「30条の4」は生成AIの商用利用を禁じているか
30条の4、30条の4と、ずっと言ってる人がおられるのですが、学習して出来た生成AIを商用に使うと適用外なんてことはどこにも書いてないと思うのですよね。僕は法の素人ではありますが。どなたか専門の方がそうおっしゃってるのでしょうか?
AIの開発や学習は思想や感情の享受を目的とした行為ではないからやってもOKですよ、と言っているのであって、そのAIの生成物が思想や感情の享受を目的として商用的に販売されることについては言及してないですよねこれは。普通に読んだら。
これが認められる例に出ているのです。ここから商用的な美術品の複製に使うことは禁じられてるとは読めませんね。これはあくまで、開発のための試験的な複製の話には著作権は及ばない、と述べている。
その結果作られた機械が何を目的にしているかの話はされていません。研究開発の際の利用は問題にしないという話をしているように思われます。商品を生成する物であっても。
「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」は緩すぎではっていうのなら意見として分かります。文化庁も「フェアユース規定のような規定ではなく,明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによって対応することが最も望ましい」と言ってるので、ゆるゆるOKと言ってるのではありません。ただ、現状お役所でまとめた「明確性と柔軟性の適切なバランス」の設定がこうなってるんだから、これを改めようというのはやっぱ立法の話なんじゃないでしょうかね。明確に書いてあることは書いてあるとおりに通るでしょう。
ゆるゆるにしたいわけではないので、条文にはこう制約が加えられています。
これを競合する商品開発への利用の禁止とするのは無理があるでしょう。あくまで「不当に害する」のを禁じているのであって、競合商品の展開はそれ自体では別に不当でもないでしょう。
ここで石恵氏が裁判をする場合の話になるのですが、今回の場合、i2iのように具体的に特定の絵を模写している、というものではどうもなさそうで、あくまで「絵柄」の模倣なんですよね(これがAIだとすればLoRAのような技術を利用した)。
これを彼の利益を不当に害しているものだとするためには、結局のところ、「絵柄の模倣は不当なのか」が問題とならざるを得ないのではないでしょうか? 「絵柄に権利はあり、よって絵柄を模倣されるのは不当である」ということにしないと絵柄を学習させる際の複製を制限できない。権利がないのなら模倣されても不当とはいえないでしょう。
絵柄の権利というものを本当に認めさせるつもりで裁判するんなら、これはベストに近い好条件の裁判にはなるんじゃないかとは思います。これほどあからさまに完全に絵柄が模倣されて商業展開されていることはそうないと思うので。
絵柄の権利というものを裁判所が認める解釈を著作権に足したら、それはとんでもない大変化です。私はその場合、価値中立に、そうなるならそれに合わせて生きるだけです。さてどうなるか。別にそれならそれでいいです。現状あるとはいえないものをあると主張されるのが嫌なだけで、あると決まるならその範囲でやれるようにやるだけですので。
絵柄の模倣を論じる上では、そもそも話がAIに限られる理由はありません。人間が模倣しても同じ話ですので、まあある種のパロディや同人活動にも波及しうる問題にはなってくるとは思います。なるようにはなるでしょう。
こちら、どう転ぶにしてもAIの今後を考える上で重要で、判決で線引きが出来るのはどの立場の人にとってもありがたい話なので、もし裁判されるということでクラウドファンディングがされるなら参加いたします。
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