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ショートストーリーVol.2 もどかしい時代
今日も車通りが多い。娘を学校に送り届けたまではよいが、最近、帰路がどうしても混み合う。港の再整備が終わり、海沿いにむかう交通量が増えたためだろうか。海外の観光客を誘致する、と市の広報誌には書いてあったが、この街にそこまでの需要はあるのだろうか。
この街は夫の故郷である。専門商社で働きづめだった私を、他人の色恋沙汰をツマミに酒を飲むアラサーを、こともなげに拾い上げた奇特な夫。冷やかし半分、タダ飯を喰らいに、という建前を振りかざし、婚活に足を踏みいれたのが10数年前。プロフィールに記載されていた”趣味・陶芸”を、「ただの優男アピールではないか」と鼻で笑いながら話していたが、結局本当だった。少し晩婚ではあるが、なんだかんだトントン拍子でことが進んだのではなかろうか。さすが私である。
娘はようやく9歳になった。好奇心が旺盛で何にでも首を突っ込む様子をみた両親は、幼いころの私を見ているようだと笑った。友だちが通っているという理由だけで”ピアノ教室に行きたい”と駄々をこね、あげく泥のついたバットを片手にピアノ教室に通うその姿は暴君そのものであったという。遺伝子よ、そうはさせない。
——そんな2世も微動だにしないのがテレビの前。友だちに教えてもらったのだというアニメ番組の放送日時。そのたどたどしい報告と録画の依頼を終えたときの神妙な面持ちは写真におさめておくべきだった。
当初は深夜枠放送のアニメだったこともあり、その場で娘の要望を承諾することができなかった。元商社ウーマンの性か、一人の母親としてか。内容が教育上問題ないのか、そもそも”アニメを見させることの是非”からリサーチを重ねた。ママ友への探りを一通り終えたところで、ようやく条件付きでOKを出した。その時の娘の笑顔は写真におさめることに成功した。少しぶれてはいるが、上々だろう。現在、夫とおそろいの待ち受けになっている。
そして、懸案事項だったアニメだが、なかなかどうして面白い。
会社というコミュニティへの帰属がなくなり、ほとんど家に一人という環境の変化。人の声が恋しくなるという話は私には縁がないと考えていたが、自身も例外でないことに気づくのに時間はかからなかった。そのため、家事をしながら、内職をしながら、テレビ漬けの日々をおくっていた。
だがアニメは見ていなかった。子供時代にピアノをバットで叩きかねない少女だった私が世にいう”テレビっ子”になるはずもない。ましてインドアの代名詞だと思っていたアニメは、思い返せば”宮崎 駿”を横目で少しながめた程度ではないだろうか。
序盤は自身の調査不足を憂いて娘の横に鎮座している形だったが、今では熱心に——もしかすると娘よりも——アニメを観るようになっている。
気になっていた内容については、子供にはちょっとだけ刺激的な表現はあるものの、特段目くじらを立てるほどではなかった。ただ、このこみいった関係性を娘が追えているのかが気になった。前回の感動の伏線回収、半泣きの私の横でケタケタ笑っていた娘である。
伏線について事細かに説明を試みたが、首をほぼ九十度に傾けられた。面白いのか尋ねると、それについては頭を大きく縦に振る。何が一番面白いのか尋ねると、曰く『きれい』なのだという。たしかに、そのとおりだ。
子供におもちゃを買い与えるのは必要最低限でよいと考えていた私だったが——バットとグローブでよい——「グッズはおもちゃに入らないのではないか」という暴論を引っさげて、先日、夫に直談判を試みた。今思えば、”バナナはおやつに入りますか”と同程度かもしれない。
私はただ、娘が『きれい』といった世界の延長線をみてみたいのだ。それがどんな形であれ。
しかし、ねだろうにも公式グッズが思ったよりも少ないことに気が付く。同人グッズ(一般の方が公式作品をベースに制作した二次創作)に漂着したが、堅物な夫の目もあり、あまり多くを買うことができない。しかも、マイナーだったようで二次創作もそもそも少ない。
公式のグッズが少ない理由については、おおよそ見当がつく。知名度が低い作品については、放送前にどの程度の反響があるのかが見込み辛い。そのために「市場規模」が明確にならないのだ。「商品開発、販路開拓」よりも手前の段階でリスクを背負うことになる。年間で何百本ものアニメが放送されている昨今、在庫を抱えることは制作するメーカー側の業績に直結するだろう。
もちろん、二次創作にも綺麗なものもたくさんある。だが、生みの親の公式の制作物も、やはり私は見てみたい。作り手の熱量は、もしかすると私の子供に対する熱量とさほど変わらないのではないかとも、最近思う。
——ぼんやり考えていると我が家についた。内職の納品にはまだ余裕があるが、明日明後日には目途をつけたい。再来年には娘も高学年になり、私も復職する。何かよい仕組みはできないものだろうか。そういえば、クラウドファンディングってどうなのだろう。今度調べてみよう。
——「アニメが、本来の姿に戻る」
人を楽しませるコンテンツは、ファンのために作られるものです。
アニメについてもそれは同じと、私たちオタクコイン協会は考えます。
主役は作り手であるクリエイター、そしてファンであり、決してビジネスを目的とする会社を中心に語られるべきものではありません。
アニメ制作の『お金』を直接的にファンが支援することができるようになると、これまでのアニメ制作における『お金の集めかた』が大きく変わることになります。
個々人の支援に加え、今まで制作に加わることができなかった海外の関連会社や新興企業からの支援、それらが合わされば定番化した『3億円』を超える、制作費10億円以上の作品が生まれてくる可能性だってあります。これは『世界に向けたアニメ』を生みだす土壌が整う、ということに他なりません。クリエイターにも健全なリターンが返ってくるようになり、未来を担うこれからの人材育成にも寄与することができます。
“ブロックチェーン”を活用することにより、作品にまつわる権利の活用もよりなめらかになります。作品のヒットには欠かせない広告宣伝も、ファンからの支援があれば、日本国内はもとより世界各地で公式イベントなどが増加、多くの公式グッズが生まれることになるでしょう。これまでよりも続編の制作がなされることが増え、ハイリスクで避けられてきたオリジナルアニメ作品もたくさん生まれてくるはずです。
直接的な支援は、世界中のファンの情熱や愛や想いのカタチそのものです。ファンが望む、クリエイターの本当につくりたい作品が、誰もはばかることなく創られる。そんな未来をオタクコインは目指しています。
ショートストーリーVol.1 もどかしい時代:
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