ショートストーリーVol.3 もどかしい時代
「グッズはおもちゃには入らないよね?」
結婚から10年。もともと突拍子もないことをする妻ではあったが、私は一瞬、硬直した。そもそも、話の内容に理解が追いつかない。なぞなぞの類だろうか。少なくとも帰宅直後の玄関で、おかえりにつづく言葉ではないだろう。
「——グッズ。玩具、グッズ、玩具。グッズの方が広義だとすると、“ グッズに玩具が包括 ”されている。故に” 入らない ”は正しい?」
くるりと踵を返して去っていく。どうやら返答は誤りだったようだ。
夕食を食べながら落ち着いて問答の解説をきく。どうやら、娘の見ているアニメのグッズが欲しいらしい。先程の不意打ちは彼女なりの照れ隠しだったのだろうか。
それにしても意外だった。不要なものは買わない!広告やマーケティング戦略に乗せられるな!などと、堂々のたまっていた倹約家のセリフとは思えない。
しかし、闊達な性格ながら趣味らしい趣味を持たない妻の要望は無下にするものでもない。私も長らく陶芸を続けさせてもらっている。
条件付きでOKを出した。娘に目くばせをしたのち、2人でよくわからないダンスを踊っている。オープニングの踊りらしい。ひさかたぶりに見る妻の機敏な動きだ。
それからしばらくして、”アニメのクラウドファンディングに出資をしてみてよいか”という相談を受けた。条件の範囲内であれば良いのでは、と返事をするとにんまりと笑う。クラウドファンディングに出資すると、後日、出資額に応じたグッズが手に入るのだという。——起源は、自由の女神に遡るらしい。お金を払って象徴を得る、なんだか高尚な仕組みかもしれない。
しかし、妻曰く問題が無いわけではないようだ。
1つの起案に対して、多数の個人からの出資があることによるプラットフォームの管理規模の拡大(曰くここにもお金がかかるらしい)。募集内容を明確に書くことによるアイディアの盗用リスク(不明瞭な起案が増えたりと全体的な不透明感につながっている、とのこと)。
そして、本来制作に使ってほしいと思って出資したお金からグッズがつくられる、というのは少し本末転倒な感じもする——そりゃ限定グッズも欲しいけどさ。らしい。
「そのリターンがないリスクもあるのでは」と尋ねると、「応援、なの!気持ち!なの!!一筋の希望なの!!!」だそうだ。悪気はないのだ、そんなに圧をかけないでおくれ。
募集の型式や運営事業者によって各々メリットやデメリットも異なり、リターン保証を設けているところもあるという。今後はどのように発展していくのだろうか——。
直接的な支援——ファンの力を集めてプロジェクトを成り立たせるという根幹思想は「クラウドファンディング」との共通点です。
しかし、「ブロックチェーン」を活用をすると「クラウドファンディング」よりも円滑に、よりクリアに、そしてより多くのお金をクリエイター側に回すことができます。
世界中に愛される、そして世界に誇れる日本の文化をより健やかに発展させていくためには、ファンの想いと「価値」を、少しでもダイレクトにクリエイターに届けることが重要です。
もちろん、限定グッズをもらって嬉しくない人はいないでしょう。
しかし、本来アニメ制作の費用にそのまま使ってほしいお金が、「それ以外に用いられる」という点。これは「クラウドファンディング」が抱える、1つの矛盾点ではないでしょうか。
ブロックチェーン技術の活用は現行の「お金の集めかた」。そして「クラウドファンディング」からも、さらに歩みを進めた『もうひとつの選択肢』になると、私たちは確信します。
投じたお金がそのまま制作費用に使われる。それでいてファンへのリターンもある。
そんな仕組みづくりに、私たちは現在奔走中です。
今後も動向を、見守っていただけると幸いです。
世界中のファンとクリエイターを直接つなげる
オタクコイン協会
【 if 】
「——このアニメ、面白かった。」
上京してから数年が経った。残業帰りに買ったおにぎりを食べながら迎える、深夜1時半。明日は出社が早いので、寝不足は確定している。ああ、休みたい。
ぼんやりと天井を仰いでいたら、ふいにアニメの告知が流れはじめた。先ほどまで見ていたものとは内容や作風は異なる。しかし、とてもきれいだ。
なんだか聞き覚えのある音楽だ。そして、この特徴的な動き。
——これは小さい頃に母と見ていたアニメではないだろうか。待望のオリジナル続編を謳っている。
不思議なことにまったく内容が思い出せない。どんなストーリーだっただろうか。物語よりも先に、なぜか屈託なく笑う母の顔が頭に浮かんだ。そういえばあの笑顔を最近見ていない。堅物な親父殿も、そろそろ寂しがっているだろうか。
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