈍感というか優しいというか、まだ盲目というか… あるいは圧力?
青い鳥潰し
マヒルが初めて鳥籠の外に目をやるシーン。柵に手をかけて何かを考えるも、頷いて笑顔になり、定位置に帰ってくる。
マヒルの心理構造を考えると、鳥籠は理想を表している気がする。
つまり青い鳥という究極の目標がいる理想の中に閉じこもっており、その外にある現実に目をやらない・向かおうともしないのがマヒル。
しかしこのシーンでは初めて外を物憂げに見る。このシーンは一瞬現実を見ようとした現れと考えている。
Day.12の後にこのシーンが挟まるということは、マヒルがよく覚えていないだけで、彼氏の家でマヒルが現実を見かけるような何かがあったかもしれない。彼氏の理想から遠い振る舞いを見てしまったとか。部屋が汚かったでもマヒルのファッションに無頓着だったでも価値観が合わなかったでも、ここはかなりいろいろ考えられる。根拠がないので。
そんなマヒルが言いそうな言葉は「簡単な気持ちで好きって言わないでよ」=好きなら私の理想をちゃんと目指してよ。推測になってしまったが、仮にこうだったら彼氏も酷いストレスだろう。
一時現実を見かけたマヒルだが何かを決心したように振り返るのは、「愛のために生きる」と決めたから。少し合わなくてもこれほど人生を輝かせてくれた、そして結婚という最終目標にかつてなく近い人を手放すことは出来ないし、大体そこまで気にしていない。現に何も覚えてない。
マヒルは何に恋しているのだろうか?
最終的にいたずらっぽい顔で青い鳥(=彼氏)に向き合い、理想を押し付けて潰す。
Day.13
右上に「Mahiru Winter Style」とあるので冬。親戚の結婚式。もうこの辺りでマヒルが厳密に何に恋しているかが分かってくる。
また、台詞のテキストが歪み出す。浮かれているのか周りを全く見なくなったのか色々な考え方は出来そうだが、マヒルが恐ろしい方向に進んでいっているのは分かる。地味に怖い。
Day.14
フランス映画については予測できなかったのでお任せします。根拠もあまりなさそうですが…情報提供いただければ…
ここでようやく彼氏の体が端っこだけ登場。本当に好きな人にこんな扱いする?
実は考察始めたてのときは彼氏非実在説も検証してはいたが、ここで彼氏の体が登場するほか、彼氏の存在がないと成り立たないイベントが多すぎるために没にした。
野外シネマなんて本当にあるんだ…。じゃあほかにも観客がいたんですね。
そして「どうしてもって誘った」もポイント。マヒルは軽く言っているが、ボイスドラマのように喋りやまないマヒルによる「どうしても」なら、本当に延々と粘ってきたと思う。ボイスドラマの時点であの話し方が苦手な人なら、強要なんてされたらさらにストレスフル。
Day.15
元日。その願いが冬のうちに敗れるとは皮肉な…
「誰にも邪魔されませんように」に束縛っぽさも感じる。彼氏がどんなに窮屈な生き方をしていたのかますます不安。
Day.16
タイダイ柄は2021年前後から再流行しているらしいので、やはりミルグラムの囚人はつい最近連れてこられたばかりなのだろう。
大体こんな量のご飯を彼氏は食べ切れるのだろうか。米料理二つあるが。
あれだけパンを食べていたとはいえそれでも厳しそう。さらに残したらマヒルの理想から外れる。きつい。
また、ちょうど年月が一巡していると考えると期末試験の時期もやってきている。恋愛だけにうつつを抜かしている場合ではないのだが、もはや八方塞がり。
あれだけ首吊り説を推しておいてだが、彼氏が無理して全て食べようとして喉に詰まらせて死んだ説もあるかも…と思ってしまった。アンダーカバーの立ち絵もワンチャン通る。
ラストシーンは言わずもがな。
婉曲表現の正体
青い羽根・青い鳥:当たり前の幸せ、彼氏
鳥籠:理想、自分の世界
恋愛雑誌:自己中心性、高い理想、ロマンチシズム
恋に恋する
ところで、恋愛雑誌パートで彼氏はびっくりするほど登場しなかった。美容師の方がまともに画面に映った。
マヒルは本当に「彼氏」が好きなのか?結論はノー。
恋する自分が好きなのだ。マヒルは恋に恋している。
花嫁さん(=結婚した女性)が好きなのも「キレイ」だから。添い遂げる相手自体を重視していない。彼女が憧れていたのは「自分の決めた人と結婚する」という夢そのもの。
大体本気で彼氏を愛していたはずなら、今もっとショックで動けないはず。なのに天然さが抜けず、発言はずっと明るい。
さらに、今度はエスに現を抜かそうとしている。人に浮気するなと言っておいて、自分は彼氏が死んだとたん即乗り換え。(彼氏がいる間は浮気しなかったが)
マヒルにとってキュンとできてなおかつ自分を理想の花嫁にしてくれるなら相手はそこまで問わない。そんなものは愛と言い難い。
そもそも優しくなくてキュンとしない人間や、軽薄そうで理想にできそうにない男性は対象外だが。
エスは自分を否定しそうになっているときに肯定(厳密には肯定ではなく保留)してくれたので自尊理論に基づいてときめいた。赦されなかったが、どうなるのだろうか。
歌詞から見る束縛
最後に歌詞をおさらいする。
マヒルの心理についてはほぼ解読し終えたが、マヒルが具体的に彼氏に何を言い何を迫ったかがまだ分かっていない。それはMVよりも歌詞に詰まっている。
「好きって気持ち分かったつもり? ならこのまま二人オーバーヒートで」
好きって気持ち(うん)(かわいい)
分かったつもり?(ファッ!?)(迫真)
マヒルが理想とし、なおかつ人類すべてに求めている「好き」という気持ちは壮大すぎる。そんなものを簡単に「分かった」と言われたくない。「分かった」というなら、もちろん自分の理想通りになってくれるよね?という、テーマに当たる強烈な圧。
「君だけに伝えたいことも君だけにもらいたいことも 愛なんですよ」
好きといったからには相手だけに好意を伝え、相手だけから好意を貰う完全に二人きりの世界に浸ることが愛なんですよ。そうか?
Day.15の「誰にも邪魔されませんように」もここに当たりそう。
「ああまあこの感じを幸せって言えちゃうんだろうけどさあ
どうにも足りない何かが存在している気がしてならないなあ」
典型的な青い鳥症候群。当たり前の幸せを軽視する。
「ねえどう?って聞かれて困ることなんて重々承知の上なんだけど
その顔見たくてつい言っちゃうんだ ごめんね?」
ここからマヒルがしていたことの本題に関わってくる。
マヒルは本気で腹が立ったりしているわけではない。具体的には試し行動をしている。
試し行動とは、相手の愛情を確かめたくてとる行動。
試し行動の内容・理由は多種多様でこの先も取り上げていくが、ここでのマヒルは「困った彼氏を見たい」からこんなことを聞いている。彼氏がこんなことを聞かれて困るということは、真剣に自分のことを愛してくれているのだ、と実感できるからである。
「抱きしめてくれなくちゃ心まで離れてしまうよ」
これも試し行動。ちゃんと行動で愛を示してくれないなら嫌いになっちゃうよ?とアプローチし、彼氏が応えてくれるなら愛されていると実感できる。
「いい子のフリをした「大丈夫」なんて嫌いだ」
ポジティブな曲調だが、そういえばさっきから否定的な話ばかり。彼氏へのお叱りのようである。
妥協して自分に全てをさらけ出してくれないなんて嫌だ、本当に好きならすべて見せて、という圧か?
「厭ってほどに縛ってみたり まだ不安になるのどうか赦してね」
相手を心身ともに束縛して、どこまで許容してくれるかを確かめて愛されの実感を満たす試し行動。
「君のこと試しちゃうときもたまにある別れの儀式も 愛なんですよ」
「試しちゃう」と言っている。まんま試し行動。試し行動の一環でわざと別れ話をし、引き留めてくれるほど自分を愛してくれているんだ!と実感する行為も愛なんですよ。そうか?
「寂しい時はお互い様 でもそろそろ怒られちゃうのかなあ
優しくされたら甘えちゃうので そこんとこよろしくどーぞです」
自分は夜中に電話されても恋愛してる実感があってむしろ楽しいから全然平気!だからあなたも平気だよね?寂しい時はマヒルみたいにやってね!
やらんわ。
そして試し行動でもある。同じく嫌がることをしても赦してくれるかどうかの試し。赦してくれたらどんどん甘えてヒートアップ。
「すれ違うこともあって傷付くことが嬉しかった
痛みはお揃いでしょ この病気かなりやばいな」
マヒル本人は恋愛をしている実感の全てが夢に見ていたものなのでどれも嬉しい。だから相手も嬉しいと思っている。マジで診断してもらおうね。
「好きって気持ち揃った二人から世界に向けた犯行声明」
マヒルの語る「愛」は世界共通の原理だよね?という呼びかけ。んなわけ。
「君の全部知りたいだとか叶わないなら死にたいだとか 愛なんですよ」
好きな相手の全てを知ろうとすること、好きな相手に全てのプライバシーをさらけ出すことは愛し合うなら当然。それを拒否されたら死にたいと言い出して相手の心配を誘い愛されている実感を得ることも愛なんですよ。そうか?
「作った笑顔下手っぴだけど ほら君のおかげで超いい感じ」
解釈が難しい。自分はちょっと笑顔下手だけど、彼氏はもっと下手だから相対的に自分可愛いね!みたいな感じだったら最悪だが…。全くの無根拠。
「バイバイをしたくない夜も君だから恥ずかしいことも 愛なんですよ」
もう夜だからここで別れようと言ってもごねて深夜帯ずっと居座るのも、聞かれてもいないのに自分の昔話やプライバシーをべらべらと喋りまくってくるのも愛なんですよ。そうか?
マヒルはボイスドラマで「曲を抽出され」て自分の全てを知られることを「恥ずかしい」と言っていたので、この歌詞の「恥ずかしい」は秘密があけすけになることを指しているかもしれないと予想した。
彼氏はだいたいこんなことをされていた。本当にご苦労様です…。
頻繁に試し行動をしてくるパートナーとは別れよう。
「奉仕」ペア、シドウ&マヒル
まとめとして、三つ目のペアであるシドウとマヒルを比較してみたい。
改めて「弱肉共食」で提示した楽曲ルールの一つを抜粋する。
考察開始初期は好きな人のためなら何でもする以外の共通点が見つかりにくかったが、分析していくとどこまでも似ていてどこまでも似ていない面白さがあった。
究極のリアリストであるシドウ。究極のロマンチストであるマヒル。
自分だけの生き方を通すシドウ。全ての人間に同じ生き方を求めるマヒル。
趣味という趣味がないシドウ。命を懸ける趣味があるマヒル。
自己を見せたら負けと考えるシドウ。誰の領域にでも踏み入るマヒル。
愛する者に最低限だけを求めるシドウ。完璧な理想を求めるマヒル。
秘かに人のふりをするシドウ。公然と自分であり続けるマヒル。
どちらも愛する者に自分の全てを捧げ、大義を追い求めた。
だが大義は成就する一歩手前で敗れた。
その思想は人を殺してしか叶わない思想だった。
だがその思想がなければ生きていくことができなかった。
誰も傷つけなくていいならそうありたかった。
自分の根幹をなす思想が世界からあってはいけないと言われたとき生きていけない人間がいて、それが二人である。
二人のような人間は他全員のために黙って耐えるしか生きる術はないのだろうか、となぜか考察していて悔しくなった。
別に彼らは楽しくて他人を傷つけたいわけではなくて、自分が生きていく以上どうしても他人にぶつかってしまうのである。
我々は化物と対峙しているわけではない。
マヒルは殺人そのものには基本的にまっとうな価値観を持っている。それに夢を最優先してしまうとはいえ、人が死なずに済むなら勿論その方がいいと思っているのだ。
自分の行いを否定されたからって襲い掛かってくるような人間ではない。
「あんまり優しくしちゃうと死んじゃうかもよ?」は、理想も譲れないが人を傷つけたくもない、そういったマヒルの葛藤を孕んだ台詞だと考える。
「自分」ではなく「理想の自分」を動物に例える。マヒル本人をマヒルはどう思っているのか。どうも思っていないかもしれない。
どうしたらよかったのかというのはぱっと思いつきづらい。今まで野球選手になるためだけに人生を賭けて死ぬ気で努力していたら「野球をするな」と言われ、手持ち無沙汰になった人間に何をしたらいいのかという話である。
マヒルのような人間は妥協無しで誰も傷つけず生きていくことはできない。せめて、マヒルが見たこともないような価値観や世界を見せ、「だれもが愛だけで生きているんじゃない」とばっさり証明することは必要かもしれない。そう簡単に聞き入れられないと思うが…
でもそれはマヒルに恋をするな理想を叶えるなと言っているわけではない。完璧な彼氏を求めるというのは無理かもしれないが、でも互いに想いあっていけばマヒルのような優しい人間はちゃんといい人と結婚することだってできる、という7~8割成就なら可能だということを分かってもらえればいいだろうか。
マヒルにとって妥協とは大きすぎる壁だろうが、でも他人を知ること自体が苦でないマヒルなら全くの無理ではないと思いたい。
理想を否定されたマヒル
マヒルは二人目の赦されなかった囚人。
かなり抽象的な楽曲で具体的に何をしたかもあまり分析されていなさそうなのに、なぜ赦されなかったんだ…?とやや疑問。逆にあんなに分かりやすく毒をまき散らしたムウが赦されたのも疑問。
今まで見てきたような理想を持つマヒルが赦されないということは、人生の主軸である理想を否定された、つまり死ねと言われているも同然ということになる。
憶測だが良くてエスへの反論、悪くて生気の消滅を予想している。正直後者が強め。タイムラインでは判決を受けてしばらくしてから「生まれてきた意味なんてあるのかな」とまで言っている。ここからさらに悪化するなら後者だろう。
恋愛するなと言われたらマヒルにはもう生きていく術などない。エス、ひいては我々はどうやって責任を取っていくべきだろうか。
その他考察
花言葉
マヒルの誕生日:1月17日
誕生花:ナズナ
ナズナの花言葉:「あなたに私のすべてを捧げます」
花言葉自体がそもそも恋愛関連の言葉が多すぎるので、当初絞りにくそうだと思っていた。
誕生日イラストでマヒルが持つブーケは白い。そのため誕生花の中では胡蝶蘭かナズナと思われたが、胡蝶蘭は花一つ一つがけっこう大きく主張が強いので、この細かい描き方はナズナではないだろうか。
バースデーケーキに使われているのはオレンジ。
オレンジは結婚・家庭などを司るギリシャ神ヘラを象徴する木で、花は結婚式のブーケなどに用いられる。
ケーキの形もウエディングケーキっぽい…でもそれだとハルカやフータもウエディングケーキっぽいぞ
苗字・名前
マヒルの本名は椎奈真昼。
彼女は太陽のような女性と例えられていた。昼・太陽と言えば天照大神。
天岩戸伝説は、ざっくり言うと須佐之男命の暴れっぷりを見た天照大神が天岩戸に引きこもって世界が暗闇になってしまったので、他の神々がお祭り騒ぎをして天照大神に不思議に思わせ、気になって出てきたところを引きずり出したという話。
もちろん天照大神のしたことがそうというわけでは全くないが、わざと怒ったり不満そうにふるまったりすることで彼氏に心配をさせるというマヒルの試し行動をこれに例えられなくもない。
椎の木は不明。天照大神を祀った伊勢神宮に明確な神木はないし、天岩戸神社の神木は招霊の木。
だが少し近い所だと、ヤマタノオロチ退治伝説に出て来る老夫婦の名前がアシナヅチ・テナヅチ(またの名を足名椎命・手名椎命)だったりする。でも一つの神の名前で完結しないのはどうもしっくりこない。要検討。
疑問点
・Day.1は?
MV考察項でしれっと言っていたこと。マヒルの16日メモリアルにはDay.1がない。
マヒルがモコモコの部屋着を着てスキンケアしていたのがDay.1では?と考えることも容易だし説としても十分。そのうえでもう一個疑問点がある。
冒頭の「女子力UPなときめく14item」には、マヒルが16日かけて着用するアイテムが並んでいる。これらが登場した日にちを確認してみた。
aのカットソーが登場しない。色味はともかくハイネックだから着ていれば首元ですぐわかると思うが、マヒルがハイネックだったことはない。
一応Day.14で着ているけどダウンとマフラーで見えない説もなくはないが、特定しようがない。難しすぎる。ズル
薄めの根拠だが、aのカットソーを着ていたDay.1がカットされた説も検討している。
理由もそこまではっきり思いつかないが、理想主義かつ青い鳥症候群ゆえに何事もなかったDay.1を軽視しており記憶にも眼中にもない…など。あくまで疑問点。
・嘔吐説
ちらちらと言っていた、彼氏の死因が無理にマヒルの料理を全てかっこんだことによる嘔吐説。残念な感じだがマヒルのテーマに沿っているうえに否定しきれなかったのでこれも保留しておく。
まとめ
MILGRAMに出会えたきっかけで、なおかつ曲単体で最も好きなこの曲をついに考察できてうれしかったです。
見た時から「この子は恐ろしいことをしたけどたぶん化け物なんかじゃなくて人間だと思う」という勘を信じて考察してきてよかったな~と思います。
考察するならあまりゴールを決めて考察しない方がいいんですが。自分の意見に合致する材料しか集めなくなるし。でもユノやハルカ・シドウは最初の予想から完全にずれたりしてるしたぶん大丈夫。たぶん。
恋という共感できない人には共感できないテーマの楽曲ですが、将来の夢という比較的分かりやすいポイントに着地させられたのも個人的には満足です。
大きすぎる夢のため人生かけて頑張ってきた人間ってめちゃくちゃ生きづらい…ということが伝わっていれば幸いです。やっぱり社会って変わり者に厳しい。もちろん囚人本人らも悪いとこ大アリなのは承知なんですけど、でも死んでほしいとは思わん。
シドウはマヒルに、マヒルはシドウにそこそこ影響与えられるかも?と思っています。語り合った先で現実主義も理想主義も、もうちょっと妥協してもいいのかなと思えたらいいのかなあ。難しいですね。
もう最終的に時間かけて反省してから人殺す直前まで時戻りませんか?
あとちょっとこの楽曲に感謝してることがありまして。
あるものをきます族だったんですが(最低)(ハルカ以下)、このMVを見て比較的おしゃれするようになりました。ありがとうございました。
熱ぶっ込んで各キャラの論文仕上げちゃうのも 気づいたら24,500字到達してるのも 愛なんですよ
ここまでお付き合い誠にありがとうございました!
次はカズイの楽曲・halfです。先に言っておきます。無茶苦茶時間かかります。苦手です。
そしてたぶん、満を持して相互Aさんの力を盛大に借ります。Aさんの最たる得意分野です。
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【MILGRAMとつぜん考察】