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能登半島スポーツ環境の現状 ~輪島でのサッカー少年との出会い~

能登半島は2024年元日の能登半島地震によって多くのスポーツ施設が被災。日常に存在していたスポーツ環境が失われた。能登におけるスポーツ環境の現状と復興への歩みを取材。今回は輪島市の現状をリポートする。


■失われたスポーツ環境

 輪島市マリンタウン。陸上競技・サッカー・グラウンドゴルフなどが楽しめる競技場が整備。海に隣接しており、近くには輪島キリコ会館・ホテルなども整備され観光客やスポーツ関係者でにぎわっていた。ところが2024年元日の能登半島地震で観光やスポーツ環境の一部が失われた。
 地震から一年が経過しようとしていた2024年11月。スポーツ環境の現状を取材しようと輪島を訪れた。取材2カ月前の9月21日に能登豪雨が発生。地震からの復旧復興途上での豪雨災害。複雑な思いを胸に取材に向かった。

被災した輪島マリンタウン競技場

■輪島市マリンタウン競技場

マリタウンン競技場は全天候型400mトラック・サッカーピッチ1面(人工芝)・グラウンドゴルフ場1面が整備されたスポーツ施設。陸上競技やサッカーの大会などでにぎわうエリアだった。
 現在は仮設住宅が整備され被災された方の生活拠点となっている。マリンタウン競技場は復興への生活を支える拠点としての役割を担っていた。
できるだけ早く元の生活に戻れるよう願いながら見学させていただいた。

マリンタウン競技場に整備された仮設住宅(陸上トラックのRがわかる)
マリンタウン競技場に整備された仮設住宅(舗装道路も整備)

■サッカー少年との出会い

 マリンタウンに隣接する「マリンタウンこどもの広場」にサッカーを楽しむ三人の姿があった。近づいて声をかけると元気に応じてくれた。
 輪島中学1年生の池坂日那汰(いけさか ひなた)さん、社会人の山中俊輝(やまなか としき)さん横田健人(よこた けんと)さんの三人。
 地震発生時小学生だった池坂さんは輪島でサッカーを学んでいた。地震3カ月後に中学に進学。現在はセブン湖北ジュニアユース(かほく市)でサッカーを続けている。週4回、片道1時間半程かけて、かほく市での練習に通っている。帰宅は夜10時頃になるそう。それでも大変さを感じさせない池坂さんの明るさが印象的だ。
 この日、サッカーの相手をしていた社会人の山中さんと横田さんは毎週末、関東から車を運転して能登に通う被災地ボランティア。二人は能登各所で様々なボランティア活動をしてくれ
ている。この日はリフレッシュできるようにとサッカーで子どもたちの支援活動をしてくれていた。
 声を上げながら楽しそうにボールを追いかける三人の姿に復興を遂げた輪島の未来を想像した。

狭いながらもサッカーは楽しめる(マリンタウンこどもの広場)

■パリオリンピック2024

 昨夏、能登の子供たち5人がパリに向かった。輪島中学一年生の池坂日那汰さんも参加。現地でサッカーオリンピック日本代表の3試合を観戦・応援した。この企画は被災地支援団体が「トモに能登の未来へ!」とネーミングして企業や個人からの支援を募って準備してくれたものだ。
 子どもたちは渡航前に都内の日本サッカー協会を訪問して被災地報告会を実施。さらに在日フランス大使館を表敬訪問。パリでは在フランス日本大使館を表敬訪問。ドイツに移動してホームステイを経験するなど「能登の未来を担う子供たち」の将来につながるグローバルな経験を重ねた。
 帰国後には、JFAサッカー文化創造拠点「blie-ing!」で「トモに能登の未来へ!活動報告会」を開催するなど社会への発信もおこなった。
 5人の子どもたちは能登と子どもたちの未来につながる貴重な経験を積み上げていた。

(左から)山中俊輝さん、池坂日那汰さん、横田健人さん
エッフェル塔を背に記念写真(パリオリンピック2024)

■サン・アリーナ/サン・プルル

 最後に「一本松総合運動公園」に向かった。ここには観客席を有する体育館「サン・アリーナ」と温水プール「サン・プルル」がある。サン・アリーナでは毎年バレーボールVリーグ公式戦を開催。サン・プルルは多くの市民が訪れる人気施設。

サン・アリーナ[体育館]
 (観覧席1,208席、会議室、冷暖房完備)
サン・プルル[市民温水プール]
 (25m×7コース 幼児用プール、軽運動室)

 現在、施設の駐車場には仮設住宅が整備。被災された方の生活拠点となっている。輪島市内には複数の場所に仮設住宅が整備され多くのみなさんが復興に向けた生活をスタートされていた。

サン・アリーナ入り口(休業中)

能登半島地震から一年。スポーツ施設には仮設住宅が整備され被災者のみなさんの生活拠点としての役割を担っている。子供たちは現状の環境下でスポーツを続けている。そしてボランティアのみなさんがスポーツを通して子供たちをサポートしてくれている。みなさんの思いが輪島の復旧復興につながるよう願うばかりの取材となった。
(取材/大田 均)

■GOSPO 2025年1月号

GOSPO 2025年1月号
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